1 【 魔王復活 ① 】
『受験番号0319。 魔力反応5%により失格。』
他にも大勢の受験者がいる前で施設放送で発表された合否判定で、俺は膝をついて涙を流した。
俺の名前は【イサム・コンドウ】。
魔物討伐組織、ギルドのハンターを目指してハンター試験を受けたのだが、つい今しがたその夢は儚く散り去った。
「元気だせよイサム。 ハンターだけが人生じゃねぇだろ。」
ギルドの入り口付近で膝を抱えて丸くなっていた俺に暖かいコーヒーを持ってきたのは、俺と同じく今回ハンター試験を受けた友人だ。
友人の名前は【アルベルト・ヒーロー】。
俺はアルと略して呼んでいる。
「うるせぇこの野郎! 合格おめでとう! その合格証寄越せ!!」
「やるわけないだろうが。 そしてありがとうよ。」
合格証を奪おうと躍起になって襲ってみたが、流石はハンター試験に合格したこともあってコーヒーを溢さすに簡単に避けられてしまった。
襲い掛かった勢いでコーヒーを持ったまま地面に倒れ込みかけたが、ギリギリの所でアルがコーヒーだけを死守してくれたおかげで、俺は地面に熱いキスをするだけで済んだ。
「・・・アル。 俺、悔しいよ・・。」
「あぁ・・そうだな。」
倒れ込んで起き上がらない俺に、アルはただそれだけを言って隣に座った。
イサムがこれまでどれだけハンターに憧れていたのかアルは知っていた。
ハンターになる為にたくさんの努力をしてきたのも知っている。
だからアルがイサムに向けて言う言葉は何もない。
励ます言葉を言えば、余計にイサムが虚しくなるだけだと理解しているから。
そんなシンミリとした雰囲気が流れて数秒もしない内に、グゥ~と大きな腹の音が聞こえた。
「・・・飯、行くか?」
「アルの奢りなら腹が減るかも知れない。」
「今しがた大きな腹の虫ならした奴が何言ってんだ。 ほら行くぞ。」
「イッタッ!! 尻叩くなよ! あれだぞ! セクハラってやつだぞ!!」
「男の尻叩いても何も思わねぇよ。」
「なにぉ!! 俺の可憐で美しいケツを触っておいてなんて事言いやがる!! っておい待て! いや待って。 お願い置いてかないで!! ゴメンアル! アルくんや~い!!」
先ほどまで落ち込んでいたように見えていたが、ただ単に腹が減って落ち込んでいるように見えていただけかも知れないとアルは思った。