再会2
甘くて、ふわふわで、まるでわたあめ。そんな表現がここまでぴったり当てはまる人間がいるのかと感じるほど、彼女はまさしくそれだった。
あ、でも人間なのかな、この子。なんか浮いてるけど。
髪も瞳も服も、とりあえず全身ピンク。ふわっふわのピンクガールで、思わず前世のピンクな夫婦を思い出した。いや、目の前のピンクガールの方がもっと愛らしいんだけどさ。例えが悪いな。えっと……うん。フランス人形みたい。ピンクの。
「お会いできる日を心待ちにしておりましたわ」
幼子のような、声まで甘い。心待ちしていたのは多分私なんだろう。めっちゃニコニコしながらこっち見てるし。視線合うし。なに、私と知り合いなの?……誰だ?こんなピンクな可愛い子、一度会ったら忘れなそうなんだけどなぁ。
でも相手は私のこと知ってるみたいだし、誰?って聞くのは失礼だよね。話合わせて知ってるフリ?ダメダメ、私そういうのすぐボロ出るからなー。
どうしようかとグルグル考えていると、ミカエラは私の前に立った。お、なんだい、守ってくれるつもりかい。
「君は誰なんだ?」
「あなたには関係ないですわ」
ふんわりとした笑顔から一転して、冷たい視線になる。あれ、なんか萌えないギャップを見てしまった。一瞬状況が理解できずに固まった私に比べ、ミカエラはさほど動じることなくさらに一歩前へ出た。
「関係ないことはないだろう。そもそも俺とこいつを引き合わせたのは、お前なんじゃないか?」
「こいつって言うな芋野郎」
「マナリエルは少し黙って、めんどくさい」
「そうですわ。お芋さん、ヤ、ヤロゥ?はお黙りなさい」
「慣れない言葉は使わなくていいから」
ミカエラは心底疲弊しているようだ。こんな美少女二人に囲まれてるのに、なんて顔なのかしら。
「ねぇ、あなたの名前は?」
「はい!私はフゥと申します」
ミカエラと交代した私の質問には、この上なく上機嫌に答えてくれた。差よ。
「んーと、フゥがマザーってことなのかな?」
「そうですわね、確かに私は人間からマザーと呼ばれています」
「やっぱり!あなたがマザーなんだね!」
「ですが、私はフゥですわ。どうかフゥと呼んでくださいませ」
やんわりと、けれど強い意思で訂正された。マザーって呼ばれるの嫌いなのかな?
「分かった、フゥちゃんって呼ぶね」
そう私が言うと、フゥは歓喜に打ち震えた。その姿が堪らなく愛らしくて、思わず頭を撫でる。すると、痙攣を起こしたんじゃないかってくらい、ピクピクと喜びを表現していた。この子が本当にあのマザーなの?
「フゥちゃん、本当にマザーなの?みんな魔力を解放するためにあなたのところに来ているってことになるんだけど」
いつの間にか私にすりすりと甘えている背中を、優しく撫でてやる。
「もちろんですわ。私は大精霊の一人で、魔力を解放する力を持っていますの」
フゥは得意気に鼻をフフンと鳴らしてみせた。すごいすごいと頭を撫でれば、これまた満足げな笑顔を見せる。なんかペットみたいだな。
「ふふ、フゥちゃんは可愛いね。なんか昔飼ってたペットを思い出すなぁ」
「おいマナリエル。大聖霊とお前のペットを一緒にするな」
呆れた口調で諭そうとするミカエラを睨み付けたのは、フゥだった。
「うるさいですわ、ミカエラ」
「何で俺の名前」
「当然です。だって私、見てましたもの、マナ様がガーデンに入られてからずっと」
音が聞こえそうなほどプリプリしている。なんか、私とミカエラに対する態度が違いすぎない?これに関してはミカエラも感じていたようで、若干眉をしかめた。ただでさえ目付き悪いのに、そんな顔したら人殺せそうな勢いだよ。
「ずっと見てたなら、どうせマナリエルと俺を引き合わせたのもお前だろう」
「ええ、そうですわ。今はとても後悔していますけれど」
「あれだけグルグル歩かせておいて、大聖霊ってのは随分なんだな」
おいおいおい、何か空気悪くなってない?
「ちょっとミカさんよ、大聖霊にそんな口聞いていいのかい」
「確かに大聖霊は偉大で尊いものだ。だけどな、俺は生意気なクソガキが一番嫌いなんだよ」
ペット扱いで叱った男がクソガキって言ってる!
「誰がクソガキですの!許せませんわ!ご主人様の唇を奪っておいて偉そうに!」
「「……は?」」
思わずミカとハモる。こちらがポカンとしていることも気付かず、フゥのプリプリは頂点に達しようとしていた。
「私だって、どれほどその柔らかい唇に触れたかったことか!それなのに!あぁ、護衛のためとはいえ、どうして引き合わせてしまったのかしら。あんなことになるなら、恥ずかしがらずにすぐ出ていけばよかったですわ!」
「ちょ、落ち着こうフゥちゃん」
ん?待てよ。
フゥちゃん?
ピンクの、ふわふわの、わたあめみたいな、めっちゃ甘えん坊の。
「フゥちゃん?」
「はい♥️」
あ、この子、私が前世飼ってた犬だ。




