再会3
ちょ、一旦やめ。
どういうこと?フゥちゃん?この子が、あの?いや、私の知ってるフゥちゃんは犬だった。でもそう言われれば、ピンクとかフワフワとか、そのクリクリの瞳とか、ペットのフゥちゃんにしか見えないけど。
どうしよう。「やっと分かってくれたのね!」みたいなキラッキラの目してるけど。どこから聞けばいいのかさっぱり分からない。
「フゥちゃん、なんだよね?」
とりあえずもう一回聞いとこ。
「はい!あなたの僕、フゥですわ♥️」
アカン返答が来た。僕にした記憶はないんだけど。
「マナリエル。マザーを僕にしていたとは、本当に何者なんだ?」
心底驚いている様子だけど、ミカエラ。なんか無性にムカつくから殴っていいかな?
「えっと、あのさ、フゥちゃん。フゥちゃんはいつからマザーなの?」
「私は生まれた時からマザーですわ」
「私といた時は?フゥちゃんも転生したの?」
「いいえ、私はずっとフゥですわ。あなたと出会った時からずっと」
そう言って胸に手を当てるフゥちゃん。
ということは、フゥちゃんは前世の時からフゥちゃんで?あの時からこの世界があって?でもここはソウシの考えた世界で?私は生まれ変わって?でもフゥちゃんはフゥちゃんで?
だめだ分からん、混乱する!
「……まぁ、いいや」
考えても分からないことは、考えないに限る。不思議に思う気持ちよりも、フゥちゃんに再会できた喜びの方が遥かに大きいから。ギュッと抱き締めて顔を埋めれば、ふわふわした毛(今は髪だけど)が懐かしかった。
「ふふ、フゥちゃん気持ちいい」
「私…またこんな風にマナ様に抱いていただける日が来るなんて…幸せですわ」
震える小さな体から漏れた声も、同じように震えていた。
フゥちゃんと名付けたのは私。いつだったかは覚えてないけど、確か小学生の頃、雨の日に私が拾ってきたんだよね。びしょ濡れで、2匹ともケガをしていた。そう、2匹……。
「あ!フゥちゃん!シーちゃんは?」
思い出した!というか、なんで忘れてたんだろう。前世だから仕方がないのかもしれないけど。
あの日ケガをしていたのは、1匹の犬と1匹の猫。フゥちゃんとシーちゃんだ。フゥちゃんがこの世界で生きているなら、シーちゃんも一緒なんだろうか。
「シーは、ここにはいませんわ」
そう言ったフゥちゃんは、どこか悲しげだった。
「ここにはいないってことは、この世界のどこかにいるの?」
フゥちゃんは、小さく頷く。けれどやっぱり、その表情は決して明るいものではなかった。
「私はこの世界でマザーと呼ばれているように、シーにも呼び名があるんです」
「何、まさかファザーとか?」
「はい」
「え、まじで」
当たっちゃった。シーちゃんはファザーか……ファザーって何する人?お父さん?お父さんって感じの子ではなかったけど。
子犬でキャンキャン元気だったフゥちゃんとは対照的に、シーちゃんは物静かで警戒心の強い子だった。2匹とも突然いなくなって、必死に探したけど見つからなくて、それきりになってしまった。この世界にいるなら、会いたいな。
「フゥちゃん、私ってもう魔力解放されてるの?」
「はい、もう魔法が使えますよ」
「そっか!じゃぁこの森を出たら、シーちゃんに会いに行こうかな」
「そ、それはいけません!」
突然、フゥちゃんが叫んだ。
「マナ様は……あそこに近付いてはいけません」
「あそこ?シーちゃんはどこにいるの?」
「……ユニハザールですわ」
「ユニハザール?」
どっかの国?ティスニーとシルベニアのことは多少は学んできたけど、他の国のことはさっぱりだ。どこだユニハザール。フゥちゃんは少し躊躇いながらも、意を決したように顔を上げた。
「ユニハザールは、妖の国ですの」
「妖?妖怪が住んでる国ってこと?」
「妖怪──そうですね、こちらでは妖族と呼んでいます。あそこはマナ様が行ってよい場所ではありません。危険すぎます」
「そんな危険なところにシーちゃんがいるの?それなら尚更助けに行かないと!」
「いえ、助ける必要はありません。だってシーは、ユニハザールの王ですから」
「……え?王?」
「はい、王です」
それファザーじゃなくて、キングじゃん。




