誕生日
「おはようございます、マナリエル様。それと…お誕生日おめでとうございます」
朝の支度をしていると、ナディアがいつものように部屋に入ってきた。素敵なメッセージと共に。
「ありがとう、今年もナディアに一番にお祝いされて幸せよ」
ふわりと笑みを向けると、ナディアは少し頬を赤らめる。
「私の方が…マナリエル様のお傍にいられるだけでなく、このように言葉を交わすことができる日々がとても幸せです」
「ふふ、よかった。これからもよろしくね」
「勿論でございます」
「お姉様ーー!!!」
「うわ!」
物凄い勢いでドアが開いたかと思えば、腹部に衝撃が走る。下を見れば、私のお腹には愛しい天使が抱きついていた。
「お姉様、誕生日おめでとう!」
「アル、ありがとう!今日も大好きよ」
「僕もお姉様大好き!」
6歳となったアルは、変わらず私の天使だ。年の差のおかげでケンカをすることもなく、ただただ我が子のように愛している。微笑み合う2人を、ナディアは眩しそうに目を細めて見守っていた。
3人で朝食に向かう途中でも、すれ違う使用人達に祝いの言葉を述べられる。こんなにも大勢に祝われる誕生日は、毎年ながら少し照れる。
「お誕生日おめでとう、マナリエルちゃん」
「おめでとう、マナリエル」
「ありがとうお父様、お母様」
お父様とお母様も抱きしめてくれた。心から、私は幸せ者だと感じる。
「マナリエルちゃんも、もう15歳なのね」
「今日は特別な日だな。朝からソワソワしてしまったよ」
15歳の誕生日。ついにこの日が来たのだ。まだかまだかと楽しみにしていた日。
「やっと儀式が受けられるのね」
そう、ついに母なる庭に行けるのだ。去年ロイが儀式を受けて、無事に魔力を認められた。そして今は魔法学校に通っている羨ましい。
「早く朝食を食べて、支度しなくちゃ。ナディア、今日はきちんとした格好をしたいけど、なるべく動きやすいものがいいわ。コーディネートをお願いしてもいいかしら」
「畏まりました。では失礼させていただき、支度に取りかからせていただきます」
「ありがとう」
一礼したナディアは退室した。そして朝食を終えて自室に戻ると、すでに支度が終わっているという手際の良さ。
ナディアが選んだワンピースは、Aラインで少し生地が固めのもの。パニエなしでも裾が広がってくれるため、足さばきが楽だった。爽やかなイエローも春らしく、私好みだ。
「流石ね」
「恐れ入ります」
屋敷を出ると、ソウシが馬車付近で立っていた。
「おめでとさん。これ、ロイからな」
挨拶もそこそこに、大きな花束を渡される。ロイからって言ってたな。ソウシにこれを預けたということは、やっぱり今日も来ないんだね。
魔法学校に入学してから、ロイとは一度も会えていない……とかしんみり言ってみたけど、ロイが15歳になったのが9月で私の誕生日が4月だから、なんなら6,7ヶ月会っていないだけですが。
それでも毎週会ってた人に会わなくなるのは、寂しくないと言ったら嘘になる。
「婚約者なら、誕生日くらいちゃんと会いに来なさいよね」
花束に顔を寄せると、とても良い香りがした。
「……」
視線を感じて見上げると、ソウシが何とも言えないマヌケな顔をして見ていた。
「なによ」
「いやぁ……美女に花束って似合うなーって気持ちと、姉を美女とか思うことの気持ち悪さと、マナリエルが花束に顔寄せるの絵になるなーって気持ちと、でもこいつマナなんだよなっていう残念さと、複雑」
「しばいたろか」
「いや、いいシーンだった。マナじゃなければ」
「よし、歯ぁくいしばれ」
「おやめください、お2人とも。ロイ様がいらっしゃらないので、それ以上いかれると止められなくなります」
火がつく前にナディアが止めに入った。ストッパーのロイがいない今、ナディアが私達の世話係になっている。
「「すみません」」
とりあえず謝っておこう。だってナディア、ロイに報告書提出してるんだもん。こんなん報告されたら、次会うとき超絶面倒じゃん。
「お嬢様、支度が整いました。どうぞ馬車にお乗りください」
執事のダニエルが声をかけた。15歳未満は母なる庭には入れないため、ソウシとはここでお別れとなる。
「じゃあな、マナ。結果楽しみにしてるぞ」
「うん、すぐ戻るから待ってて……ていうか、あんたわざわざうちに来なくてもよかったんじゃない?私今からシルベニアに行くんだけど」
「あ、そうだった。まぁいいよ。せっかく来たから、アルと遊んで待ってるわ。どっちにしろ夜の誕生パーティーには参加するし」
「分かった!すぐ戻るから」
「「「行ってらっしゃいませ」」」
大勢に見送られながら、私とお父様、お母様を乗せた馬車は出発した。




