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聖獣王国物語~課金令嬢はしかし傍観者でいたい~  作者: 白梅 白雪
課金令嬢はしかし傍観者でいたい
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打ち明ける3

 


「何度結界を張ろうと私には通用しませんわ。いい加減一人占めは諦めてください」

 

「いや、今回のは姫様のための結界だからな?」


「言い訳は無用です。さぁマナ様♥️フゥが助けにまいりま───」


 愛らしい笑顔を私に向けたフゥちゃんだが、すぐに愕然とした表情に変わる。


「マナ様、泣いていらっしゃるの?」


「え?違う違う、これは──」


「マナ様が泣いている。後ろからお胸を揉まれている?泣いている。嫌がっている?無理矢理?襲われている?泣いている。泣かせた?誰が?あの二人?死んでいただく?」


「フ、フゥちゃん?」


 フゥちゃんの表情が一変したかと思えば、ブツブツ呟き始めた。同時に纏うオーラが過去一番に禍々しくなり、それは周囲の木々まで影響を受けている。幹は黒くなり、青々とした葉は枯れ落ち、きらびやかな学舎が一変して魔族の生息地のような寒気のする空間となった。


「フゥちゃーん?」


 恐る恐る声をかけるものの、私を見ているようで視線が合わない。さっきから死ぬ?殺す?なんて言葉が増えてきているのは気のせいではないだろう。これはまずいかもしれない。

 見た目は愛らしい私の家族(ペット)だけど、本来はマザーなんだよね。そもそもマザーが何か分からないけど。魔力を解放する力を持っている大精霊なんだから、暴走させて良いことが起きるわけがない。


「フゥちゃんフゥちゃん!ほら、私だよ!こっち向いてー!」


「そうね、死ぬべきですわ。殺しましょう。この世から消してしまいましょう。二度と(よみがえ)らないようにするためには?クレイアンヌに頼む?それがいいかもしれない」


 良からぬ過ぎることを考えてるー!誰だクレイアンヌって!ダメダメダメ、どうにかしないと!大精霊であるフゥちゃんが暴走したら、優雅な学園生活どころかヒロインをいじめる間も無くバッドエンドだよ!


「フゥ様!」


 突然聞こえた叫ぶような声。振り向かなくてもナディアだということは分かった。それだけで、もう大丈夫だと心から安心できる。ナディアは走りながら私の様子を確認したあと、もう一度フゥちゃんに向き直る。


「フゥ様、そこの二人は殺してはいけません!万死に値する者共ですが!マナリエル様の守護者です!」


「マナ様の?」


 マナリエル、その言葉にぴくりと反応するフゥちゃん。ナディアは呼吸を整えるように胸を押さえた。


「そうです、彼らは紛れもなく、アサシンの木から生まれた守護者でございます」


「マナ様の守護者……つまり」


 フゥちゃんの戸惑う声に、こくりと頷くナディア。


「はい。二人が死ねば、マナリエル様も死んでしまいます」


 …………。


 いや、こくりじゃないからね?


 聞いてないからね、それ。


 こいつらが死んだら私死ぬんかい。


「まじで?」


 念のためレイビーとイリスに確認する。


「そりゃそうですよ、俺達は姫様の誕生と共に生まれたんですよ?姫様の死と共に死にます」


「私達にとっては、姫様のいない世界なんて生きてる価値ないですからね~」


「二人とも……」


 …………。


 あれだよね。ここで「いやいや、私は二人がいない世界も生きてる価値あるなー!死にたくないなー!」なんて言ったらダメだよね、さすがに。人として。


「ワタシモオナジキモチダヨ」


「姫様が嘘つけないのは分かってる」

 

「あ、すみません」


 だって、私は誰かが死んでも生きたい。その人の分まで。大切な人のために死ぬことはできるかもしれないけど、大切な人が死んだから私も死ぬっていうのは無理だ。その感覚が理解できないのは、私が死ぬほど誰かを愛したことがないからか、元々冷めた性格だからか……。

 その人がいないと生きていけない。そんな感情はいつか人を愛せば分かるのだろうか。ウィスキー片手に、グラスの氷カランコロンさせながら友と愛について語り合う日とか来ちゃうのかしら?


「うーむ、愛は深いな」


 無意識に声は渋くなる。


「マナリエル様」


「なんだね、ナディア」


「ソウシ様やロイ様がいない場でそのような発言はお控えください。回収しきれません」


「あ、すみません」


 怒られた。


「まぁそのあたり、姫様は心配する必要ないですよ」


 レイビーのあっけらかんとした声に、思わず目を細める。

 

「なんでよ」


「だって俺達は死にませんから」


「死なない?」


「俺達は人間じゃない。どちらかと言えば精霊に近いんですよ」


 人間じゃなくて精霊?ふと大精霊であるフゥちゃんを見ると、殺意は消えたようだがまだ眉間にシワは寄せ、鼻をフスフス鳴らしている可愛い。


「彼らは精霊のように清らかな存在ではありませんわ!……いえ、それでもマナ様にとっては、必要不可欠な存在であることは間違いありません……」


 今度は眉を八の字に、睫を伏せてシュンとするフゥちゃん。訴えるような強い声から、段々と悲しげに小さくなっていく可愛い超絶可愛い。


「俺達は人間みたいに精霊から力を借りなくても術を発動することができる。姫様を守るための力や方法は、全て生まれた頃から体に染み付いているんですよ」


「あれか、仕様ってやつか」


「未知の単語挟んでくるのやめてもらえます?姫様が喋ると何かどんどん話逸れてく気がするんですけど」


「あ、すみません」


 それにね!とイリスが身を乗り出す。


「それにそれに、姫様は歴代の女神の中でもダントツの力をお持ちですからね!そんな最強の女神を守るために生まれた守護者なんですから、私達も歴代最強の守護者なんですよ♪姫様に危害を加えようとするやつ全てを殺すために生まれたんですから、この世の誰より強くないと意味ないでしょ?」


 イリスは相変わらず陽気な声で、こてんと首を傾げ、愛らしい笑みで殺すとか言っている。


「そうですわね……とっても悔しいですけれど、その通りですわ」


 眉は変わらず下がったまま、フゥちゃんもあっさりと認めた。二人の強さは私だってよく分かる。多分本気を出せば2秒くらいで私を殺せるだろう。……いや、5秒……いや20秒くらいは張り合える、はずだと思いたいわ。

 ただそれは体術のみの話であり、二人の魔術についてはさっぱりだ。相手の魔力量や属性とかを知るには、やっぱりステータス見ないと分からないのかな?

 どちらにせよ、二人が死ぬことは私が死ぬよりあり得ないことだろう。


 思考を巡らせていると、レイビーが優しく私の頭を撫でた。


「まぁ難しく考えなくても、俺達が姫様より先に死ぬことはないってことだけ分かっていればいいですよ」


「私を庇って死ぬとかない?」


「命を代償にしなきゃ姫様を守れないほど、俺達は弱くありません」


「……そっか」


 自分が守られる立場であることは理解している。大切なナディアだって、私のためなら喜んで自分を犠牲にするだろう。きっとレイビーやイリスも、私を守ることを最優先にするはずだ。けれど、それでも、死なないという言葉の方が忠誠を誓われるより心地よいものだった。


「姫様が何に頭を悩ませているか分かってよかったよ」


「心配しなくても、私達は絶対に姫様のそばを離れませんからね!」


「レイビー、イリス……」


「「ヒロインは私(俺)達が消しとくから安心してください!」」


「いやちげーから」


「マナリエル様、言葉遣いにはお気をつけください」


「あ、すみません」


……謝りすぎじゃない?私。


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