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聖獣王国物語~課金令嬢はしかし傍観者でいたい~  作者: 白梅 白雪
課金令嬢はしかし傍観者でいたい
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約束のお茶会3

 

 さて、シャルロッタとの取引は済んだし、無事に友達にもなれた。本人非公認だけど。これでやっと、あと一つの用件に集中できる。


 こほん。咳払いをすると、ロイとシャルロッタはこちらを見た。


「えー、本日はお日柄もよくー」


 今からは仲人に徹しよう。

 突然の切り替えにシャルロッタは訳が分からずといった様子で目を丸くし、ロイはまた何か始まったと言わんばかりに楽しそうに次の展開を待っている。しかし仲人って何をすればいいんだ?


「えっと、お二人のご趣味は?」


「趣味ですか?私の趣味は観劇ですわ」


 シャルロッタが迷わず答える。


「私はこうしてマナリエルを観察することかな」


 ロイも迷わず答えた。


「お互い鑑賞することがお好きだと。なるほど趣味が合いますね!」


 うん、趣味が合うのは大切だ。

 改めてこうして二人を並べてみると、本当に絵になる美しさ。ロイの輝くブロンドの髪に、シャルロッタの艶のある漆黒の髪。それぞれが互いを引き立てるようで、まさに太陽と月。

 何かを察したのか、シャルロッタはハッと眉を上げる。


「マナリエル様。もしかして、私を殿下の側妃に、とお考えでしょうか?」


「まさか!!側妃にだなんて考えてないよ!」


 正妃だよ。


「なら良いのですが」


 安心したように肩の力を抜くシャルロッタ。わざわざ正妃に、と伝える必要はない。ロイもシャルロッタも素敵な人だ。こうして会う機会を設けていけば、自然と惹かれていくだろう。


 ちらりとロイの様子を伺う。変わらず彼は微笑んでいるが、なんだか圧がすごい。今婚約破棄なんてワードを口にしようものなら、それこそ本気で監禁されそうだ。無意識に閉じた唇に力が入る。


 今はまだ。少しずつ、少しずつ二人を近付けていこう。自分のためにも、慎重に。


「マナリエル様。私が進言するのは烏滸がましいかと思いますが、これだけは言わせてくださいませ。マナリエル様が側妃を考える必要はございません」


「そう?世継ぎのためにも、側妃は正式に認められているじゃない」


 伝統を重んじるシャルロッタなら、正妃なら堂々と側妃を迎え入れる器を持て、なんて考えているのかと思っていた。


「もちろん、側妃の価値は理解しておりますし、万が一その話がくれば、私に断る権利はございません。しかし私の場合は周囲が勝手に候補として挙げていただけであり、正式に王家から申し込みは来ておりません」


 言葉の端々から伝わってくる。シャルロッタは側妃にはなることを望んではいないのだろう。そのせいか、いつもより雄弁だ。


「私はお二人が並ぶお姿を見ると、シルベニアの未来が間違いなく希望に満ち溢れたものになると確信が持てます。そもそも王妃が子を生める体ならば、側妃は不要ではないかと常々思っていました。歴史を辿れば、歴代の王の中でも側妃を持たない王は存在しますし、正妃だけを愛し続けた王の方が国の安寧が強固であると統計も出ております」


「そ、そうなんだ」


「はい。マナリエル様は側妃を考える必要はなく、むしろ王妃としての教養を身につけ、国母となるべく心身ともに健康にお過ごしになることだけをお考えくださいませ」


「……わ、分かりました」


 NOとは言わせない圧迫感。ロイは満足げに頷きながら、こっそり指先で小さく拍手をしている。

 くっ……!シャルロッタはなぜ張り合ってこないんだ。王妃の座を巡って、若き乙女達が熱いバトルを繰り広げるものなのではないのか。そんなにロイは魅力的じゃないのか?いや、彼は国宝級に顔が整っている。それに魔術も剣術も高い技術を持ち、人望も厚い。そんな王子を放っておいていいのだろうか?超絶優良物件じゃないのか?何か私の知らないロイの欠点があるのか?いや、こんなに長い付き合いなのだから、私よりロイを深く知る者など、この学園にはいないだろう。

 

「マナリエル様、アイーシャにはお気をつけください」


「へ?アイーシャ?」


 突然出てきた名前に、思わず声が裏返る。


「アイーシャは先日の騒動から大人しくしていると思っていましたが……私の知人の情報によれば、なにやらアイーシャの周囲で不穏な動きがあるようなのです」


 不穏とは。詳細を聞けば、最近ケガをする生徒が増えてきているようだ。それも些細なものではなく、長期的な治療を必要としたり、精神的なダメージが大きかったりと、気のせいでは済まない状況のようである。

 そしてそのケガをした生徒は全て、アイーシャに直接的にしろ間接的にしろ、危害を加えようとしたという共通点がある。


「自業自得とか、バチが当たったとか、そういうことではなさそうだね」


「その件は生徒会にも届いているよ。あまりにも続くからね、そろそろ調査をしようとしていたところなんだ」


 ロイも神妙な顔で考え込んでいる。アイーシャは光属性であり、光の魔力は誰かを攻撃できるものではないはずである。ましてや精神的にダメージを与えるとなると、魔法初心者の私でも思い付くものがある。


「闇の魔力」


 呟けば、ロイもシャルロッタも強く頷いた。


「恐らく、闇の魔力を持つ者が絡んでいるでしょう」

 

「そうだね。そして、恐らく生徒の中に闇堕ちがいる」


 闇堕ち。胸がざわりとする。あれ?でも、確か──


「入学の時に生徒は必ず属性検査をするのよね?闇属性が誰か分からないの?」


「人間が闇属性で生まれることはない。恐らくその生徒は元々5つのどれかの属性を持ち、何かをきっかけに闇堕ちしてしまったのだろう」


「アイーシャ本人である可能性は?」


 この質問には、シャルロッタが口を開いた。


「闇堕ちすれば、光の魔力は消滅します。アイーシャにはまだビスタという光の精霊が付いていますので、その可能性はないでしょう」


 なるほど。つまり、アイーシャを守ろうとする何かが動いていて、それが闇の力を持っているという解釈でよいのだろうか。


「アイーシャの指示なのか、誰かがアイーシャを慕って起こしていることなのかは不明です。が、アイーシャがマナリエル様の座を欲していることは間違いありません。彼女からの接近を避けられればそれに越したことはありませんが、くれぐれもお気をつけくださいませ」


 私はヒロイン(アイーシャ)と関わるつもりはない。極力メインキャラと関わることなく、けれどさりげなくサポートをし、傍観者としてみんなの行く末を見届けたいのだ。

 それなのに矢鱈と突っかかってくるアイーシャ。そんな彼女に害ありと見なされれば、闇の力に襲われるかもしれない。


 ロイがそっと私の手に自身の手を重ねる。


「大丈夫だよ、マナリエル。君を傷付けさせることなんて絶対にしない。君と学園の安全は私が守るよ」


「ロイ……」


 シャルロッタが恋愛ドラマを見ている視聴者のようにドキドキワクワクしている姿が視界に入るが、できることなら私がそっちサイドに行きたいよ。


 しかし今はそんなことを言っている場合ではない。どうしたらアイーシャと接触せずに学園内を移動できるか、帰ったらナディアと一緒に考えよう。どうせ今夜もストーカーしているであろうレイビーとイリスにも相談してみよう。


 そしてあわよくば、この事件の主犯格を見つけてみせる。せっかく戦える体と技術があるのだから、逃げるだけじゃもったいないわ!


 こうして固い決意をし、初めてのお茶会は幕を閉じた。


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