08話 捜索2
再び森の中を捜索する。
リザ曰く、魔力探知は音を探すことに似ているらしい。
それが理由なこともあり、隣で歩くリザはいつになく険しい顔を浮かべて集中していた。
それからどれだけの時間が経過しただろうか。リザは近くにあった樹の幹に体を預けると、深く息を吐く。
「……見つからないわね」
「この森全域を探そうとなると、そりゃ一筋縄ではいかないよな」
「そうね、というより自然のものにも魔力が多少含まれているから、それが邪魔なのよね」
「そ、そうなのか。人為的なもの以外にも魔力はあるんだな」
「当たり前でしょ? そもそも人だって自然の一部のようなものだし」
「それはそうだな。てか、自然界の魔力と魔法の魔力はどう見分けてるんだ?」
「そんなもの感覚的によ。説明するのは難しいけど、魔法から感じる魔力は少し不純物が混ざってる感じがするっていうか、どこか一か所に強さが集まってるっていう?」
「お、おう……」
何となく分かったような、分からないような、複雑な気持ちを抱く。
「なんか、まどっろこしく感じて来たわね」
「そうは言っても仕方ないだろ。こんな鬱蒼とした森の中で、しかも隠れているであろう盗賊団の住処を発見するなんて」
「いや、そうなんだけどね……もう森燃やし尽くしたら終わりでしょ」
「あのなぁ……」
ベトナム戦争の際、ゲリラに苦しめられたアメリカ軍と同じような発想をし始めていた。
「冗談よ、冗談」
「いや、なんかお前だと出来そうだから怖いんだよ」
「やっと少しずつ私の実力が分かってきたみたいね」
リザがどや顔をする。
「……こんなんでそんな顔を浮かべられる神経の方を尊敬するよ」
「冗談だって、まぁこんな無駄口を叩いてる暇があるならさっさと見つけましょ」
「そうはしたいがなぁ……。魔法で何とかならないのか?」
「あのね、魔法ってそんな万能でもないのだけど……。確かに私も何とかしたいとは思うのだけどね。なんかいい案ない?」
「いい案って言ってもなぁ、魔法の事なんて何にも知らないから、すごい素人意見しか出てこないぞ」
「そういうのが大切な時もあるのよ」
「そう言われてもなぁ」
例えば、俺がいた世界ではどんな風に捜索が行われていただろうか。
ぱっと思いつくのはGPSだ。と言っても盗賊団が居場所を発見されるようなものは所持していないだろう。加えて、記憶消去の魔法の魔力を探知していた先ほどの行為がそれにあたるかもしれない。それもあるかどうかわからないため、あまり使えるものではないかもしれないし、何より効率が悪いことが分かった。
となると、人が確実に持っているものから捜索するのがいいような気がする。そして出来ればそれは、森という地形から浮き出る形で現れるものが最もいい。
そこまで考えて、一つの物が頭に浮かぶ。
「……熱」
「熱?」
「そうだよ、思い出した。そう言えば俺がいた世界では熱を感知する道具を使って人を捜索していた」
「なるほど、熱ね。それこそある程度の熱になると動物くらいしか持ってないし……いけるかもしれないわね」
リザはそう言うとローブの内側から一枚の真っ白な紙を取り出し、手をかざす。すると、神に魔法陣が浮かび上がる。
「残念ながら私は熱を感知する道具何て便利なものを持ってないから、これで代用させてもらうわ」
「な、何をするつもりだよ
「簡単な話よ。この森一帯の温度を下げれば、体温の位置が分かるでしょ」
「……はっ?」
リザの口から出た言葉はあまりにも想定外のものだった。
「行くわよ」
リザのその言葉と同時に、周りの空気が凍った。