薔薇の色2
つまり、どういうことだ?ソウシの世界が乙女ゲーム仕様ってこと?となると、マナリエルがいるってことは……いや、でも……うん、やっぱり違う。
「ここはプリンセスストーリー~秘密の約束~じゃない」
「そうであってたまるか」
すかさずソウシが突っ込む。なによ、こっちは真面目に考えてるのに。
『プリンセスストーリー~秘密の約束~』は、私が転生前にやっていたゲームだ。マナリエルは、ここで使用していたキャラクターになる。課金に課金を重ねた私の最高傑作に転生できたのは、正直最高に嬉しい神様ありがとう。
でも、この世界はさっき言ってたようにソウシが創造主みたいだし、時代背景は似ていなくもないが、やっぱりプリンセスストーリーとは違う。
では、キャラクターは?私以外の人物はプリンセスストーリーにいなかっただろうか?
ロイを見つめる。彼はどうだろう?……あんなにハマっていたのに、今ではウロ覚えになっている。まぁ前世の記憶だから仕方ないけど、どれだけ思い出してもロイという王子はいなかったはず。もちろん、ソウシというキャラクターもいない。
そもそも、プリンセスストーリーは魔法なんて存在しなかったし、好感度を知るバロメーターは薔薇ではなく、ハートだった。
ということで、この世界はプリンセスストーリーとは無関係と言う結論を出すことになる。
まぁ、今ここで生きているのは間違いないんだから、どこだろうと関係ないんだけど。
「マナリエル、攻略対象というのはどういうこと?」
ふと、ロイが問いかける。そうだよね、いきなり攻略対象とか言われても分からないよね。
「あのね、ここに薔薇の花があるでしょ?」
「……あるの?」
ん?
「あるよね?」
ロイのステータスの右上に咲き誇っている薔薇を指差す。
「……見えないかな」
「俺も見えないぞ」
「まじで?」
なんということだ!もしかして、これは私にしか見えないものなの?
いや、まぁそうか。反対に本人も見えてたら気まずいよね。好意モロバレになるんだし。そうか。ということはこのシステム、あんまり人に言っちゃダメなやつ?だよね?
「ここになんかあるの?」
「イエ、ナニモアリマセン」
「「わかりやすっ!」」
ロイの問いにはお答えしない方がいいよね。うん、やめておこう。
「あー、多分ここにマナだけに見える薔薇のマークがあって、その色が───」
教えてやがりますよソウシが!!ご丁寧にどんなシステムなのかも詳しく教えてやがりますよ!なんでそんな知ってるのさ!あーはいはい、私が前世でうるさいほどに説明してましたね!モロパクりの解説ありがとうございます!
「なるほど。そういうのがあるんだね」
ふむふむと感慨深げに頷くロイ。まぁ、ここがそういうシステムなら、間違いなくロイは攻略対象だろうね。
「なんとなく理解した。ということは、僕とソウシ以外にもマナリエルが攻略できる相手が存在するということかな?」
ロイがこちらを向く。
「うーん、攻略対象が二人しかいないってのは聞いたことないかなぁ」
多分、他にもいるだろう。王子二人だけってことはないはずだ。
「ふぅん」
私の返事を聞いたロイが、あからさまに顔をしかめる。なんだなんだ、婚約者という名の虫除けがいなくなったら困るってか。知らんがな。こちとらせっかくの美貌をフル活用して、素敵な恋をエンジョイするって決めてるんだからね!
「攻略対象って他にどんな人がいるんだろ?いつ出会うのかなー?なんかワクワクしてきた!」
「その発言は気に入らないね、マナリエル」
突然ロイに腕をぐいと引っ張られて、そのまま腰と顎を支えられる状態になる。顔近い!顔!イケメン!距離を取ろうと一歩下がろうとするものの、余計に腰を抱き寄せられてしまった。
「ロ、ロイ?」
やばい冷や汗どころか脇も湿ってきそう。なに、怒ってるの?なんでだ?
「マナリエル、君は誰の婚約者かな?」
超絶至近距離のまま、ロイが問いかける。
「え、いやそれは、ただの虫除「だ、れ、の、婚約者?」ロイの婚約者です!」
待って待って、それ以上近付くとチューしちゃう!チュー!
ロイは私に言わせたことで満足したのか、ニコリと満面の笑みで離してくれた。
「忘れないでね」
キラキラした笑顔はとても美しかったけど、すんごい圧を感じました。心臓すっごいバクバクしてるけど、これは絶対甘酸っぱいやつではない。




