作戦会議
それから十分と経たないうちに、三人の順番が回ってきた。
きぐるみと握手をしてハグをして、最後にはツーショットでの写真を撮ってもらえたものの、夕菜の表情は最後まで優れないままだった。
あれだけ楽しみにしていた物販コーナーも素通りしてしまい、三人でモール内の喫茶店に入ってからもそれは変わらず――。
「……」
夕菜は仏頂面のまま、お子様用のミニパフェをちびちびと切り崩していく。
綺麗に盛り付けられたイチゴに目を輝かせることもなく、ただ与えられた雑務をこなすように黙々と食べるその姿は、明らかに心ここにあらずといった様子だった。
「ちょっとちょっと、直哉くん」
「うん?」
直哉と小雪は夕菜の対面に座って、ケーキセットが届くのを待っていた。
そんな折、小雪がこそこそと小声で話しかけてくる。
「さっき会った子って、やっぱり夕菜ちゃんのお友達なのかしら」
「ああ、たぶんそうだと思うけど」
「それにしては様子が変だったわよね……」
小雪は眉をへにゃっと下げて、夕菜の顔を盗み見る。
パフェを半分ほど食べてしまってもなお、夕菜の表情は暗いままだ。
よほど先ほどの女の子とのやり取りが堪えてしまっているらしい。
それは小雪の目にも明白なのか、ひどく心配そうだった。
しかしすぐにはっとして、直哉の顔をこわごわとのぞき込んでくる。
「ひょっとしてあなた……夕菜ちゃんとあの子が険悪な理由なんかも、見ただけで分かるわけ?」
「まあ、だいたいのことはな」
夕菜と先ほどの女の子、エリスの関係は手に取るようにわかる。
そう告げると小雪はわずかに身を引いてみせた。
「怖っ……! 本当、将来刑事さんにでもなったら、あっという間に出世しそうね」
「進路はまだ未定だなあ。でもとりあえず、小雪の旦那枠は志望中だけど」
「そ、そういうの今はいいから!」
小雪は直哉をじろりと睨みつけた。
赤くなった頬をごまかすように咳払いして、真剣な顔をする。
「でも、だったらあの子たちを仲直りさせる方法も分かるってこと?」
「いやあ、ぶっちゃけ簡単だと思うけどさ」
直哉は頬を掻いて笑うしかない。
彼女らが不仲な理由も、それを解決する方策も明らかだ。
だがしかし、直哉はそれをあっさりと口にするわけにはいかなかった。
「こういうのって、自分たちで解決しなきゃいけない問題だろ。俺みたいな第三者が口を挟むのはどうかと思うんだよな」
「うっ……そうかもしれないけど……あなた、夏目さんと河野くんにお節介して、ふたりがくっつくように仕向けたんでしょ。あれはいいわけ?」
「あれは何年経っても進展しなかったからなあ」
以前、幼なじみの結衣と巽をくっつけるべくお節介を働いたことがある。
しかしそれは直哉が何年も彼らを見守った末に出した結論だった。
「よっぽど不味い状況じゃなきゃ、俺は手出ししないよ。それが本人たちのためってやつだろ」
「むう……変なところで真面目なんだから」
小雪は口を尖らせつつも、それ以上食い下がろうとはしなかった。
直哉のスタンスを理解してくれたらしい。
しかしそれでも心配なのは変わらないようだった。
仏頂面でパフェをつつく夕菜を見て、ますます眉を下げてみせる。
「でも、だからって放っておく訳にはいかないじゃない。なんとかできないの?」
「そこまで言うなら、小雪が夕菜の話を聞いてみたらどうだ?」
「わ、私が?」
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