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聖獣王国物語~課金令嬢はしかし傍観者でいたい~  作者: 白梅 白雪
課金令嬢はしかし傍観者でいたい
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初めての授業1

 


 バタン。


「はいはいはいはいはいはいはいはいはいはい、始めますよ席についてくださいね!」


 扉が開いた瞬間にノンストップなマダム。クセの強い先生しかおらんのか、ここは。教室に入ってきた先生は、品の良いマダム──のマネをしているブタさんのような女性だった。歩く度にポヨンと波打ちそうな体をしている。


 狂い叫んでいたお二人様(レイビーとイリス)は、今は私の両側で大人しく座っている。

 ぷっくらと頭にこぶができているのは、私が拳骨したからよ。もちろん、他の生徒には見えない速さでね。初日から公爵令嬢のイメージ崩したら、恐ろしくてナディアの顔が見れないわ。


 二人はもっと不満気な顔をするかと思っていたけど、拳骨が思った以上に衝撃だったのか、あからさまにしょんぼりと落ち込んでいる。母親に叱られた子供のように、唇を尖らせて眉を下げている。双子というだけあって、そういう仕草まで似るのか。


 ここまで落ち込まれると気が引けるけど、それでもここで色々説明するわけにはいかない。ロイとの関係や、なぜエンブレムが肌に刻まれているのかなんて、誰にでも聞かれるような場所でペラペラ喋った日には、翌日には尾ひれを付けて拡散されるわ。

 それに、こっちだって聞きたいことはあるのよ。そもそもレイビーとイリスが何者なのか、なぜ私を知っているのか、何のために入学し、近付いた目的は何か──って、しれっと打ち解けちゃってたけど、この二人のこと名前しか知らないじゃん。こっちの方が聞きたいこと多いじゃん。

 いいわ、後でたっぷり説明してもらおう。まずは授業よ。初めての授業、何を教えてもらえるんだろう。私は逸る気持ちを抑えて、先生に注目した。


「初めまして、私はクラミルと申します。ここカルヴィナータで教師をしておりますわ。みなさん、これからよろしくお願いいたします。さて、まずは私がどのような人物なのか、簡単に説明しますわね。私は、生まれも育ちもシルベニアでございます。幼き頃は先生は目指しておりませんでしたのよ、歌手になりたかったんですの。自分で言うのもなんですが、なかなか上手で町中ではそこそこに有名でしたのよ。え、そんなに私の歌声が気になります?仕方ありませんわね、今日は特別に披露させていただきますわね」


 軽い咳払いのあと、誰も求めていないのになぜか始まったコンサート。うん、すごい上手だ。オペラ歌手みたいだ。間違いなく上手い。けど、なぜ今歌い始めたのか、誰も理解できていないだろう。歌唱力の感動も吹き飛ぶサプライズ演出だ。




「待った」


「え、あいつの喉潰します ?」


「違う!こえーなオイ!」


 ふと思い出したことがあって一人言のように呟いたものが、イリスには「あの歌声黙らせてこい」と聞こえたけらしい。イリスが言うとね、シャレにならないのよ。本気で殺れる人が言うとまじで怖いな。


「どうしました?」


 レイビーが顔を覗きこむ。歌声のおかげで、周囲に気付かれることなく話せるのはラッキーかもしれない。耳塞いじゃってる人いるし。 

 

 ずっとね、思ってたんだよ。何か忘れてるなーって。でもナディアがいる限り、忘れ物なんてあるはずがない。でも頭の片隅に何かがある。気にしないようにしていたけど、それでもやっぱり引っ掛かって、何かなー、何かなー、怖いなー、怖いなーって思ってたらね、思い出したの、今。あいつの存在を。


「ミカエラ」


 声に出した途端に、ミカエラに関する記憶が一気に蘇った。そう、あいつよ!私と同じ誕生日のミカエラも入学しているはずだから、この教室にいるはずじゃないのかしら。むしろなぜ忘れていたのかしら。そんな影薄いキャラだっけ。


「ねぇ、この教室にいる人はみんな、今日入学したのかしら?」


「はい、そのはずですよ」


「それなら、みんな同じ誕生日ってこと?」


 だとしたら驚きだ。ざっと見渡しても10人ほどだろうか。決して多いとは思わないけど、同じ誕生日だと考えれば多い方だよね。


「いえ、誕生日当日に試練に行ける者ばかりではありません。さらに魔力が解放された者はすぐに入学となっていますが、こちらも出発する日や学園までの移動時間など、やはり差が出てきます。そのため、誕生日が近いのは確かですが、同じ者ばかりではありませんよ」


「なるほど……。レイビー、真面目に話せるじゃない」


「根は真面目なんで☆」


 いや、真面目な人は舌を出してウインクしてこないと思う。バチコンと飛んできそうな星を無意識に避けた。


「ミカエラって、姫様と同時に試練をクリアしたあの青年ですよね」


 イリスが頬杖をついて、思い出すように視線を上げる。


「そうそう。って、その時から尾行してたのかよ」


「正確には、生まれた時から見てましたよ。あの青年は、姫様より一足早く入学を済ませていますね」


「そうなんだ……なんか気味悪い発言が聞こえたけどあとで詳細話せよ」


 そうか。ミカエラ、先に入学したんだ。

 待ってくれなかったんだ。

 そうか。


 ………次会ったら蹴っとこう。


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