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聖獣王国物語~課金令嬢はしかし傍観者でいたい~  作者: 白梅 白雪
課金令嬢はそして世界を知る
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新たな計画1

 


「あーら!ご機嫌ようシャルロッタ様!本日も美しい御髪が艷やかに靡いていますわね!」


「仲良くお喋りするのは止めたんじゃねーのかよ」


 廊下を突き抜けるような甲高い私の声に、防音室から喋ってます?というくらい小さなソウシの声が返ってくる。


 あれからソウシはそのまま学園の生徒として在籍している。年齢はまだ入学に満たないが、そもそも魔力の発現が入学条件のため、手続きも滞りなく完了したようだ。

 だが、15歳に満たないソウシの入学は前代未聞のようで、シルベニアの王子という身分もあり、どれほど優秀なのかという期待と、そういえば第二王子はまだ婚約者いないよね?なんて恋慕の視線を浴びている。おまけに一部の黒髪至上主義者からは魔王の降臨だと崇拝されているようだ。

 恐れ多いからか、近寄りがたいからか分からないが、直接声をかけられることはなく、それぞれがそれぞれの思想でひっそりとファンクラブのような組織を設立しているようだ。


「仲良く喋ってないわよ。ライバルとしてケンカ吹っかけてんの」


「私には褒め言葉にしか聞こえませんでしたが」


 私の荒い鼻息に、表情を崩すことなくシャルロッタが答える。うーん、でもなぁ、こんな完璧なシャルロッタを貶す言葉が見つからないんだよなぁ。唸りながらシャルロッタの顔を見つめるが、それでも彼女の表情筋はぴくりとも動かない。


「マナリエル様、その汚れなき素直な心は美しくありますが、社交界で生き抜くには些か心配でございます。まぁ貴方様に楯突く者などいないでしょうが」


 シャルロッタの発言に、ソウシは目を丸くする。


「シャルロッタ、シャルロッタ、勘違いしてるぞ。こいつの腹ん中真っ黒だからな」


「そうそう、さっきイカスミ食べたからね♪そういうソウシのお腹の中はどうなのかなぁ?ちょっと覗かせてくれる?」


「モウシワケアリマセンデシタ」


 さり気なくソウシの脇腹に触れると、壊れたおもちゃのようにカタカタと震え始めた。


「マナリエル様、婚約者ではない異性の体に気安く触れてはなりません」


「あ、そうだった!すみません」


「謝罪も必要ありません」


「どうしろと」


 シャルロッタは私に対する指導が厳しい割に、謝罪を許さない。注意された時って、謝る以外にどうすればいいんだ?


 ふと、ムチで打たれているドMが「叩いてくださりありがとうございます!」と泣いて喜ぶ姿が浮かんだ。そうか、お礼か。


「ありがとうございます!」


「声は張り上げませんように」


「どうしろと」


 隣では、ソウシが「引き裂かれるかと思った……」と震えながら繰り返し呟いている。キモ。


「ところでソウシさんよ」


「ナンデショウカ」


「カタコトやめろ。なんでいつも私にくっついてんのよ」


「は?」


 私の問いが理解できないのか、ハテナを返すソウシ。

 学園に来てからのソウシは、空き時間のほとんどを私と共に過ごす。昼食は毎日だロイでさえ常にではないのに。


「俺に一人で飯を食えと?」


「あんたお一人様平気でしょ」


 前世の放浪癖は王子となった今も変わらず、王城から忽然と姿を消すことは日常茶飯事だった。よくルジークが疲労困憊な様子でメルモルト公爵領まで捜索に来ていたものだ。必ずうちにいるわけではないが、放浪する中で一度は寄るため、探す手間を省くための捕獲場所となっていた。


「別にいいだろ、俺が誰といようが」


「あんたのせいで、しょーもない噂が立ってんのよ」


「噂?」


 そう。呆れるくらいにしょーもない噂だ。


「マナリエル様がロイ殿下からソウシ殿下へ乗り換えようとしている、という噂でしょうか」


「はぁ!?」


 シャルロッタの淡々とした声に、ソウシの間抜けな声が重なる。


「まじで?……うわ、気持ち悪っ」


「同じくだよ」


 ソウシがあまりにも私と過ごすせいで、ソウシが私をロイから奪おうとしてるだとか、私がロイを捨ててソウシに乗り換えようとしてるだとか、そんなくだらない噂が生徒間で広まり始めている。恐らく互いに姉と弟としてしか見ていないからこその近い距離が、さらに噂を加速させているのだろう。私達自身はそんなことあり得ない、と断言できるが、この関係性を知らない周囲が勘違いするのも無理はないと思う。


 ソウシは不快そうに眉をひそめる。


「俺とマナが、なんて死んでも勘弁だけどさ、無視すりゃいいんじゃねぇの?そんな噂なんか」


「そういうわけにはまいりません」


 口を開いたのは、シャルロッタ。


「出過ぎた発言をお許しくださいませ。しかし殿下、この噂は早めに鎮火させるべきでございます」


「なんでだ?」


 シャルロッタの説明によると、どうやら王妃候補である私を奪おうとするソウシ、イコール王座を狙うソウシという式が成立し、国内でロイ派とソウシ派の分断が始まっているらしい。それぞれの思惑は分からないが、恐らくロイが王になることで不利益を生じる者が、この噂を機にソウシを担ぎ上げようとしているのだろう。


「なんだそれ。どうせ兄さんが王になったら裏事業できなくなると思った奴等が俺の名前出してんだろ」


「あ、同じこと考えてた」


 どうやら私とソウシの考えは同じのようだ。シャルロッタは仮にも王子であるソウシに対して不敬な発言はできないのだろう、否定も肯定もせずにこちらを見ている。

 ソウシなら操れそうだと思っているのだろう。そうとしか考えられないほど、ロイの即位は絶対なのだ。あの人以上に王に相応しい人間はいないだろう。アレは王として生まれ、王として死ぬべき人だ。あ、アレって言っちゃった。 


「俺を王に、っていう奴等は全員処分すればいい。そう考えると、炙り出しにちょうどいいな」


 俺は絶対に王にはならない。そう断言するソウシは、それから不機嫌そうに口を閉じた。

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