恋人デートの待ち合わせ
小雪とデートの約束をした、その週の日曜日。
雲ひとつない晴天のもと、直哉は待ち合わせ場所のショッピングモール前で小雪の到着を待っていた。
朝だというのに、もうすでに気温は猛暑日の様相を呈している。拭っても拭っても汗が伝う中、直哉はスマホでネットを確認しながらぼんやりと小雪の到着を待っていたのだが――。
「お義兄様」
「うわっ!?」
突然背後から声がかかって、その場で飛び上がることになった。
うるさく鳴り響く心臓を押さえて振り返ると、そこに立っていたのは朔夜だ。
「びっくりした……朔夜ちゃんか。気配殺して近付くのやめてくれよ」
「ごめんなさい。癖になってるの、足音消して歩くの」
無表情のまま、殺し屋めいたボケを放つ朔夜だった。
今日は学校外ということもあってシンプルで動きやすいパンツ姿だ。首からは最近買ったという大きな一眼レフカメラを下げている。
朔夜は眼鏡をキランと光らせて、直哉のことを検分するかのようにじろじろと見つめてくる。
「清潔感のある服装。待ち合わせ時間より早く来ているのもポイントが高い。デートの服装としては合格点といったところ」
「そりゃどうも。それより小雪は? 一緒に来たのか?」
「一緒に来たけどさっき分かれた。お姉ちゃんは土壇場で怖気付いて固まってる」
「あー、予想通りか」
直哉はあたりをキョロキョロと見回す。
休日ということもあって、ショッピングモールは客が多い。ここは家族の憩いの場としてだけでなく、映画館やゲームセンターなどを併設してるためにデートスポットとしても有名だ。
親子連れや学生たちで賑わう中を探すと、ベンチの裏側にうずくまる人影が見えた。
おそらくあれが小雪だろう。
直哉は頰をかいて苦笑するしかない。
「今さらデートくらいで怖気付かなくても……こないだふたりきりで遊園地にも行ったのになあ」
「付き合いだしてからは初めてでしょ。だから意識しちゃってるんだと思う」
「なるほど。そんじゃ回収に行くけど……ひょっとして今日のデート、朔夜ちゃんも付いてくる気?」
「当然。こんなシャッターチャンスを逃したらこの子も泣いちゃう」
一眼レフ勇しく構えて、朔夜は堂々と宣言する。
言っていることはなんだか立派だが、姉のデートをデバガメしたいだけなので、私利私欲にまみれている。その自覚があるのか、朔夜は数ミリだけ眉を下げ、ひそひそと懇願する。
「もちろんお姉ちゃんにバレないよう、こっそり付いて行く。ダメ?」
「そうだなあ……」
正直言って、デートを尾行されるのは好ましくない。
だがしかし――直哉はさわやかに笑って右手を差し伸べた。
「あとで写真を横流ししてくれるなら許可しよう」
「交渉成立。さすがはお義兄様」
朔夜がその手をがっしり握って、交渉成立となった。
かくして直哉は軽い足取りで小雪を迎えに行く。ひょいっとベンチの裏を覗けば、小雪が小さくなってぷるぷると震えていた。
「無理無理むり無理ムリ……! こ、恋人のデートってなにをすればいいの……!? まさかひょっとして、あんなこととか、そんなこととか……無理! 心の準備ができて――」
「おはよ、小雪」
「ひゃうっ!?」
声をかけると、小雪の肩がびくりと跳ねた。
そのまま彼女はしばしそのまま凍りつき、すっと立ち上がると、何事もなかったように不敵な笑みを浮かべて振り返ってみせるのだが――。
「あ、あら、直哉くん、もう来ていたのね。待ち合わせの時間にはまだ早いはずだけど……そんなに私とデートできるのが嬉しかったの? ふふふ、まるで飼い主の帰りを待つ犬みたい。いじらしいことね」
「うん。めちゃくちゃ嬉しいワン」
「ぐっ……! ま、真顔で言うんじゃないわよ!」
結局、顔を真っ赤に染めて、しどろもどろになってしまうのだった。
お待たせしました!再開します。本章はほとんど書き終わったので、直しつつ上げていきます。
二日ごと更新で二週間ほど。まったりお付き合いください。
次は1月25日(土)更新予定です。






