儀式1
「そういえば、マナは儀式は受けるのか?」
ふいにソウシが尋ねる。
「儀式?」
何の儀式だ?脈絡もなければ補足説明もない。首を傾げてみるけど、ソウシも同じように傾げるだけ。
何の儀式だよ。知らんよそんなイベント。ていうか、ソウシはいつもそうだ。自分が知っていることは相手も知っている前提で話すから、時々内容が理解できない。バカなのかな?教師とか向いてないね、絶対。ダメだわ、せっかくイケメンなのにアホ面に見えてきちゃう。
「え、待って、なんでそんな哀れんだ目で見てくんの?」
「もしかしてマナリエル、儀式のこと知らないんじゃない?魔法を知らなかったから」
「ああ、そっか」
ロイがすかさずフォローする。ていうか、もしかしてって何よ。ロイも知ってて当然みたいな雰囲気出しちゃって。何よ、二人して!
「いいか、マナ。とりあえずその目やめようか。あのな、シルベニアで魔法が存在するのは言ったよな。でも全員が魔力を持ってるわけじゃない。シルベニアでは15歳になると、ある儀式をするらしいんだ。その儀式を行うと、魔力がある者は開花するらしい……って、聞けよ!」
「聞いてるわよ」
ちゃんと聞いてるのに、失礼しちゃう。ちょっとお花に水あげてるだけじゃない。ホースで水やりをしながら虹を作る私の姿を見て、ソウシはため息を吐いた。
「ダメだ、すねてる」
「すねてないわよ、聞いてるってば。あれでしょ?その儀式とやらで開花すれば、魔法使いへの道が開けますよーってことでしょ?」
「まぁ、そういうことだな」
「儀式を行わないと魔法を使えないの?」
「分からん」
「は?」
思わず振り向く。ソウシは、だってお子様だもん☆とでも言いたげにウィンクしていた。この野郎。水かけてやろか。
「よく分かんないんだけど。そもそも私はその儀式を受ける権利はあるの?儀式を受けたとして、魔力があったらどうなるの?反対になかったら?学校行くの?働くの?魔法使いにならなきゃいけないの?ティスニーでは魔法が役に立たないんでしょ?精霊見つければいいの?全く分からないんですけど」
「俺も分からないんですけど」
「分からないなら、調べてから私に話せ!!」
「なんだよ!ちょっと聞いただけだろ!」
「ちょっと聞かれたら気になっちゃうじゃん!」
「それこそ知らねーよ!」
「やんのかコラ!」
「上等だ表出ろ!」
「ははぁーん、ここはもうお外ですけどー!ブワァーカ!イケメンの無駄遣いすんな!」
「お前には言われたくねーよ性格ブス!」
ポン。
「ねぇ」
ふいに、ソウシと私の肩に手が置かれた。ロイが二人の肩を掴んでいる。すごい笑顔で。目を細めて、口角上げて。
「ちょっと座ろうか」
明るめの声で。
「「……はい」」
無意識に二人で正座をする。これはあれだ、やばいやつだ。やっちまったやつだ。ソウシのせいだって訴えたいけど、それは彼にとって逆効果になることを私は知っている。もちろんソウシも。
ロイ様、完全に怒っていらっしゃる。
正座をする私とソウシの前に悠々と腰をかけるロイは、王子を超えて王様のような貫禄がある。まぁ中身は大魔王だけど。
「二人はさ、いくつになったんだっけ?」
「12歳です!」
「11歳です!」
勢いよく答えておく。
「そうだよね、もう小さな子供じゃないんだよね」
ゴクリ。
「それならさ、いい加減くだらないケンカはやめたら?」
笑顔だけど、瞳の奥の奥が全然楽しそうじゃない!ゴゴゴゴゴゴって地響きが聞こえてる気がする!ああ、普段怒らない人が怒ると何でこんなに怖いんだろう。
「「ごめんなさい」」
こうなったら、もはや謝る以外の選択肢はない。ロイはしばらく無言で見つめてきたあと、ハァと諦めたようなため息を吐いた。
「儀式のことは、僕が教えてあげる。ソウシよりは多少知識はあるから」
ロイは怒ると怖い。怖いけど、なんだかんだめちゃくちゃ甘い。そしてそのあと、ソウシよりも豊富な知識で儀式について色々教えてくれた。
まず15歳になったら、魔力が宿る神聖な場所に行くらしい。そこへ行くと魔力がある人は開花する。開花した人は必然的に魔法学校へ入学となり、もし私に魔力があれば、シルベニアの学校へ通うことになる。寮があるらしい。
魔法学校へ通わないという手段もあるけど、行かなければ魔法の知識を増やすことは難しいため、今までそういう人はほとんどいなかった。やっぱりみんな魔力があるなら魔法使えるようになりたいよね。
色々知りたいことは聞けた。さて、私はどうしよう。って、そんなの決まってるけど。せっかく新しい世界に来れたんだもん。
「私も儀式受けたい!!」
やるしかないっしょ!




