ステータス1
思いきり遊び終えたアルは、現在私の膝に頭を乗せてお昼寝中。すぴすぴと愛らしい寝息を聴き、丸くなった背中や柔らかい髪を撫で、ゆるりと過ごすティータイム。なんたる至福。はぁ、この時間がいつまでも続けばいいのに。私はただただ、アルの温もりと重みを幸せに感じた。
「で、あんた達いつまでいるの?」
「「最低」」
見事にハモる二人。クッションを抱えてジトっと見つめてくるけど、乙女か。最低でもなんでもないでしょうよ。うちに来てから、かれこれ3時間は経っている。その間していたことと言えば、会話だけ。女子か。暇なのか。そんなわけなかろう。
私はアルを預けて、二人と対面する。
「二人は王子でしょ?子供とはいえ、やることがないとは言わせないわよ」
そう、曲がりなりにもロイとソウシは王子。毎週のように他国に遊びに来る時間などあるのだろうか。いや、ないでしょ。ていうか──、
「そもそも、なんで毎週来んの?」
そう聞くと、二人はキョトンとした。
「なんでって、お前に会うために決まってるだろ」
何を当然のことを聞いてるんだと言いたげな顔だけど、いやいや、他国の王子が毎週会いに来るなんてどんだけよ。前世で弟ということは周囲はもちろん知らないわけで、王子が通い詰めてるなんて世間に周知されたら、この家どうなるのかしら……。まず間違いなく社交界で注目を集めるわよね。社交界デビューしてない私にはよく分からないけど。もしかして、王子を狙う女の子達からいじめられるかしら?はっ!まさか他国のスパイ疑惑が生じて拷問!?一家全員火炙り!?まさかね……いや、でもなんかこういう世界ってありそうじゃない?そうよね、ありえるよね。他国の王子と会うって、それくらいことよね。ダメだわ。
「私達、もう会わない方がよさそうね」
「は?」
「うん、その方がいい。ソウシとロイに会えなくなるのは寂しいけど、仕方がないよね。お互い逞しく生きていこう。さようなら」
遠い目をした私を、二人は呆然と見つめている。ロイは心配そうだけど、ソウシは呆れているみたい。
「まーた何か勝手に突っ走ってるぞ。こいつ昔から思い込むと激しいからな」
「マナリエル、ちょっと落ち着こうか」
今生の別れを決意した私を宥めようと、ロイは私の前に屈んで手を重ねてきた。アルは変わらずスヤスヤと眠っている。
「何を心配しているのか分からないけど、マナリエルが考えているようにはならないから安心して」
「どうせ他国のスパイ疑惑がかかっちゃうー!とか考えてんだろ」
「ナンデワカッタ」
お前の考えなんてお見通しだ、とでも言いたげに、ソウシはフフンと得意気に笑う。
「そんなこと考えてたの?それは絶対にあり得ないよ」
「この世に絶対など存在しないのだ」
「お前は魔王か」
ソウシの突っ込みにロイは苦笑する。
「いい?君の母上であるリリーさんは、シルベニア国出身だよ」
「はぁ」
それがなんだというのだ。
「そしてリリーさんのご実家は、シルベニア国随一の魔力を持ったなんだ。シルベニアでは、魔力を持つ一族は爵位と同じように上下関係が確立されている。リリーさんのご実家、つまりカルティア家は、シルベニアでは最も羨望されている一族ともいえるんだよ」
「要はカリスマ的存在ってことだな。ま、あの一族を敵に回そうなんて考える人間は、シルベニアにもティスニーにもいないだろ」
「そうなの……お母様ってすごいのね!そうなんだぁーよかったーそれなら安心よね!ふぅーん、そっかそっかぁ、カリスマかー、へぇーなるほどねー。
……で、魔法とは?」
「え?」
ロイが目をぱちくりさせているけど、ぱちくりしたいのはこっちだわ。魔法なんてワード、こっちの世界で聞いたことないぞ。
「あれ、もしかしてこの世界に魔法があるの知らね?」
そんな「俺んち犬飼ってんの知らね?」みたいな感じで言われても。こちとら放心状態だわ。
え、魔法とかできちゃうの?この世界。ステータス確認的な?
「ステータス!」
「いきなり叫んだ!」
ウィン。あ、なんか出た。
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名前/マナリエル・ユーキラス
属性/???
HP/61600
MP/???
攻撃力/9500
防御力/8650
スキル/自動課金、絶世の美女
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あ、絶世の美女ってスキルなんだ。




