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アナテマ・メサイア  作者: 明星ナル
第一章「罪ノ神、邂逅」
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第四話「オリュンポス社の未亡人」

魔術と科学の融合、オリュンポス社。

アリア・ローゼンクロイツは未亡人である。旦那に先立たれ、この巨大企業を

取りまとめる立場になった。連邦三大企業の一角として非常に名の知れた

この企業。魔導工学の開祖であり、今もなお最先端を行く。


「おぉ…最初は試験で来たんだけど、初めてこんな奥まで通された」

「入社試験を受けたのね?」

「駄目でしたけどね」

「そうなの?勿体ないわ。まさか、筆記?」


ジークリンデの顔が引きつる。あぁ、これは図星か。理由を問いただすと

何かと筆記が、テストが、と言うばかりだった。これだけの大手なのだから

入社したい人間が多いのは仕方ない。アリアとしては筆記ではなく、面接で

こそ分かる人の在り方を重視したいらしい。


「ここが、神秘研究部門よ」


中に入ると社員たちがパソコンや機械の前で作業をしている。邪魔に

ならないように歩く。ここでは神秘について研究する。異界の神の遺品だけでなく

アクネスト元来の品々や世界を満たすエーテルについても研究を進め、

より良い社会のために利用している。


「そしてこれらが、試作品の一号と二号」


刀と二丁拳銃。後者はジークリンデが持っているディオスクロイとは異なる。

白、金、そして紺で彩られたそれとは異なる。ブラウンで銀の装飾がされた銃。


「武器の形のまま所持は出来ないでしょ。一応、貴方は一般人」


アリアがパネルを操作すると二つが小型のキューブ状に変化した。その二つを

アリアはジークリンデに手渡した。


「積もる話がある。場所を移動しましょう」


アリアから依頼が伝えられる。ジークリンデ・ナイトレイ、風の噂で随分と

優秀な探偵と聞く。人探し、失せ物探し、人脈も広くある。その人脈には一部

彼女の兄関連もあるようだが、紛れもなく彼女の特筆すべき点だ。

奥まった社長室。厳重なセキュリティで守られた部屋。


「依頼は人探し。失踪した国主アローゼの捜索」


若くして政治の世界に飛び込み、国から絶大な人気を得るに至った男

アローゼ・グリフィン。年齢に不釣り合いな深い知識と高いカリスマ性。

彼が国主となる前は何処か身分の差を感じさせる国の在り方が普通だったが、

それを瞬く間に改善して今の連邦を作り上げた。戦争のための軍事行為は

良しとせず、あくまでも自衛を目的とした軍隊を作り上げた。彼の目を

盗んで悪事を働く者もいたらしいが…。取り付く島もなかった権力者も

それなりにいたという。そのうちの一つがサムソン家。連邦の最高戦力と

称される一族だ。その先代当主と交渉を試みるも拒絶されて来た。

アローゼより指示を受けている。


「彼から、デウス・ウルト作戦の唯一の生き残りについて聞いたの。

それが、貴方でしょう。ジークリンデ・ナイトレイ」


ジークリンデは孤児である。一人残っていた彼女はナイトレイ家に引き取られた。

彼女の存在は国の上層部に知れ渡っているという。あの作戦を実行するに至った

承認した上層部の全員から狙われている立場。


「彼なら、もっと色んな事を知っているはずよ。貴方には知る権利があるわ。

自分の本当の両親、故郷が何故失われたのか知る権利が」

「―」


不思議に思ったことはあった。だけども知らなくても自分は困らない。

知らなくても良いことだってあるはずだ。そう思いながらも内心では

気になって仕方なかった。


「もう先手を打たれてる。だから依頼という形で私は―」


突然のアラート。部屋全体で赤い室内灯が点滅する。何か緊急事態が

起こったらしい。ここはオリュンポス社の本社ではなく、別棟にある。

別棟のみに緊急事態が起こっている。

外ではたった一人の侵入者に警備員たちがなぎ倒されていた。

顔もはっきり見えない真っ黒な服装だ。


「たぁいへん!大変よぉっ!!おばあ様!!と…お客様?」


やって来た女性はマリンブルーの髪を持っている。ふんわりカールがついた

長髪を忙しなく揺らして、緊急事態を知らせに来た。


「よく分からない奴が来たわよぉ!!おばあ様と、えっと…ジ…ジー…

ジーなんとかって女の子を探してるって暴れ回ってるわ!!」

「ミッシェル。丁度良いところに来た。アンタは彼女の助手をしな」

「え、えぇ!?説明は⁉」

「ジークリンデ。依頼を受けて貰うよ。孫娘はこき使ってやんな。

アタシは逃げも隠れもしてられないからね」


ミッシェル・レインウォーター、アリアの孫。アリアには娘が三人いる。

どうやら長女の娘がこのミッシェルらしい。占い師をしているとか。細かい

説明は何もされず、外へ締め出された。そして決してここに戻るな、とも

言いつけられてしまった。



オリュンポス社から遠く離れた場所。首都東区。大きな騒ぎになっていない。

安堵と妙だという疑念の両方が二人の胸中に広まった。


「あぁ、そうだ。今、思い出したわ!貴方のことも黒服は探してたのよね。

何?訳あり?お姉さんに話してみ」


ヘイ、カモンと手招きする。大きな声で話せるような内容では無いと彼女は

理解しているようだ。明るい性格、ジークリンデより年上。新たに姉が

出来たような気分。ミッシェルにジークリンデは事情を話す。


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