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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界で自由を!〜一般会社員の生活〜

作者:

SS

異世界転移ものを書きたかった。

ガタガタという音と居心地の悪い揺れに気づいて、目が覚めた。僕の手足は麻縄のようなもので結ばれ、硬い床の上で横になっている。

周りを見渡すと、僕と同じように拘束された人間が多く・・・六人ほどいる。

「えっと、あのー、これどういう状態ですかね?」

さっぱり状況がわからず、どうにか言葉を紡ぐ。

「laGxj oagtc mtlpp.javeg?」

(何語よ。英語かなーわかんないんだよなー。っていうかこれ事件に巻き込まれた感じかな?)


(え?)


(やばいやばいやばいやばい!)


唐突に芽生えた圧倒的な焦りに身を任せ、必死に抜け出そうとするも、文明の力を最大限に享受し続けた現代人には縄を緩めることすら叶わない。結局今までの人生で一番多かった諦めに辿り着く。


(はぁ、終わったかなぁ。てか僕はどこに運ばれてるんだろう、言葉も通じないから訊けないし)


一度諦めてしまえば、案外落ち着くもので暇になってしまった。思えば家でネットゲームをしていて、トイレのため立ったところ、急に立ちくらみがして倒れたのが最後の記憶。


(家に鍵かけてなかったかなぁ。そもそも家にいるやつを誘拐するかよ普通。TPO考えろよ。)


そして今度は考えるのを諦めて、不貞寝を決め込むこととした。




体感で3日ぐらい経っただろうか、ようやく目的地に着いたと思われる。この長旅は全くもって苦痛と共にあった。わかったことといえば、馬車の荷台に載っていたという事と、結構な外国だという事ぐらい。あまりの空腹に意識が朦朧とする中、屈強な男2人に引き摺られる。

地下への階段を降り、鉄格子の掛かった小さい部屋に詰め込まれる。逃げ出すような体力も最早なく、時間だけが過ぎていく。


しばらく経つと、またあの男たちに連れられ外へ。階段を上り、広い空間に出る。

(なんだここは・・・?)

目の前に広がるものを表現するならまさに魑魅魍魎。顔のすべての部位からタコの足が生えている人や、体がガラスのようでしかしブヨブヨとした質感をした豚。緑色のヘドロのような塊。牛の頭に虎のような体で足が100本はありそうな異形など、吐き気を催すような怪物のオンパレード。

悪夢としか思えない情景だがあまりにリアリティのある現実。

ステージに上がる僕と男。男も恐怖しているのだろうか、縄を持つ腕が震えている。

(殺される・・・絶対に死ぬ・・・それもまともな死に方じゃあない、地獄だ・・・)

とは言え自殺する勇気がある訳でもない。柄にもなく神様に祈りを捧げていると、同じステージの上にいた何かが声を上げる。これまた異形というか、シルエットこそ人型だが全身が黒よりもはるかに黒く、顔のパーツが一切ないなにか。

「jijkpg.dutysd syhuh.kaud!」

『VWOOOOOOO』

観客とでも言おうか、多数の異形が一斉に叫ぶ。

「fyvcr fyyy!」

『gyh fyyy!』『gti!』『yhei!』『yhdd!』

何が起きているのか微塵も理解できないが、とにかく恐ろしい。すでに漏らす小便も出し切り、悲鳴をあげる喉が痛みを訴える。

そんな中。

『vyu tdre』

こんな異形の中で唯一の人間と見える、ブロンドの髪をした、スタイルも良く顔も綺麗な女性が声を上げる。

すると、異形たちは小さく唸り声をあげるものの、落ち着き始めた。

「aygh syuh vyu tdre」

黒いのが一言話すと、会?が終わったのかブロンドの女と黒いの、あと連れてきた男を残してすべての異形が出て行った。


黒いのと女が話し始め、少しして僕を縛っていた縄をその女が受け取る。

(助かった・・・のか・・・?)

女が僕に顔を近づけ、優しい笑みを浮かべる。それに安堵した僕は、そのまま意識を失った。



こうして僕は訳も分からず無為に死んだ。

冷静に考えてみれば、あんなところにいる人間がまともなはずもない。目覚めたあとは意識のあるまま臓器を抜き取られ、どういう理屈なのか死ぬこともできずに最終的に頭部だけになって頭が3つある犬の餌。


死後僕は所謂幽霊になった。昔は外に出れば会社に、家に帰れば同居している両親に縛られていた僕だったが、今は自由だ。

幽霊となってから色々なところを飛び回るのは本当に楽しい。そして、驚くことも多い。


どうもここは日本どころか地球ですらない、異世界だった。城下町とかもあって、行ってみたが幽霊(正式にはアンデッドという枠のレイスというらしい)が入れないよう薄い結界的なのがあって入れなかった。

小さな村や町は結界もなく、そういったところを転々として、子供をちょっと驚かせたりしていた。


(でも一番大きいのは、言葉がわかるようになったことだよなぁ)


そう、どういう理屈かは分からないが、聞き取れるようになったのだ。まだ喋るのは苦手で、声を出そうとしても呻き声みたいになってしまうが。



ある日のこと。

今(勝手に)住んでいる村に勇者一行が来るらしい。村の住民たちもそれを聞きつけ連日もてなしの準備に追われていた。

(ファンタジーといえばやっぱり勇者だよなぁ。テンプレ通りならイケメン勇者の美少女ハーレム。いいなー超いいなー。)

などと羨ましがっていると、街路から3つの人影。


「勇者様、あそこに見えるのが今日の宿を貸してくれるコロネ村です。」

白を基調とした修道服に杖を片手に持った少女。かわいい。

「歓迎ムードって感じだね。肉料理が多いといいなぁ。」

黒のコートに二本の剣を背中にさした少年。イケメン。

「健太ったらいっつもご飯のことばっかりなんだから。」

細身で身長の高い、腰にレイピアを携えた少女。これまたかわいい。

(ん?ケンタ?)

この世界では珍しいタイプの名前に、よく見るとわりと日本人顔の彼。

(もしかして僕と同じ転移者か?初めて見たけど、話してみようかな)

すると向こうも気づいたようで、少し話してから近づいてきた。満面の笑みでこちらも近寄る。


『神の名の下に命ずる、亡者よ、在るべき場所還りなさい!』

修道服の少女から光の矢が走り、僕の体を貫いた。


僕は消失した。

プロットぐらい書けよ

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