[短編]雪だるまハンバーグとティーボーンステーキ
『[短編]サイコロステーキよりティーボーンステーキとイルミネーションの思い出』(https://ncode.syosetu.com/n5378hi/)の続編になります。
《あらすじ》
『やっぱり、元カレの方が好きぃ〜』と叫び、ヤケ食いにステーキ店へ。
タクシー運転手のおじさん推薦のステーキ店に着いた今。
あたしは、ためらっている。
「いらっしゃいませ。テーブル席は溶岩プレートでステーキを焼けますが、おひとりでしたら、カウンター席の方がよろしいでしょうか?」
溶岩プレートでステーキ?
何それ、食べたい。
でも、その説明をしている店員さんが好みのイケメンすぎて、テーブル席なんて言えない…!
「えーと…」
あたしが欲望と羞恥の間で揺らめいていると、急に肩を掴まれた。
え?店員さんの前でセクハラ?
ぞっとして横を見たら。
あたしよりもずっと目線の高い、男の人。
「……安則?」
半月前に別れたばかりの元カレが立っていた。
「あ、すいません。オレの連れです。遅くなったみたいで」
「そうでしたか」
イケメン店員は、にっこりと笑うとバックヤードの方へ消えていった。
「えぇ、かっこいいぃ…」
あたしがイケメンの笑顔にハートを撃ち抜かれていると、右手を掴まれて半個室のテーブル席に連れて行かれた。
「ちょっと!勝手に触らないで!」
「うるさい。周りに迷惑だ」
「あたしの迷惑は考えないの?」
「溶岩プレートでステーキ食べたいのに、イケメン相手に恥ずかしがっている奴の迷惑は考えない」
「…うるさい!」
向かい合うように座ったテーブル席には、たくさんの空になった皿。
「…誰かと来てたんじゃないの」
「ひとりだよ。フラれたストレスでヤケ食いだ」
あたしと目を合わせずに言う元カレの姿に言葉も出なかった。
たしかに、別れるって叫んだのはあたしの方だ。
けど。
「可愛くないって言ったのは、そっちじゃない」
思わず言い返した。
気まずくなって、急いで卓上の呼び出しボタンを押した。
"ぽーん"
「はい、ご注文はお決まりですか?」
音と同時にまたあのイケメン店員。
ティーボーンステーキ下さいとは言えない…!
あたしが呻いていると、
「雪だるまハンバーグとティーボーンステーキ、ビール2つ、お願いします」
と、元カレが勝手に注文した。
雪だるまハンバーグは、メニューに『女性に大人気!』と書かれた雪だるま状の大根おろしとセットのハンバーグ。
「承りました」
素敵な笑顔のイケメン店員の顔を見ることも忘れて、あたしは元カレの顔を見ていた。
いつもそうだ。
変な見栄を張っちゃうあたしをいつもフォローしてくれる。
食べ残しても食べてくれる。
ありがとうと言えばいいのに、目も合わせてくれないから、あたしは黙ったままだった。
元カレの平安則は、そういう奴だった。
来週の金曜18時につづく…!