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聖獣王国物語~課金令嬢はしかし傍観者でいたい~  作者: 白梅 白雪
課金令嬢はしかし傍観者でいたい
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深夜の来訪2

 


「あ、あのぅ……」


 様子を伺うように声をかけてみるものの、双方からの応答はない。


 私の頭と腰に腕を回し、強く抱き寄せたままのレイビー。そして彼の視線の先には、あの普段の愛らしく、そしておっとりとした姿からは想像ができないほどの苛立ちを露にしているフゥちゃん。私の中でフゥちゃんは犬という認識が強いせいか、心なしか唸り声が聞こえた気がした。歯を剥き出しにして怒っている姿は、まさしく犬の姿を彷彿させた。


「二人とも、一旦落ち着こう?」


 とりあえずこの場を何とかしないと、私の睡眠時間は減るばかりだ。私は何とか二人の間に立とうとするが、レイビーがそれをさせまいと抱きしめる力を強めた。なぜだ。それを見たフゥちゃんは、鼻のシワを深くさせた。


「マナ様を離しやがりなさい。身の程を弁えやがれですわ」


「フゥちゃん?」


「こ、このブタ野郎さん!」


 あー、使い慣れていないであろう言葉は、全部私の真似だわ、これ。


「えっと、えと──あ!このチン「ストーーップ!!分かった私が悪かったフゥちゃん!もうそんな言葉使わないから!!」


 大きな声でそう叫べば、さすがにフゥちゃんも黙った。けれど何がいけないのか理解できていないのか、こてんと首を傾げている。そうだよねそうだよね!私が使ってたもんね!ムカついた時に使ってたもんね!ごめんなさい!

 何はともあれ、私に意識が向いてくれたのはありがたい。チャンスだ。未だ離すまいとするレイビーの腕を力ずくで引き剥がし、のそりと立ち上がった。ついでに一発蹴りを入れるのも忘れずに。軽くね、軽く。


「あのね、二人とも。よく聞いて。なんなら正座して聞いてほしいくらいだけどさ。ね、正座ね。誠意見せよっか」


「マナ様?」「姫様?」


「はい!おすわり!」


 パァン!


「「!!」」


 両手を叩いて指示を出せば、二人は勢いよく正座をし、姿勢を正した。うん、主従関係は完璧だね。こっちは説教をする気でいるのに、フゥちゃんもレイビーも指示をされたことが嬉しいのか、期待に満ちた目でこちらを見てくる。がしかし、今はそんな期待に答える気はさらさらない。レイビーがなぜ来たのか、結界を張って何をしようとしたのか、フゥちゃんがなぜ現れたのか、てかイリスはどうしたんだとか、んなことはいいの、明日で。


 今、私が望むのはただ一つ。


「私は寝る!」


「え、姫様?」「マナ様?」


 戸惑う二人を放置して、さっさとベッドへ向かう。ホントに無理なの、睡眠不足。すぐ隈ができるのよ。それはマナ(前世)の時の話だから、今がどうなのか知らないけど。

 どちらにしろ、寝不足が美容と健康に良いはずはない。ガウンを脱ぎ、すっかり冷えてしまったベッドに潜り込んだ。足が冷たい。


 横になる前にちらりと二人を見れば、追いかけて来ることもなく、先程と変わらず正座をしていた。けれど表情は明らかに落胆していて、寂しげにこちらを見ている。

 まるで雨の中捨てられた子犬のような──

 私が雨の中子犬を捨てた主人のような──

 主人の帰りを疑うことなく待つ子犬のような──


 あー、もう!あんな表情した二人を無視して朝までぐっすり眠れるほど、私は悪役にはなりきれないみたいだ。


「一緒に寝る?」


「「!!!!」」


 先程までの憂い顔はどこへ行ったのか、再び瞳が輝きだした。きっと二人が犬だったら、耳をピンと立てて尻尾はブンブン振っているだろう。むしろ、私にはそれが見える。それくらい二人は分かりやすく喜んでいた。思わず笑みが溢れる。


「おいで」


 そう手招きすれば、二人は勢いよくベッドへ潜り込んできた。フゥちゃんが甘えるようにすり寄ってくる。頭を撫でてあげれば、前世一緒に寝ていたあの頃を思い出した。毛並みは変わらずフワフワで柔らかい。

 対してレイビーは、やはり腰をぐいと引き寄せ抱きしめてくる。腰フェチなのかしら。男性と同じベッドで寝るのはどうなんだろうと躊躇ったものの、あそこで一人だけレイビーを放置するわけにはいかないし、私の従者だと言っているのなら、本気で嫌がることはしないだろう。そう判断した。

 なにより、もう眠くてそんなことどうだっていい。寝られるなら何でもいい。寝かせてくれ。


「せまっ」


 一人で寝るにしては広すぎるベッド。三人で寝ても余裕があるはずなのに狭く感じるのは、確実に二人のせいだ。レイビーに引き寄せられ、フゥちゃんがすり寄ってくる。つまりは完全に身動きがとれない状態である。いやいや、二人の背後、まだ余裕ありますけどね。けれどどちらも譲る気はないようで、これ以上どう詰めるんだってくらいグイグイ来る。なんとも満足気な顔よ。こんな幸せそうな顔をされては文句を言う気も失せ、諦めのため息を吐いた。


 あー狭い。狭いけど、暖かい。先程の冷たさはすっかりなくなり、ポカポカとした暖かさがさらなる眠気を誘った。


「おやすみ」


 そう呟いてからの記憶はない。夢を見ることもなく、深く深く眠りに落ちた。


 次に目が覚めた時、どす黒いオーラを纏ったロイの笑みが待ち構えているとは知らずに……。

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