01 ライバルの転生事情
あ、私死んだんだ……。
と気が付いた時、幼い私は前世の記憶を持っていた事を思い出した。前世の自分の事で覚えていたのは、恐らく死ぬ直前の事。
猛烈な、痛み、虚しさ、悔しさ、寂しさ。そして、諦め。その感情だけ。
一体何があったのか全く覚えていないが、とにかく私は一度死に、今、ここに幼子となって生きている。
乙女ゲーム『天の聖女』の世界に転生した私、ジェシカ。ヒロインであるロミのライバルという立ち位置のキャラだ。
赤毛と黒髪。
ぱっちり垂れ目と気の強そうな猫目。
性格は天真爛漫、表情豊か。片や激情型、凝り固まった表情筋。
その姿は正反対。正にライバル。
天の聖女とは、天を、大気を読みそれによって神託を授かり、50年の間天災を予測し国を栄えさせ、安定させる存在。
50年の節目に合わせて年頃の令嬢、少女たちは候補生として教会に上がるのだ。
天を読み天候・災害を予測する力、魔術の修練、王子妃となるための貴族の勉強。それらを修めるために。
けれど私は知っている。最終的に成績優秀な者が聖女になる訳じゃないという事を。
最初から……産まれた時から、すでに聖女になる事を定められているのだ。これは私が前世でプレイした、『天の聖女』の知識や裏話を知っているからこその確信であり、更に。
私は自分が聖女である事も分かっている。
とんだ茶番だ。少女たちの貴重な時間を無駄に消費させて、結局決められている聖女を選定するのだから。
天啓を得る事で聖女は自身がそうであると自覚する。
本来ならば50年に一度の『聖女選定の儀』によって分かるはずが、私の場合は前世の記憶が蘇った幼い日、天啓を得たのだ。
自分が聖女であると。
ゲームでヒロインがバッドルートに進んだ際、ライバルであるジェシカが聖女に選ばれる、という展開がある。
私は最初から自分が聖女であると理解してしまったために、ヒロインの未来をも予測してしまったのだ。
これはあまりにもひどい。
私は何とかヒロインを、そして推しキャラを、助けるために立ち回ろうとしたのだけど……。




