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妄想の帝国

妄想の帝国 その75 マイマイナンバー健康制度

作者: 天城冴

実りの秋につい食べすぎてしまった元ニホン国与党議員スギタン・ミンオはマイマイナンバー健康制度の端末にお咎めをうけ…

秋も深まり、鍋もの他暖かいものが美味しく感じられる季節。冬の寒さに備えてという口実についつい必要以上の食べ物を胃袋に詰め込んでしまった、とあるニホン国の中年女性。

「う、つい食べすぎちゃった。まあ、いいわよね」

一人、炬燵で伸びをしようとした途端

『スギタン・ミンオ、夕食の摂取カロリーを超えています。今週の食事メニュー違反デス』

と、腕時計型端末よりの注意が入る。

「う、うるさいわね。ちょっとぐらい、いいじゃない」

ふくれっ面で端末に向かって文句をいうスギタン。

『よくありません。今月二回目の違反デス。先月の各種検査でも改善がみられていなかったので、新メニューにしたのが無駄になりますデス』

「無駄って、来月取り返せばいいんでしょ!だいだい、揚げ物はダメ、野菜をとれ、運動をしろとか、早く寝ろとかうるさいのよ!」

と、端末に怒鳴るが逆効果だった。

ビリ

と、スギタンの体に弱い電流が走る。

「わあああん」

『軽度な罰でデス。だいたいあなたの健康管理をするのが、私、マイマイナンバー携帯端末の務めデス。マイマイナンバー健康制度においては、ニホン国民、一人一人の健康を徹底的に管理するのは当然のことなのデス。特にあなたは、スギタン・ミンオ』

「わ、私が何を」

『はっきり言えば犯罪者デス。ハンシャカイテキ・ハンミシュテキ・反ニホン国的・似非与党ジコウ党の議員にして、数々のデマ、暴言で国民を傷つけ、あの元アベノノ総理の子飼いととして権力を振りかざし、結果としてニホン国を破綻させたのデス。遺伝的な問題と長年の不摂生の結果ということで、収監されず、健康管理と矯正となったのデス』

「私がオカシイっていうの」

『はい、病気デス。ですので、身長、体重、血液や脳、腸、ほか心理テストに、判断力検査などをもとに、健康管理を行っているのデス。繰り返しますが、これは旧ニホン国のマイマイナンバー健康保険証をもとに行われているのデス』

「わ、私たち与党ジコウ党が作ったのは、こんなんじゃなくて」

『はい、国民の利便性といいつつ、システム利権のポンコツでしたが、ニホン国崩壊後、カッコクレン指導の暫定政府が国民の健康管理のために再構築したものデス。口座などの紐づけは失くし、継続的健康管理、病歴、カルテの管理に特化してより良いものになっておりますデス』

その言葉に、スギタンはちょっと自慢気に

「ニホン国がダメになったのはジコウ党ジコウ党のせいだって言われるけど、マイマイナンバー健康保険証は素晴らしいでしょ」

『いえ、まったく。個人情報、キジダダ大臣他閣僚、事務次官他、議員、財界ほかの健康状態、精神状態まで、世界に駄々洩れデシタ。それも仕事もロクにできないお仲間企業に利権を回そうとして、その企業がいい加減な下請けにシステム構築を丸投げしたためデス。そのせいで、ニホン国はかなりヒドイ状況だと世界中が認識して外交、貿易エトセトラで相手にされなくなったのデス』

「そ、そんな酷いっていうの」

『民主主義国家で、あのバカバカしい政策でストもなく、デモもすら参加者が少ないのは異常といわれていました。それで、ニホン国、特にあなた方ジコウ党議員や周辺の調査が行われ、あのウイルスが発見されたのデス』

「その調査っていうか、人をハムスターにみたいに扱ったじゃない。いろんな機械にかけられるし、血はとられるし、レントゲンも何回もしたし、頭まで」

『実験に使う動物は通常モルモットかマウスです、ハムスターではありません、それに脳のMRI画像でレントゲンではないデス。そうして、貴方方を検査して発見されたのがシナプス異常発生及びグリア細胞破壊ウイルス、通称アベノノウイルスの感染者デス。

(注)シナプス異常発生及びグリア細胞破壊ウイルスとは、ニホン国崩壊後、ニホン国政財界の以上言動に疑問をもったアメリカのイグノーベル博士によって発見されたウイルス。このウイルスに罹患すると記憶力、思考力、判断力の著しい低下がみられる。日常的会話などは支障がみられないが、高度な論理的思考を要する会話などは困難である。アベノノ元総理の家族や親しい知人たちから検出され、彼らがとくに重度の患者だったこと、感染源がアベノノ元総理と推察されることから通称アベノノウイルスと呼ばれることもあり…』

「そ、そんな長ったらしいセリフ言わないでよ」

『この程度の話が長いと感じること自体がウイルスが発症し、しかもかなり重症である証拠デス。それゆえ、一般国民とは別の健康管理メニューを行うよう指導してきたのデス』

「だって、食べたいものは食べられないし。運動とかもしなきゃいけないし。おまけにテレビ一日2時間、ネットはスマホもいれて週10時間までなんて、子供じゃあるまいし。そりゃレシピとか食材とか配布してくれるけど。それに、私の仕事が掃除なんて。そんなの誰だってできるでしょ、私はもっと知的な職業がふさわしいわ」

『一部窓の拭き忘れや、片付けをしなかったなどのミスが多数報告されています。あきらかに注意力散漫です、十分な睡眠や栄養不足と考えられます。それに知的作業といいますが、さきほどのウイルスの説明が理解されていない状態では無理です。そもそも以前の言動を分析しても、明らかに国会議員などの知的職業には不適との結果が』

「で、でも議員だったのお!」

『それもアベノノ元総理の依怙贔屓人選と、カルト詐欺集団の票集めの結果で、純粋な選挙結果とは言い難いデス』

「そ、そんなの、ああ、もう、こんな管理された生活なんて、強制的に健康なんて嫌よ!」

と、スギタンが端末を腕から外そうとすると

バタバタ

と、黒い看護服に身を固めた看護師たちがスギタンの部屋に入ってきた。

『マイマイナンバー健康制度違反です。正当な理由もなく、健康メニューに違反し続け、端末を取りはずすことは許可できません。さらに言動が支離滅裂なことから、アベノノウイルスの症状が進行したとみられマス』

端末のセリフを聞いて、看護師二人がスギタンの左右に回り、わきから抱え上げた。他の看護師は慣れた手つきで、スギタンの荷物をまとめ始めた。

「わー、ど、どこに連れて行くの」

足をばたつかせるスギタンに

『矯正病棟です。今までの生活状況、メニュー達成率に加え、これから入念な検査を行い、その結果から新たな健康メニューを行います』

「わー、いやよおお。やるなら、ここでいいじゃない!仕事も今までで、いいから!矯正病棟に入ったら、週末に街に出かけるのもダメなんでしょ!アトウダさんなんて、まるっきり大人しいお年寄りになったって、そんなのいやああ」

『正常な精神を取り戻して分別ある行動する老年期の男性になったのがそんなに悪いことなのデスカ。そんな風に考えるとはやはり思考に歪みがあると推察されますデス。それに今までの簡単なメニューですら、順守できないとなるとやはり矯正施設で指導を強化しなければデス』

「そ、そんな、糖尿病だの、腎臓病の患者みたいな扱いしないでええ」

『貴女もアベノノウイルス罹患者で患者デス』

なおも抵抗しようとするスギタンを優しく?気絶させ、看護師たちはスギタンとその荷物とともに部屋を後にした。


どこぞの国では健康保険をカードで紐つけようとして屁理屈をくりだし、ことごとく反対され、さらに迷走している政府があるそうですが、何やってもロクなことにならないなら、いっそ全員きれいさっぱり辞めて、地味に核のゴミだの汚染水だのの後始末でもしていただけないでしょうかねえ。

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