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CLOSE THE GATE~"獣魔使い"ネロの魔王討伐譚~  作者: 夜月沙羅
第1章 水の少年と炎の少女
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第四話 即席コンビ

※今回、虫は小説でも無理という人は閲覧注意です。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 ――また、開いた。

 少女は一人呟いた。

「第一部隊は討伐へ! 第二部隊は民間人の保護を!」

 ダークホールに気が付いた討伐隊の制服を纏った女性が剣を掲げ指揮を執る。

 駐留している二十人ほどの人間がそれぞれ動きだし、それに従うように狩人のフードを纏った人々も構え始めた。

 ぶわりと羽音を立てて、大量の影が街へ流れ出す。

 蜂のような蛾のようなとにかく虫に分類されるだろう生物だ。しかしそれらの体長は人の顔の大きさを超えている。

「気持ち悪い!」

 目の前に来たそれらを叩き斬ったフォティアの率直な感想にネロも頷いた。虫は平気な方だが、琥珀色の巨大な複眼と視線が合ってしまえばそれだけで人の生理的嫌悪を掻き立てる。

『炎は下手に使うと危ないだろうな』

「分かっている。でも剣で斬るにはすばしっこい上に数が多くて厄介ね」

 カニスの言葉に少女は頷きながらも顔を顰めた。人がいないところならば数が多かろうとまとめて燃やすなり流すなりしてしまえるが、街中ではそうはいかない。巨大な相手なら的が大きい分どうにでもなるが、比較的小さく動き回り、しかも一匹倒しても終わらないなど面倒に過ぎる。

「拘束するのが最適解みたいだな」

 小さな泡をぶつけていたネロがそれにそう応える。討伐隊の方を見れば、どういう魔法か、蜘蛛の巣のようなもので捉えてからトドメを刺していた。一か所に構えての集団戦を得意とする彼らはこういう相手と戦うノウハウもあるのだろう。

「――水球(アクアボール)!」

 それに倣って、水の塊を生み出してはそれで虫たちを捉える。溺死を狙ったものだったが、フォティアがそちらに剣を向けた。

(ライトニング・)(ストライク)!」

 水が放たれた電を通し、中にいた虫らを感電させる。

「ネロナイス!」

「お、おう」

 グッと親指を立てた少女に、少年は驚きながらも頷いた。

「火をつけられたまま動き回られたら不味いけど、雷魔法なら!」

『なるほどな』

 嬉しそうに駆け出す少女にカニスが肯く。そのまま黒犬は少年たちに並走し、跳んできた虫を噛みちぎった。

 ネロが止め、フォティアが攻撃をする。その繰り返しで、敵は次第に倒されていった。

『即席の割には、いいコンビネーションじゃないか』

 一体一体は決して強いわけではない。

 最初の混乱さえ超えてしまえば、これだけの人数で対処できない状況ではなかった。






「拘束、拘束……蔦魔法!」

「おー、やるじゃん、ロロ」

 先程受付所の入り口あたりで駄弁っていた三人組も特殊な蔓で虫たちを絡めとっては潰すという動きで討伐を進めていた。三人揃ってまだ少女だったが、周りの戦法を真似して倒していく。

 そこに、特に何も問題はないはずだった。

 他と同じような状態で、誰も注目などしていなかった。

 彼女たちの一人が、一際大きな、身長の半分くらいはある、化け物のようなそれを引き裂いた、その時までは。

 ヴォオオオオ!

 そんな喉から絞り出したような音と共に、引き裂いたはずの羽根と羽根の間から、なにかドロッとしたものをまとったものが出てきた。

「っ!?」

「ルリ!」

 衝撃に一瞬身を怯ませるも、習慣のままにもう一度剣を振りかぶる。それは間違いなくそれを捉えたはずだった。が。

「は」

 その瞬間、斬ったその場所のみ体が霧散した。

「何こいつ!」

 仲間の一人がルリ、と呼ばれた少女の腕を引く。そのままの勢いでその魔物に魔法で浮かせた石礫を連射した。だがそれはそんなことをものともせず、まるで人の手のように見えるものを彼女たちの頭上へ伸ばす。

「ひっ!?」

「ルリ! リーラ!」

 蔦の拘束魔法をかけていた最後の一人が二人を突き飛ばす。

 だが。

「あ……」

 突き飛ばし、故に一人残された少女が見上げたすぐそばに手は迫っていた。

 ただの泥の塊、のはずはない。

 咄嗟に剣を構えることも魔法を放つことも出来ず、少女はぎゅっと目を瞑る。

 けれど。

 彼女に何かが起きることはなかった。

 少女の体が浮く。

 は、と目を開けた。

 まず目に入ったのは、陽の光を浴びて輝く金色の髪。

 そして、狩人の装備としてはやけに立派な剣の、柄に刻まれた紋章。

「フォアティネーラ家……」

 それは、ある貴族の名。王族の血を引く者を除けば最上位にある、一等貴と呼ばれる家の一つ。

 そしてこの家は狩人の間でも有名だった。貴族が戦闘職に就くとすればほとんどが騎士団、まれに討伐隊であって、狩人になるのは下位の貴族か、そうでなければ才能があった平民か、あるいは貴族でももはや家に見放されたようなものばかりだ。

 そんな中、一等貴の第二子が狩人になった――となれば、当然噂の的となる。

 彼女を輩出したのが、フォアティネーラ家。

 だから、そう、その家の紋章を持つ、それも少女とさほど変わらない女性なら、ただ一人のはずなのだ。

「アリシア様……?」

 自身を横抱きにする少女を見上げる。

 翡翠色の瞳が細められて。

「大丈夫だよ」

 彼女は笑って、一人の名を呼んだ。

「――ネロ!」

「任せろ」

 答えた少年が、切っ先を魔物に向ける。

水よ。(ディー)飛び散れ、(ハイ)空へ行け(ドレーション)!」

 そんな詠唱と共に。

 魔物はその場で崩れ去った。

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