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聖獣王国物語~課金令嬢はしかし傍観者でいたい~  作者: 白梅 白雪
課金令嬢はしかし傍観者でいたい
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接触3

 


 睨まれているわけではない。暴言を吐かれたわけでも、脛を蹴られたわけでもない。シャルロッタは、ただこちらを見ているだけだ。それなのに思わず謝罪してしまいそうになるほどの圧を感じるのは、美人故なのかも しれない。



「マナリエル様」


「は、はぁい!」


 突然名を呼ばれ、思わず裏返る声。優雅にテニスのラリーでもしているかのような。しっかりしろ!この喉め!恥ずかしさから反射的に咳払いをするが、そんなことをしたって過ぎた過去は修復不可である。


「先程は差し出がましいマネをしてしまい、失礼いたしました」


 シャルロッタは流れるように膝を曲げる。


「いえ、そんな!こちらこそ助けていただき─「あなた様が謝る必要はございません」─ほふっ!」


 下から見上げる視線は、事件でも解決しそうなほど鋭い。


「マナリエル様。あなた様はシルベニアの尊き次期王妃でいらっしゃいます」


「いや、まだ決まったわけでは」


「決まっているよね、マナリエル」


 柔らかな笑みを装備したロイが口を挟む。


「ソノヨウデスネ」


 誰が一国の王子、さらに言えば次期国王の発言を覆すことができようか。いや、誰もできまいて。私にできることといえば、恋愛ゲームにありがちな【ヒロインと王子が紡ぐ真実の愛※ただし悪役令嬢とヒロインは友情エンドを迎え、断罪なし】を目指すしかないのよ!大団円ルートよ!

 そんな熱い意気込みをしている間も、シャルロッタは真っ直ぐこちらを見つめ、そしてポツリと呟いた。


「ザニラエル・アイーシャ。彼女は最近入学してきた生徒ですが、すでに魅了の魔法を使います」


 ……ふむ。とりあえずここは知らないフリでもしておこう。


「み、魅了ですって!」


「ご存知のようですね、それなら話は早いです」


「……あ、はい」


 恥ずかしい。オシャレな格好をしてモデルばりに歩いてたけど、服に値札やサイズシールが貼ってあった時くらい恥ずかしい。ロイが隣で吹き出しそうなほどの笑いを堪えているが、その音は一つではない。振り向かなくてもレイビーとイリスの状況は手に取るように分かった。演技力っていうのは自動課金の対象ではないのね。


「彼女の魔力はそこまで高くありません。ですが、光属性だからでしょうか、魅了魔法のレベルはかなりのものです」


 何事もなく続けるこの人もどうなのよ。

 やはりアイーシャが光属性(ヒロイン)か。今後もヒロインの目には、というよりも、この世界は私が悪役に仕向けられるよう動いていくのだろう。


「魅了の魔法は一度かかると、自らの力では解くことは不可能です。術者本人もしくは、それ以上の魅了の力を持つ者でなければ」


 なるほど。乙女ゲームのヒロインがやたら好かれやすいのは、こういったシステムがあるからなのだろう。よくある『普通の女の子』という設定には疑問を感じていた。普通の女の子が学園のアイドルや芸能人、ましてや王子と深く関わることがあるだろうか。気に留められることなどあるだろうか。いや、ないだろう。

 ヒロインは無自覚かもしれないが、この魅了の力で都合よくストーリーが進行していくのだろうと悟った。

 

 それにしても━━然り気無くシャルロッタを見る。美人だ。何度見ても美人だ。

 ヒロインであるアイーシャの魅了を簡単に解いてみせたシャルロッタはかなりの腕前だが、どこかで聞いたことある気がしてならない。


 ティスニーどころか屋敷から出たこともない私が情報を得るとすれば、人づてか、屋敷内の書斎だろう。


 シャルロッタ、シャルロッタ━━。


「あ」


 学園へ向かう途中、馬車の中で聞いたナディアの声を思い出す。


『いいですか、マナリエル様。現在カルヴィナータ学園にはロイ殿下だけではなく、国内国外問わず、王族や貴族のご子息ご令嬢が集まっています。ティスニーと各国との外交については今まで学んできましたので大丈夫かと思われますが、一人だけ。国とは関係なく、マナリエル様個人が注意する必要がある方がいらっしゃいます』


『へぇ、誰?』


『シャルロッタ・スラスター様でいらっしゃいます』


『シャルロッタ?』


『はい。彼女はシルベニアでは有名なサネルという魔法使いです。スラスター家はサネルの中でもトップレベルを誇る魔力を持ち、さらにシャルロッタ様はそのスラスター家の至宝と呼ばれるほどの力をお持ちですが、私の至宝はマナリエル様です』


『締め方がおかしい』


『シャルロッタ様の母君でいらっしゃるクリーストリア様は『え、ちょっと待って今一歩間違えたら危険な香りが━』お黙りください。お家同士の派閥もあり、クリーストリア様は幼少期からリリー様を敵視しておりました』


 敵対していた、と言わないのだから、お母様はきっと相手にしていなかったのだろう。いや、お母様のことだから、幼馴染の仲良しとすら思っていそうだ。


『クリーストリア様が、リリー様のご令嬢であられるマナリエル様を放っておくとはとても思えません。直接危害を与えるようなことはしないでしょうが……とにかく、関わりを持たぬよう、お気を付けくださいませ』



 ━━こんな感じだったかな。ちなみに、関わってしまった場合はどうすればよいのでしょうか。そのあたりをナディアに聞いておけばよかった。

 生活に慣れてきてからは、ナディアは学園へは同行しないことが増えてきた。よって、どう対応するのが正解なのか、私にはさっぱり分からない。



『ちなみにですが、シャルロッタ様はロイ殿下の婚約者候補でもあります。正式にはマナリエル様お一人ですが、王室の規則上、候補者はまだ数人いらっしゃいますので』



 いらんことも思い出したわ。



 ━━ん?待てよ。余計なことではないかもしれない。そしてナディアがいないことはラッキーかもしれない。


 思いついたヒラメキに、思わず口角が上がった。

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