表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/212

いざ、出陣!

 そうしてその週の休日、隣の市の温水プール施設にふたり揃ってやってきた。


「カップル割引でお願いします」

「かしこまりましたー♪」

「あうう……」


 小雪と手をつないで宣言すると、入場ゲートのスタッフはにこやかに受け付けてくれた。

 顔を真っ赤にした小雪を伴って中に入る。

 恵美佳から聞いたとおり、広々とした施設のわりに客は少なめで、これならゆったり満喫できそうだった。


「ここ、プールだけじゃなくて水着のまま入れる温泉なんかもあるんだってさ。遊具も豊富らしいから全制覇しような」

「それは別にかまわないんだけど……」

「あと二十五メートルプールもあるって。小雪がやりたがってた水泳勝負もできそうだな」

「ぐっ、うう……! そ、それは……その……」

 

 小雪は苦しそうに呻いて口ごもる。

 遊びに来たとは思えないような沈みきったテンションだ。

 やがて小雪は直哉の手を離して立ち止まる。


「直哉くん。大事な話があるの」

「はい?」


 いつになく真剣な顔をした彼女に、直哉は軽く首をかしげる。

 小雪はきゅっと目をつむり、罪を懺悔するような勢いで言い放つ。


「私……ほんとは泳げないの!」

「……知ってるけど?」

「へ?」


 決死の告白を、直哉は半笑いで受け流した。

 目を瞬かせる小雪に朗らかな笑みを向けてやる。


「そんなの俺に隠せるわけないだろー。まわりに他の生徒がいた手前、見栄張ったことくらいお見通しだって」

「な、なんだ、そうだったの……」


 小雪はホッとしたように胸を撫で下ろした。

 しかしすぐに何かに気付いたらしくハッとする。


「って、ちょっと待って! まさか、気付いていて勝負を受けたわけ!? 私をプールに連れてくるために!?」

「だって小雪とプールでイチャイチャしたかったし」

「ぐうっ……鬼! 悪魔! 破廉恥!」

「わはは、何とでも言え。ここまで来たらこっちのもんだ!」

「ぐぬぬぅ……!」

 

 すでに入場料は払い済みなので、引くに引けない状況だ。

 小雪は悔しそうに歯噛みするものの、すぐに諦めてくれたらしい。小さくため息をこぼしてかぶりを振る。


「この前のデートの時といい、毎回流されて嵌められてる気がするわ……お付き合いするのって、こんなに大変な頭脳戦が必要だったのね……」

「いや、俺たちが特殊なだけだと思うぞ」

「薄々気付いてた……」


 小雪は盛大に肩を落としてみせてから、びしっと人差し指を突き付ける。

 

「こうなったら仕方ないわ。嫌々付き合ってあげようじゃない。前回同様、下僕になったつもりできちんと私をエスコートすることね」

「ああうん、大丈夫大丈夫。ちゃんと深くないプールで遊ぶし、溺れそうになったら助けるから。小雪、泳げないけど水遊びは好きだろ? 分かってるから安心してくれって」

「そ、そう? それならいいのよ」


 小雪は強がりつつも相好を崩す。

 昔溺れた経験があるとかで水が怖いというのなら、直哉もここまで強引に連れ出すことはなかった。

 流れるプールやウォータースライダーに興味津々だったのもきっちり見抜き済みだ。


「でも、良かったら泳ぎを教えるけど。どう?」

「うううっ……考えとくわ。あ、あと……その」


 小雪はもごもごと口ごもり、上目遣いで直哉を見る。


「水着、一応持ってきたけど……変でも笑わないでよね」

「笑うわけないだろ」

「だ、だって最近、おやつとか食べすぎちゃって、ちょっとだけ太ったし……」

「まあたしかに、付き合う前よりトータルで――キロ増えたみたいだけどさあ」

「人間ヘルスメーターほんとにやめて」


 百グラム単位で増加分を当てられて、小雪は真顔でずいっと凄んでくる。


「いいじゃんそれくらい。幸せ太りってやつだろ。むしろ俺にとってはご褒美だって」

「うーっ……でもでもだって、好きな人にはだらしないところ見られたくないし……」

「うん、それも知ってる」


 そんな乙女心ももちろん看破済みだった。

 直哉は小雪の顔をのぞきこみ、満面の笑みを向ける。


「大丈夫。俺はどんな小雪でも大好きだから」

「直哉くん……」

「さあ、そういうわけだから……」


 うるっと来た小雪の両肩に手を置いて、直哉は真顔で続けた。


「早くその、朔夜ちゃんと一緒に買いに行って『大胆すぎない? 大丈夫?』って散々悩んだけど結局勇気を出して買っちゃったおニューの水着に着替えてくるんだ! 俺が早く見たいから!」

「あの子密告したわね……!」

「いや、聞いてないけど。単に展開が読めてただけだから」

「それはそれでムカつくぅ……!」

 

 そんなこんなで、お互い別れて更衣室へと向かった。

続きは5月7日(木)更新します。

毎日更新開始はもう少しお待ちを……現在もりもり書き溜め中。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 心を読むのは斬新?なのかもしれない。しかしながら、ここまで心を読む人はさすがに現実世界ではいませんよね...そんな人いたら色々と困りそうです笑 [一言] 少し前に見つけて今追いつきました。…
[良い点]  本当に今更ですけど、手の内読まれ過ぎてて小雪ちゃんが勝つどころか一矢報いることも 難しい感じですね。笑 人間ヘルスメーターは草。 いかな読めていたとはいえ、台詞まで一言一句違わずに諳ん…
[良い点] 直哉に慣れてきたけど学習しきれてない小雪、ポンコツかわいい(*´ω`*) [一言] そのうちポロッとスリーサイズ言いそうだから気をつけんるんだぞ小雪ちゃんよ(´・ω・`)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ