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聖獣王国物語~課金令嬢はしかし傍観者でいたい~  作者: 白梅 白雪
課金令嬢はしかし傍観者でいたい
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隣国からの来客3

 

「初めまして、マナリエルと申します」


 軽くお辞儀をすると、お母様の幼馴染であろう女性がパァと明るさを増した。


「まぁ!まぁまぁまぁまぁ!なんっっっっって可愛らしいのかしら!!」


 元々このような明るい性格なのか、異常な興奮状態に陥っているのかは分からないけど、思わず一歩後退る。それでも女性はぐいぐいと近付き、気付けば目の前にドアップの顔。背中は壁にぴったりとくっついている。逃げ場なし。

 え、なにこの人。めっちゃ怖いんだけど。


「さすがリリーの娘ね!こんな天使のような子、初めて見たわ!」


 両手で頬を挟まれ、タコの口になってるけど……誰も助けてくんねーし!!お母様は嬉しそうにうふふふと微笑んでいるし、ナディアはまさか止めに入ることなどできるはずもなく。

 一通り満喫したあと、満足したのか解放してもらえた。その頃にはゲッソリだよ。


「いやね、私ったら興奮して挨拶が遅れてしまったわ。改めまして、こんにちは、マナリエル。私はフラウディア・コール・オルセイン・シルベニアと申します。あなたのお母さん、リリーの幼馴染なの」


 8歳相手なのに、とても丁寧な挨拶だった。しっかりレディとして扱われているようで、なんだか嬉し恥ずかし……って、今シルベニアって言わなかった?え、言ったよね?

 入り口の方で控えているナディアを見ると、同じ事を考えているのか、目も口もポカーンと開いている。


 シルベニアという名前はもちろん知っている。だって、隣の国の名前だもの。国の名前を名乗れるのは極僅かの人間だけだ。

 そう──王族のみに許されたもの。

 つまり───。


「ねぇ、頭が高いんじゃない?」


 突然、クソ生意気そうな少年が声を発した。私よりも年下であろう彼は、見た目通りの性格なようだ。王族であると気付いた途端に狼狽える様を見たいのだろう、鼻で笑ってふんぞり返っている。

 ほんと、小さい体のどこにそんな大きすぎる態度が詰め込まれているのだろうか。


「そっちは公爵だろ?公爵家は王族に無礼を働くのか?」


「ソウシ!今日はプライベートだと母上も仰っていただろう。お前のその態度こそ、無礼だぞ」


 慌てて兄であろう少年が嗜めた。てか、メルモルト公爵がどの立場にいるか分かっていないわね、あのクソガキ。私の生まれたメルモルト公爵家は、ぶっちゃけ王族とほぼ同等の立場にいる。このティスニー国の最高位にいる公爵家で、そこんじょそこらの公爵家とは違うのだ。

 そもそも、公爵と伯爵の違いとかも分かっていないんじゃないかしら?公爵舐めてんの?


 というか、ちょっとタンマ。


 さっきソウシって言わなかった?


「ソウシ、あなたはどうしてそのような態度ばかりするの!リリー、ごめんなさいね」


「あら、いいのよ、フラウディア。本当は王妃であるあなたに来てもらうことすら、畏れ多いことなのに」


「何言ってるのよ!大好きなリリーに無理なんてさせられないわ!私が会いたくて勝手に来たんだもの」


 フラウディアさんから、お母様に対する愛情が溢れんばかりに感じる。本当に大好きなんだろうなぁ。私も、こんな友情を築けたらいいな。


 それはさておき。

 見つけたわよ、私の舎弟。


「マナリエルも、ごめんなさいね。いつも注意しているのだけど」


 フラウディアさんが申し訳なさそうに眉尻を下げる。


「いいえ、どちらかというと私が悪いのです」


 躾が足らなかったかしら。元姉として申し訳ない。フラウディアさんはどうして私が悪いのか理解できない様子で、頭にクエスチョンマークを浮かべていた。

 そして、私はツカツカとソウシのもとへ歩み寄る。ソウシはビクッと震え、警戒モードに入っていた。


「全く、気は小さいくせに態度だけは大きいんだから」


 やっと会えた弟への愛しさや、無事だったことへの安堵はあるけど、まずはその腐った根性をどうにかしなければ。


「あんたはいつから私にそんな態度が取れるようになったのかしら?」


 ニヤリと笑って見せると、恐怖を感じたソウシが飛び退いて距離をとった。本能がそうさせたのだろう。きっと分かったはずだ。マナリエルが自分より強いことを。


「な、なんだお前は」


「グラウンド55周」


「!?」


 ぽそりと呟いた言葉に、ピクリと反応を見せる。


「素振り555回」


「なんで……」


「掛かり稽古55回」


「なんで地獄のファイブスペシャルを!」


「鼻歌スキップで登校5日間」


「お前……マナか!!」


「ねぇ、頭が高いんじゃない?」


 ソウシが気付いたところで、そのまま言葉を返してやる。


「申し訳ありませんでしたお姉様」


 私は満足げに微笑んでみせた。

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