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聖獣王国物語~課金令嬢はしかし傍観者でいたい~  作者: 白梅 白雪
課金令嬢はしかし傍観者でいたい
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属性検査1

 


 腰も落ち着いたところで、ようやく降ろしてもらえた。足が地面にしっかり着くまで支えるあたり、ホント紳士だわ。前世でこんなことされたら詐欺師かナルシストって引いたかもしれないけど。そう思わせない技術は……うん、顔だな。あれだよ、イケメンに限るってやつ。どこかから黄色い声が聞こえる。悲鳴のような色もあれば、ブーイングらしき色もちらほら。



「ありがとう。ごめんね、重たかったでしょ」


 そう伝えると、ロイは目を丸くしたあと、ふんわりと微笑んだ。


「天使が重いわけないだろう。羽のようだったよ」


 あっま。


「いや、私42kgあるからね、羽よりは確実に重たいわ」


「マナリエル様、そこは頬を染めて俯く方がベターです」


「マジか」


 分からん。そういう時の返しがよく分からん。ロイから何度も甘いセリフは受け取っているけど、慣れに比例して返しスキルが身に付くわけじゃないんだ。


「難しいんだね」


 むしろ自らの体重を公表する方が難しいことかと……なんて言っているナディアは置いておいて、軽く周囲を見渡す。左右は緑豊かな自然。後ろはさっきまで歩いていた─実際には私は歩いてないけど─道が続いている。

 そして正面。


「これ……何?」


 何。さっきの門といい、ドーンとでっかいのが好きなの?学園作った人は。あれか、ドドーンとババーンと大きければ大きいほどすごいみたいな単細胞が作ったんだな。

 そう考えずにはいられないほど、無駄に大きな建物がある。いや、無駄とは限らないよね。複合型施設のように、様々な利用方法があるのかもしれない。よく見れば白壁に汚れ一つなく、新しく建てられたものだろうか。北欧を思わせる外観で、要所要所にガラス細工のような美しいタイルが施されている。センスは悪くなさそうだ。ゴールドの縁に囲われた窓は不均一に配置されていて、階数の判断がつかない。


「ここは始まりのentrance(入り口)だよ」


「始まりの……」


 何かカッコよさげだけど、要は昇降口か。


「言葉で説明するより、入った方が早いかもしれないね」


 そう言ってロイは腰に手を添えて進むことを促した。それに従い建物へ近付いていく。ドアは3,4mほどだろうか。いや、もう少しあるのかもしれない。窓枠のゴールドより少し淡い輝きを放ち、木目調が目に優しい。いやどうでもいいんだけどさ。

 ダメだ、さっきの始まりの入り口がツボに入っちゃった。あれ考えたの、絶対ソウシでしょ。何だよ始まりの入り口って。ソウシが前世、昇降口に入る時にそんなことを考えていたかと思うと……ああ、ダメ、無理!


「ブフォ!」


 我慢できなくて盛大に吹き出しちゃったよ。


「マナリエル!?」


「マナリエル様!?いかがされましたか!?」


 突然吹き出した私を心配して、ナディアが駆け寄る。が、顔を見て何かを察したのか、すんと顔を無にして元の位置へ戻った。


「え、マナリエル大丈夫?何があったの?」


 理解していないロイは、まだ気遣うように顔を覗きこんでくる。いや、今は近付かないで。笑いを堪えると鼻の穴が広がっちゃうのよ!私は咄嗟にハンカチで口元を多い、顔を反らした。


「だ、大丈夫ですわ。ちょっと唾液が突然大量に分泌されまして。のどちんこが痙攣を起こしましたの」


口蓋垂(こうがいすい)です、マナリエル様」


「そうそう、口蓋……って、むしろよく知ってるねナディア」


「ああ、口蓋垂ね。苦しいなら出しちゃってもいいんだよ」


 ロイが両手を差し出す。ん?何?手のひらなんか見せてきて、どうぞと言わんばかりに。


 …………。


「そこに出せってか!」


「大丈夫、マナリエルの唾液はキレイだよ。むしろ欲しい」


()ぃっ!」


 誰だよ、イケメンは引かないって言ったやつ。私だよ。イケメンでもダメなセリフはあるのだと、この時初めて知った。


「ロイって変態だったのね」


 自分の体を抱き締めながら、ロイから少し距離をとる。


「変態?私が?」


 きょとんとした顔を見せ、顎に手をあて思い出すかのように考えている。


「言われたことはないなぁ」


「でしょうね」


 どこに王子を変態呼ばわりするやつがいるんだよ。私だな。私だって、さすがに婚約者であり幼馴染みという関係がなければ言えない。


「もしマナリエルの全てが欲しいという感情が変態だと言うなら、私は誰よりも変態なのかもしれないね」


「ロイ……」


 それは普通に恋だと思う。自分で言うのも恥ずかしいから、言わないけど。


「そうか、私は変態だったんだな」


「あ、あの、ロイ……」


「ありがとうマナリエル、この感情に名前がついたようで嬉しいよ。晴れやかな気持ちだ」


「ロイさんや……」


「さぁ、早く中へ入ろう」


 恋だよって、その感情は恋であり愛する気持ちだよって、言った方がよかったかもしれない。

 意気揚々と扉を開けるロイの背中を眺めていると、ナディアが隣に並んだ。


「マナリエル様、どうされるんですか」


「え、私のせい?」


「失礼ながら、確実にそうでしょう」


 そんなため息つかなくても。


「まぁいいんじゃない?愛されてるみたいだし」


「当然です。ロイ様はこの上なくマナリエル様を愛しておられます」


 ナディアの意外な発言に、その横顔を見る。


「例え隣国の王子であろうと、心の底からマナリエル様を愛し、大切にしてくださる方でなければ、私はマナリエル様の婚約者として認めていません」


「ナディアっ!」


 感極まり、思わずナディアに抱きついた。どうしてここまで私に尽くしてくれるのだろう。メイドとはそういうものなんだろうけど、私の前世の暮らしではそういった主従関係がなかったため、ここまで尽くすというのは本当にすごいと思うし、感謝しなければと感じる。


「ナディアのこと、誰よりも大切にするからね!」


「身に余るお言葉でございます」


 ナディアは優しく微笑み、垂れてきた鼻水を拭いてくれた。

 はぁ、ホント大切にしよ。

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