死神さま
死神さまがすっとおいでになられて、静かにこうおっしゃった。
「貴方はあと数分の後に死ぬでしょう。その時はこの私めにお任せください。この鎌で魂を引き抜いてあげますから」
そう言って死神さまは両手で持っている鎌を私に見させてくださった。
「どうにも、ならないのですか」
「ええ、人の寿命というものは決まっています。どうにも、なりません」
死神さまは、このような質問を何度もされたことがあるようにおっしゃられた。私は、「そうですか」と言った。人の寿命というものは死神さまがお決めになるのだろうか。それか他の神様か。いずれにせよ私たちは、私たちによって生まれ生き死ぬのではなく、私たちではない誰かによって、生まれ生かされ殺されるのだろう。死神さまの前ではなんともお恥ずかしい限りで。
「どうですか、決心はつきましたか。……貴方は貴方の人生を確かに全うなされたのです。ゆっくりとお休みになってくださいね」
「ええ。もう大丈夫です。決心、つきました。どうぞよろしくお願い申し上げます」
死神さまは、にっこりと微笑みなさって、「承知しました」とおっしゃった。