属性検査3
「マナリエルっ、こちらは、ふっ、エンダー学園長だよ。この学園の、っ、創始者なんだ」
ロイよ。紹介する前にその笑いを引っ込めろ。いつもはスマートなロイがここまでツボに入るとは。それほどまでにやらかしてしまったのだろうか、私は。何はともあれ、学園長ならきちんと挨拶しておかなきゃだよね。
すぐにスカートを持ち上げ、膝を折り、習った通りの正しいポーズをとる。
「初めまして、エンダー学園長。メルモルト公爵家の長女、マナリエル・ユーキラスと申します。」
「はいはい、承知していますよ。よくいらっしゃいました。私はエンダー・ハロッドです。このカルヴィナータの学園長をやっています。生徒の皆さんからはエンダー先生と呼ばれていましてね。自分で言うのも何ですが、中々生徒からの人望は厚いと思っていますよ。マナリエルさんも、困ったことがあれば何時でもご相談くださいね。あぁでも私、捕まりにくいことでも有名でしてね、この扉も中々出現しませんので、もしかしたら他の先生の方が早いのかもしれません。もちろん由々しき事態の時は最優先で駆けつけますのでご安心くださいね。学園長としての責務は命かけてますの。あ、でも確かメルモルト公爵のご令嬢ということはロイさんの、あ、ここでは王子も爵位のない者も皆等しく生徒ですので、殿下とは呼びませんよ。不敬罪とかで殺さないでくださいね。そうそう、つまりマナリエルさんは、ロイさんの婚約者ということですよね。はいはい、承知していますよ。よくいらっしゃいました。それなら困ったことがあれば、ロイさんに言うと良いでしょう。彼は学園の中でも優秀な生徒でしてね、入学1年目にして、もう生徒会のメンバーなんですよ。すごいことなんですよ、これ。あなたのご両親ももちろん優秀でしたよ、生徒会のメンバーでしたね。あ、生徒会のシステムについては私よりロイさんから聞いた方が分かりやすいかもしれませんね。魔法については心配いりませんよ。1年目は基本中の基本から丁寧に指導していきますのでね。そうでなくとも、スタンレイさんとリリーさんのお子さんなら、きっと立派な魔力をお持ちでしょう。いやいや、楽しみです。それでは早速、属性の確認をさせてくださいね」
「…………」
「…………」
「…………は?」
え、ちょっと待って。いきなり挨拶したかと思えば、相槌を打つ暇もないほどの演説が始まったんだけど。で、終わったのかよく分からんところでまた沈黙してるんだけど。
訳が分からずロイとナディアを見る。
「マナリエル様。エンダー学園長は会話のキャッチボールが少々苦手でいらっしゃいますので」
「これ少々ってレベルじゃなくない?」
会話と呼べる部分すらないじゃん。ほぼ一方通行だよ。なんか自分のターンがないってストレスだよね、ちょっとイラっとした。それにしても、今属性の確認とか聞こえたけど。
「属性ってどうやって確認するの?」
「これだよ」
ロイが指す方を向けば、そこには先程の聖杯と似たものが5つ立っていた。こんなのいつからあったんだ?エンダー学園長がインパクトありすぎて、全く見えていなかった。
とても似ているけど、さっきの聖杯と違う点がある。5つの聖杯は円陣になっていて、その床には魔方陣のようなマークが描かれていた。聖杯は複雑な形をした魔方陣を囲むように、それぞれ置かれている。不思議なのは、聖杯の中で燃えている炎の色。それぞれ赤、青、黄、緑、白の色で揺らめいている。これって炎なのかな?
でも何となく理解した。ゲームの中では魔法属性は当たり前のように存在している。あれでしょ?この中に立てば、自分の属性が分かるんでしょ?ゲーマーの知識なめたらいかんよ。
そうと分かれば、すぐに魔方陣の中へ入った。自分の属性が何なのか、ずっと気になってたんだよね!ステータスにも表示されなかったし。
中心に立ってしばらくすると、5色それぞれの炎の揺らめきが強まってくるのが分かった。その揺れは少しずつ強まり、聖杯もカタカタと音を鳴らす。
そして──
ドン!!!!
「「「「!!!」」」」
炎が5つ全て天井高く膨れ上がる。あまりの衝撃に一度隠した顔を、恐る恐る上げてみた。
そこには、炎がそれぞれ形を持ち、5匹の獣が現れていた。
それが何を表すのかは分からない。分からないけど、この状況が通常イベントではないことは理解した。マンドリルの顔がやばいことになってるもん。




