3 【 魔王復活 ③ 】
―――翌日の朝。
未だにお腹の中にラーメンが残っているような気がするイサムとアルは吐きそうなのを我慢してギルドにいた。
昨日ハンター試験に落ちて来ることもないと思っていた場所に翌日には来ている自分に少し居心地が悪い気もしたが、今日は通常業務の為に憧れのハンター達がギルド内を出入りしている為、居心地の悪さよりも感動の気持ちの方が強かった。
「おいアル! アル! 見ろよ! あの女の人のハンターさん! めっちゃ際どい服着てるぞ!!」
「あぁ、あれは際どいな。 確かああいう装備の服を着てる人は軽装装備で身軽にすることを目的としているって聞いた事があるな。」
「え? そうなの? じゃあ、あのふんどし一枚の丸ボーズのおっちゃんも軽装装備?」
「いや、あれはただの変態だ。」
「そっかー。 変態か。 そりゃ仕方ないな。」
「あぁ・・仕方ない。」
ふんどし一枚の男性がイサムとアルの見られている事に気が付くと、見事に鍛えられた体を、見せつけるかのようにポーズを取り、今日1番の最高の笑顔を2人に向ける。
しかし、2人が見せた反応は最後のとどめをさされたかのような表情で口からキラキラと光るラーメンの残骸を手に持っていたビニール袋に吐いた。
「ハーイ! ハンター試験に合格した上位5名の新人ハンターさ~ん! 時間になりましたのでこちらに集合してくださ~い!!」
時刻は朝の丁度9時を迎えた所で、1人の女性がハキハキとした元気ある声で集合をかける。
「皆様おはようございます! 私は主にハンター様方のクエスト発注の管理をしているギルド職員のエレナっていいまーす!」
エレナと名乗る職員はモフモフとした尻尾を振り、片耳だけを折りたたんでまるで狐のような耳を持っていた。
「す、すげぇ。 あれって【亜人】だよな?!」
吐き捨てたラーメンの残骸をゴミ箱に捨てに戻ってきたイサムが隣にいるアルに興奮気味に呟く。
「あぁ。 極稀に魔力の変質で生まれる変異種。 主に動物の機能と身体能力を持って生まれるって聞いた事があるけど、結構人間に近い感じなんだな。」
「その通りでーす! 流石は主席で合格した新人さんですね! でもそんなにガン見されるとお姉さん照れちゃうのでお話聞いてくださーい!」
かなり小さい声で話していたつもりだったが、狐の耳をしているだけあって聴力は人間の比ではないようだ。
「それでは、本日はダンジョンの見学という事で今回のハンター試験に上位で合格した5名とそのご家族、または希望者と共にダンジョン階層1フロアの見学に向かいたいと思いまーす!」
それからはダンジョンに潜るにあたっての注意事項を説明してくれた。
1つ。 決してダンジョン内での単独行動はしない事。
2つ。 必ず付き添いハンターの指示に従う事。
3つ。 軽率に大きな声を上げない事。
「以上3つを必ず守って頂き楽しいダンジョン見学をしましょーう!」
職員さんはその後、別の職員さんに何か報告をすると改めて集まったイサム達に何か質問はないかと尋ねる。
そこでイサムは誰よりも先に勢いよく挙手をした。
「おっ? それじゃあそこの貴方!」
「ハイッ! どうしても聞きたい事が1つあります!」
イサムはズカズカと職員さんに近づいていき手を伸ばせば顔に触れられる所で足を止めた。
あまりにも真剣な表情の為、ずっと笑顔だった職員さんも少し驚きの様子を隠せない。
そして、そんな真剣な顔でイサムが尋ねた事と言うのが―――。
「お姉さんの尻尾を触ってもいいでしょうか?!」
その日、ギルドの中で力一杯に頬を叩かれた音が響き渡ったという。