表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖獣王国物語~課金令嬢はしかし傍観者でいたい~  作者: 白梅 白雪
課金令嬢はしかし傍観者でいたい
70/111

打ち明ける1

 


 微かなざわめきを残したまま、今日の授業は終了した。


 光属性──脳内はそればかりが反復している。ついに本命のヒロイン登場か。前世の記憶を取り戻してから、自分はヒロインなのかもしれないと浮かれたり、悪役令嬢なのかもしれないと震えたり忙しなかったが、今はだいぶ落ち着いたものだ。と

 私にとって、ここはもうゲームの世界ではない。課金しまくって作り上げたキャラクターだろうと、ソウシが作った世界だろうと、例え乙女ゲームでもそうでなくても、関係ない。

 他の誰でもない、私の足で歩むべき人生なのだから。覚悟を決めた私の足は、躊躇うことなく颯爽と前へ歩みを進める。



「フフ、私もすっかり公爵令嬢が板に付いてきたかしらね」



 …………。



 うっそー!うそうそうっそー!!そんな落ち着いてられるかっつーの!!足なんか、ほら!生まれたての小鹿みたいにガクガクいってますけど!!膝から転げ落ちないのが奇跡だわ。

 あー、やばいよやばいよ、ついに来るっぽいよ、ヒロイン。どうすっぺ?いや、むしろどうなるの!?



「姫様、なんか震えてません?」


 隣を歩くイリスが顔を覗き込む。


「な、何のこと?べべべ別にいつもと変わりなくてよ、オホホホホホホホホぐふっ!」


 やべ、むせた。誤魔化そうと小さく咳払いすると、イリスはさらに怪訝そうに眉を寄せた。


「何か不安なことでもあるんですか?誰か始末する?」


「お薬飲む?みたいなテンションで言うセリフじゃないからね、それ」


 やめなさい、まじで。


「まぁイリスは冗談だとして、心配してるのは本当ですよ、姫様。何でそんなオーラ乱してるんすか」


「いや、まぁ……そうね……うん」


 これは言ってもいいのだろうか。いや、詳しく説明できない以上、あえて言う必要性は感じられない。だけど、言わずにこの流れを変えるスキルは持ち合わせていないんだよなぁ。レイビーもイリスも声色は明るいものの、目が本気だ。本気で私の変化を気に掛けている。これは流せる空気じゃないな。

 私は諦めのため息を吐いた。


「あのね、光属性の生徒がどんな子なのかなぁって気になって……」


 ぽつりと漏らせば、イリスはパァと花が咲いたように笑みを見せた。


「そいつを消せばいいんだね!?」


「お黙り。そんなことしたら一生口聞かないからね」


 そう言えば、きゅうと鼻を鳴らして項垂れるイリス。

 思春期で反抗期で複雑な年頃の子供が「殺すぞ!」とか言うのは、窘めるなり聞き流せば済む話だ。絶対人に言ってはいけない言葉だけどね。だけどここで私がYESと答えれば、イリスは躊躇なく実行する。間違いなく光属性のヒロインちゃんは、今日の夕食が最後の晩餐になるだろう。


「全く、何回も言わせないで。軽々しく命を奪おうとしないの」


「軽々しくなんかないですよ。姫様への発言には責任持ってます」


 イリスの表情は至って真剣で、だからこそ質が悪い。頭痛がしてきたわ。


「責任を持ったとしても、命を奪うのはいけません」


「他人の命には責任持ちませんよ」


「誰も他人の命に責任持てなんて言ってな──いや、他人の命も尊重するべきだわ。とにかく!私が言いたいのは、人を簡単に殺すなってことよ、分かる?」


「複雑に殺せってことですか?まぁそういうスタイルは得意分野ですけど……」


「……私の言いたいこと伝わってる?」


「え?」


「ん?」


「……え?」


 あれ、混乱してきたぞ。結局私は何を伝えたかったんだ?


 私達のやり取りをしばらく観察していたレイビーは、面白いものでも見つけたかのように、それはそれは楽しそうな笑みを見せた。


「おバカ2人だ」


「「うるさい!!」」


「あはははは」


 楽しそうを通り越し、もはやバカにしているレイビーは、笑いながら私の腰に手を当て、クイと引き寄せエスコートをし始めた。


 ん?何だ?抵抗せずレイビーに誘われるままに足を進めると、帰路から外れて中庭へ出た。レイビーの顔を見上げれば、視線がぶつかる。まだヘラヘラ笑っていやがる。

 中庭へ出れば、近くにあったベンチに座らされ、両サイドにレイビーとイリスが座り、見慣れた光景となった。


「え、何、どうしたのレイビー」


「んー?なんか姫様にとって大切な話になるのかなと思って。歩きながら話す内容でもないでしょ」


 大丈夫だよ、人避けしてあるから。と、さらりと言うけど、すごくない?レイビー。振り返れば、イリスも私の腕に抱きつきながらニコニコ笑っている。きっと彼女も分かっているのだろう。


 騒がしいし、ヘラヘラしてるし、短気で扱いにくい二人だけど、私のことを常に考えてくれる。ナディアと同じくらいに。

 前世の記憶とか信じてもらえるか分からないし、作られた世界なんて言っていいのかも分からない。だけど──


「はぁ、敵わないなぁ」


 もういいや。二人には話してみよう。少なくとも、信じてもいいんじゃないかなって気持ちになるくらい、隠し事が申し訳ないと感じるくらい、二人の存在は私の救いであることは間違いなかった。


「話しても引かないでよ」


 そう言えば、


「どんな姫様でも引くわけないでしょ」


 と、レイビー。


「むしろ押し倒すね」


 と、イリス。



 ほんと、敵わないわ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ