帰ろう1
ちょいと魔力解放してもらうつもりで入ったガーデンで、まさかの昔飼っていたペットと再会。そしてもう一匹はどこぞの国で王様をやっているという。
なぜ?どうして?というのは考えるとキリがないから止めるとして、シーちゃんが王様かぁ…。まぁ危険な国っていうのが気になるけど、せっかくなら会いたいなぁ。
……行く?行っちゃう?行くしかないよね?
「ねぇ、ユニハザールってどこにあるの?」
「ちょっと待て。お前絶対行く気だろ」
ミカエラが私の頭を鷲掴みする。花も恥じらう乙女の頭を、よくもまぁボールみたいに。
「何よミカ。私邪魔されるの嫌いなんだけど」
「学校」
「は?」
「魔力解放された者は、すぐに入学っていう決まりだろ」
「あー」
そうだった。母なる庭で魔力が解放された人は、すぐにシルベニアの魔法学校へ入学するという規則がある。これは魔法を正しく安全に扱う方法を学ぶためであり、魔法省の法律でもある。つまり、入学を拒否するということは魔法省を敵に回し、ブラックリストに名を連ねることになるのだ。
それを知っていて、わざわざ入学を遅らせる者がいるだろうか、いやいないだろう。いるとしたら、よほどの曲者か変態くらいだろう。
「まぁ、とりあえず入学するしかないよねー……クソッ」
「ほんと口悪いな、お前」
ミカエラの呆れた顔を見たのは何度目だろう。今日会ったばかりなのにね。
「仕方がないから一旦入学して、折を見てシーちゃんに会いに行くことにしようかな」
「それがいいと思いますわ」
フゥちゃんがこくこくと頷いた。安堵の顔からして、よほど私をユニハザールへ行かせたくなかったんだろう。そんなホッとした顔されてもなぁ……チャンス伺って絶対行くつもりだからなぁ。ほら、絶対ダメ!って言われるものほど興味が湧くでしょ?
つい先ほどまで全く知らなかったユニハザールに、今は関心しかない。シーちゃんには絶対会いたいしね。
でも魔法省に目ぇつけられるのは避けたいし、とりあえず延期ってことで。学校は平穏無事に過ごしたいのよ、私は。
「さて、と。帰るか」
魔力は手に入ったし、ここでの目的は果たした。あとは帰るだけだ。私の帰宅宣言に、ピクリと体を揺らすフゥちゃん。我ながらアッサリしてるなとは思うけど、いつまでも帰らないと心配する人達がいる。
「フゥちゃん、会えて本当に嬉しかった。でもここにずっといるわけにはいかないの。また会いに来るからさ」
なるべく優しい声で頭を撫でてやる。フゥちゃんは離れたくないのか、きゅっと私の服を掴んだ。
「あの……」
「ん?どうした?」
「ついていっては、ダメでしょうか?」
潤んだ瞳でおずおずと見上げてくるフゥちゃん。このおねだり上手め☆とか言ってる場合じゃない。
「フゥちゃんはマザーなんだよね?ここでみんなの魔力を解放しないといけないでしょう?」
そう、フゥちゃんは私のペットであり、マザーでもある。この大役は放棄させていいものではないだろう。
「実は、私がガーデンにいる必要はありませんの」
「え、そうなの?」
意外な返答に思わず目を丸くする。
「確かに私はマザーですが、魔力のある者かどうかは庭が判断してくれます。そして庭に認められた者の魔力を解放するのは、私の力を込めたこの大樹が行ってくれます。つまり私はこの場にいなくても、時々大樹に力を補充しに来れば十分なんですの」
「なんか便利なシステムだね。でも、そっか。いなくてもいいんだ」
「はい」
「ならウチ来る?」
「はい!」
今日一番の大きな声が響いた。
「よし、フゥちゃんは決定ね!ミカはどうすんの?ウチ来る?」
「は?なんだ唐突に」
突然の誘いに、ミカエラは戸惑っているようだった。そりゃそうだ、普通は各自解散っていう流れになると思うだろう。でも、私は最初からミカエラを屋敷へ連れて帰るつもりでいた。
心から人を信用することのない極度の警戒心、誰かと感情を共有したことのないであろう乏しい表情、人殺したことあるんじゃね?ってくらい闇の深いオーラ。
トータルで見ても、一般家庭で愛情たっぷりに育ったとは考えにくい。むしろその反対なんだろうと推測させる雰囲気が、ミカエラにはあった。
普通はそんな人間怖がるものだろうけど、私はね、前世の感覚でいうと30代に突入してるのよ。16歳の少年を怖いと思うことはないし、むしろ母性本能かしら?助けてあげたいと感じる。
というわけで、連れて帰ろう。うん、そうしよう。
「はい決まりました!二人とも帰るよー!」
「はーい!」
「おい!ちょっと待てよ!俺まだ何も……って痛えよ!引っ張るな!」
元気よくついてくるフゥちゃんと、半ば引きずられるように歩いているミカエラ。
さぁ、帰りましょう!話はそれからよね!




