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聖獣王国物語~課金令嬢はしかし傍観者でいたい~  作者: 白梅 白雪
課金令嬢はしかし傍観者でいたい
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行かない理由2

 

 自室で二人になりたいという要望を叶えるため、ナディアは紅茶とスイーツを用意したあと、一礼して退室した。彼女のことだ、きっと話の内容が漏れて聞こえてしまわないよう、メイド達へ指示を出し、本当に二人きりだけの環境を用意してくれているのだろう。必ずそうしていると確信できるほど、ナディアは信頼できる女性だ。


「で、どういうことだよ、マナ」


 人の気配が消えたことを確認したソウシは、早速話を切り出した。それでもあまり大きな声で話したくないことだったので、私は自然と距離を縮める。ソウシもそれに倣い、少し耳をこちらへ傾けた。


「ここってさ、ソウシが中二病を発症して作り上げた世界じゃん?」


「くそムカつくけど概ね正しい」


 ソウシは若干苛立ちを見せたが、早く続きが聞きたいのか脱線することを避けて、先を促した。


「私ってさ、どんな立ち位置だと思う?」


「立ち位置?そりゃお前、乙女ゲームなんだからヒロインだろ?ティスニー随一の公爵家の令嬢なんだから。おまけに美少女で人生勝ち組も同然の」


「バカ野郎!」


 バチン!


「はぶ!」


 平手打ちされたソウシは、ギャグ漫画かってくらいの勢いで倒れこんだ。


「乙女ゲームナメんなよ!この美貌にいくらかかってると思ってんだ!」


「知らねーよ!」


「30万なり」


「バカ野郎はお前だ!」


 思わずソウシが叫んだ。他のゲームも同じように課金してたことは黙っておこう。説教が長くなりそうだもん。過去にハマッたゲームも含めると、課金総額がもうケタ1つ上がりそうだなんて……言わない。

 でも今は、課金していたことに後悔は全くない。むしろ100%満足している。


「30万でこの美貌が手に入れば安いもんだわ」


「転生したからこそ課金が報われたな」


 そう。別に元々課金に後悔はない。だけど、全力で課金していた自分をここまで褒めたいと思ったのは、転生したからこそ。きっと課金もせずにモブキャラのような設定のまま転生していたら、今頃自分を恨んでいただろう。


「でも、でもねソウシ。疑問点が1つあるの」


「なんだよ」


 あの日、私の誕生日にロイと話して気付いたことがある。


 それは──


「いつ、誰が私がヒロインだと言った?」


 至極簡単なこと。むしろなんで今までそれを疑問に持たなかったんだろう。まぁ私が美しすぎたせいなんだけど。


「え、だってお前、そのキャラでヒロインとしてゲームしてたんだろ?」


「でもここは私のやっていたゲームの世界じゃない。創造主はソウシ、あんたなの。」


 指をさしてみたものの、ソウシはいまいち状況が飲み込めていない様子だ。つまり何が言いたいのか、それを理解するには時間が足りないようだった。


「見た目は確かに絶世の美女だわ。でもそれだけでヒロインなんて決めるのは尚早じゃない?」


「まぁ、ヒールにも美女はいるな。考えたことなかったけど……その負けん気の強さ、ひねくれた根性、我儘で自由奔放……完全に悪役にピッタリだな」


「うわ、くっそムカつく」


「そういうとこだよ」


 ヒロインはくそなんて言わねぇ、なんて、今度はソウシが指をさしてきた。

 でもやっぱ、そうか。


「私は悪役の可能性がある」


「まぁ、十分あり得るな」


「となると、ヒロインはどこ?王子や貴族なんかとどこで出会う?」


「そりゃ出会うシチュエーションでいえば職場や学校……あ」


「そういうこと」


 ソウシは一瞬沈黙したあと、そのまま顎に手をあて俯き、ブツブツと何やら考え始めた。


「憧れの魔法学園に入学したヒロイン。そこで幾人もの男と出会い、親睦を深めていく。もちろんシルベニアの第一王子である兄さんも攻略キャラだよな。兄さんとヒロインの距離が少しずつ縮まっていくのを感じたマナは、ヒロインに度重なる嫌がらせを繰り返す。そして断罪の日は訪れた──」


 あ、シナリオ考えてたんだ。てか、私断罪されるんかい。


「そうかそうか、だから学園に行きたくなくなったんだな」


 納得した様子で何度も頷くソウシ。分かってくれたならいい。さすがのソウシも、姉が裁かれ落ちていく様なんて見たくないだろう。きっと学園への入学阻止に協力してくれるはずだ。


「いいわね、ソウシ。私悪役になって没落する人生なんて真っ平ごめんなの。絶対に学園に行くわけにいかないわ。協力してくれるよね」


「いや、お前は学園行っとけ」


「なんでやねん!」


 なんで!?せっかく協力な助っ人ができたと思ったのに!こいつは私の人生を奈落の底へ落としたいんか!


「いっとくけど、その時はお前も道連れだからな?」


 キスしちゃうんじゃないかってくらいの至近距離でソウシを睨んでみても、「いやー、さすが悪役、いい威圧感出すねー」なんてヘラヘラと笑っている。このまま鼻へし折ってやろうか。


「大丈夫だよ」


 ふいにソウシが言う。……なにが?


「お前は多分、大丈夫だ」


 だから、何が?何度聞いても、ソウシはただ笑うだけだった。

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