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万年筆

こんにちは。作者の夏雪足跡です。まずは、作品を閲覧してくださり、誠にありがとうございます。

なるべく早く更新していきますがなにぶんしがない学生ですので、作品の更新が遅くなるかもしれません。すみませんがご了承ください。では、存分に作品をお楽しみください。改めて作品を閲覧してくださり本当にありがとうごさいます。感想お待ちしております!

 見知らぬ建物の中にいた。自分以外は誰もいない。壁や広告板には案内が書かれていた。案内によると、どうやらここは遺失物総合案内所というところらしい。無くしものをした人達や人に無くされたモノたちが集まる場所として存在しているという。無くしものをした人なら分かるが、無くされた物が集まるとは?と疑問に思っていると天井のスピーカーから突然アナウンスが流れた。

ピンポンパンポーン

聞き慣れたリズムが建物全体に響き渡る。

「本日も遺失物総合案内所をご利用頂きありがとうございます。無くしものをまだ見つけられにならないお客様、または所有者に見つけられになられていないお客様は二階の発見窓口、所有者または遺失物をお見つけになりお帰りになるお客様は一階南のお帰り窓口、発見されることを望まず、破棄をお望みのお客様は一階北の消失窓口までお越しください。皆さまが正しき選択を見つけられることを職員一同、お手伝いさせていただきます。」ピンポンパンポン。

アナウンスの意味はよく理解できなかったが、とりあえず二階の発見窓口まで行くことにした。

「あの、すみません。」

「いらっしゃいませ。お客様」窓口にいた男性職員が対応してくれた。

「すみません。僕、とりあえずアナウンスに従って来たのですが、何をしたらいいか何もわかっていないんです。」

「何も問題ありませんよ。一緒に正しき選択を見つけましょう。お客様は自身が遺失物なのか、探し物をする人なのかはお分かりになりますか。

「遺失物?人?」

「その様子ではわかっていらっしゃらないようですね。」

「うぅ、すみません。」

「大丈夫ですよ。ご自身が何かわからないお客様はよくいらっしゃいますので。」

職員の男性はニコッと微笑んでくれた。

「では、お客様は何か手がかりになりそうなものはお持ちですか?」

僕はここに来てからまったく自分の所持品を確認していなかったことに気づいてポケットの中を漁った。するとズボンのポケットに何か硬い物が入っていることに気づいてそれを取り出した。それは筒状で中に黒い液体が入っている。

「これは・・・何かの替えのインクでしょうか。」

「何かこれに心当たりはございますか?」

「いえ・・・思い当たることはあるのですが、それがなんなのかわからないのです。まるで頭に靄がかかったようで・・・」

「そうですか、では覚えていることをなんでもいいのでこちらの紙に書き出してみるのはどうでしょう。頭を整理すると思い出すことも多いかと思われます。」

「わかりました。思い出してみます。」

僕は集中して、覚えている景色や物を書き出していく。靄がかかった記憶の中で唯一はっきりと覚えている景色があった。それはまっさらな物が目の前に広がって僕は誰かに握られていた。サラサラと何かの音が静かに響き、時折うぅという悩み声とある男の独り言が聞こえる風景だった。覚えているあの風景を細かく書き出していく。

「お客様は非常に達筆でございますね。」

「ありがとうございます。持ち主にはよく書かされていたもので・・あっ!・・・」

「思い出されましたか?」

「はい、すべて思い出しました。」

男性は嬉しそうに職員の男性に言った。

「僕は万年筆です。」

「僕はあるちょっと有名な小説家が愛用している万年筆です。毎日原稿用紙に物語を綴っています。多分僕が見た風景は原稿用紙でしょう。あぁ、こうしている間にも彼は私を探しているかもしれない。急いで帰ります。」

「ではこちらの発見届をご記入ください。一階南のお帰り窓口に提出いただければすぐに持ち主様のところへお帰りになれます。」

「何から何までありがとうございます。すぐに帰ろうと思います。」

「この度の遺失物総合案内所のご利用、誠にありがとうございました。またのお越しはなさらないことを願っております。お気をつけてお帰りください。」

「本当にありがとう。いつかここでの話を書きたいな。」

       * *

「どこいったんだ・・・。」

ぐしゃぐしゃの紙が床に散乱した部屋で二人の男が探し物をしている。「なかなか見つかりませんね。先生、もう探すのはやめて次話の創作に取り掛かっていただけませんか。ペンは他にもありますし、締め切りが・・・」

「そんなことはわかっている!だが・・・あの万年筆がないと何も書けないんだ。」

「そんなに大切なものなんですか?」

「あぁ、あの万年筆は私が初めて本を出版して初めて得た印税で買ったものだ。それ以来だから・・・もう使って三十年程になるのか、私が今まで生み出した全ての作品はあの万年筆で書いているんだ。この世で最も大切な私の相棒なのだよ。」

「そうだったのですか。失礼なことを言ってすみませんでした。探しましょう。」

二人はまた万年筆を探し出す。

「あ!あった!あったぞ!」

「え!どこに?!」

「机と壁の間に落ちていた!はは!よかった、あぁよかった。」

持ち主の男の手の中で黒い万年筆が握られていた。

作品をご閲覧くださりありがとうございました。

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