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聖獣王国物語~課金令嬢はしかし傍観者でいたい~  作者: 白梅 白雪
課金令嬢はしかし傍観者でいたい
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初めての授業2

 


 ミカエラへの制裁を心に決めたあたりから、段々と頭に不快感が現れた。カラオケでヘビメタを大音量で何曲も歌ってるシャウト部屋に居続けた時の感じに似ている疲労感。そう、サキとカラオケに行った時と同じ感覚。


 前世の友人サキは、大のヘビメタファン。中でも「PigBoneRamen」ってグループを崇拝してたなぁ。サキはずっと「ピグボネラメン」って言ってたけど、あれ正式名称「ピッグボーンラーメン」なんだよって、なんなら「豚骨ラーメン」だよって、月日が経つほど訂正しにくくなってさ、結局言えずじまいだったなぁ。ライブに強制連行された時も「ピグボネラメン!ピグボネラメン!」って叫んでてさ、ある意味発音いい外国人みたいになっててカッコ良く見えたのか、気付けば会場全体がピグボネラメンって叫んでたなぁ。で、結局PigBoneRamen本人達も、テレビ出た時に「ピグボネラメンです」って名乗るようになっちゃって。間違いを正解にしてしまうあの勢いはもはや尊敬に値した。

 まぁ、気になって調べたら正式には【Tonkotsu ramen】とか【Pork-bone ramen】だったけどさ。いいんだけどね、豚骨ラーメン美味しいし。ピグボネラメン歌上手いし。


 ふと我に帰り周囲を見回すと、ぐったりしている生徒がいる。そりゃそうだ。声が脳まで響き、三半規管が乱れて目眩すら起きているだろう。空気が振動し、壁のレンガがパラパラと崩れ始めている。天井の明かりは、今にも落ちそうだ。蛍光灯じゃなくて、普通にランタンみたいに火の灯りなんだよね。教室には謎の液体とか置いてあるし、落ちたら火災発生?爆発?あり得る。


「そろそろ黙らせないとまずいね」


「お、黙らせましょうか!」


「レイビー、黙らせる(息の根止める)んじゃなくて、黙らせる(歌うのを止める)のよ」


「ちぇ」


 舌打ちをするでない。どうしてこうもすぐに人を殺したがるのか。人殺し、ダメ、絶対。


「ま、主の言うことは聞きます──よっと」


 レイビーは(おもむろ)に何かをポケットから取り出し、それをひょいと放り投げた。投げた先には、クラミル先生の大きく開けられた口。口の中にスポンと放り込まれた小さな何かを、クラミル先生は思わず飲み込んだ。驚きで歌うことを止めた先生。久しぶりの静寂が広がった。


「ねぇ、何投げたの?先生飲んじゃったけど、大丈夫なの?」


「大丈夫、あれは俺達一族が作っている薬みたいなものですよ。今投げたのは気持ちを鎮める作用があるやつです」


「おぉ、そんなのがあるのね」


 この世界は全員が魔法を使えるわけではないから、魔法だけに頼った暮らしをしていない。もちろん魔法使いが重宝される世界ではあるが、便利に暮らす工夫も、発展してきた文化も、地域や家系などによって多種多様である。レイビーの一族もきっと、独特の工夫があるのだろう。また聞きたいことが増えたな。


「違う」


 突然イリスが呟く。それも、さっきまでのテンションとは打って変わり、深刻な表情だ。


「イリス?」


「レイビーが投げたやつ、それじゃない」


 それじゃないって、どういうことなんだろう。心底嫌そうに顔をしかめ、ポツリポツリと話すイリス。


「レイビーが投げたのは、鎮静化させるやつじゃなくて──」


 イリスが何か言おうとしたその時、ガタンと大きな音がした。見れば、クラミル先生が机に崩れ落ちている。


「はぁ……はぁ……」


 顔を上げた先生の頬は赤く、目と口はトロンと半開き、息を荒くして体を捩らせていた。


「これは…んっ、はぁ……どういう、ことなのかしら……はぁ……体が、痺れる……!」


「レイビーが投げたのは、媚薬だよ」


「…………は?」


 媚薬?媚薬って、あれだよね?アハンでウフンでカモーンな状態になっちゃうと噂の。

 クラミル先生の様子をもう一度よく見てみた。…………うん、アハンでウフンでカモーンてなってるわ。失礼を承知で言えば、豚さんがクネクネしているようにしか見えないけど。


「やべ!姫様に飲ませようとしたやつ、間違えて投げちまった!」


「オイコラ待てコラ聞き捨てならねぇ」


 頭を抱えるレイビーの後頭部をガシッと掴む。私に使おうとした?あれを?


「ちょっとレイビー!あんなもの姫様に飲ませようとしてたの!?姫様に媚薬を飲ませるなんて……飲ませるなんてそんな…………いい、いいよ。最高だよそれ!」


「だろ?」


「だろ?じゃない!」


 思わずイリスの頭を勢いよく叩いた。消せ!その頭の中にいるであろう卑猥な私を消せ!


「あぁ、せっかく姫様のために作ったのに……」


 恐ろしいことを呟きながら、激しく落ち込むレイビー。間違えてクラミル先生に投げてくれたのは、不幸中の幸いだ。

 二人の動向は気を付けよう、まじで。

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