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胸のふるえが止まらない  作者: 山下陽
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傷ついてください。


君はけなげ


「  傷ついてください。  」

ある日、私の靴箱の中にはそんなメモが入っていた。

「何これ、こわ」

「美織なんかしたの?これ絶対やばいやつだって。捨てちゃいなよ」

「マジこれ入れたやつ最悪」

一緒に登校してきた友人が憤慨を表してくれるなか、私はそのメモを指先でつまんだまま離せずにいた。「傷ついてください」とか気持ち悪い。でも指を離したらメモの念がどこかへ飛んでいっちゃうような気がして、私はメモを捨てることができない。

傷ついてください、ってなに?

私は誰かを傷つけた覚えなどない。だから逆恨みをされるようなことも決してない。

どうして、誰が?

払いやとめがしっかりつけられたお手本のような字を見て、私は戸惑いが隠せずにいる。

傷ついてください、なんて、いったい誰が思うのだろうか。



「杉原、なんか靴箱やばいもん入ってたんだって?俺にも見せろよ」

「別に見せるようなものじゃないよ」

私は朝から面倒なやつにあったという顔をして席についた。牧瀬知則。

「なんで?予防線張っといたら楽じゃない?」

「予防線?」

「みんなに言いふらしとけば、そいつはもう杉原に手ぇ出せないじゃん」

クラスの阿呆の牧瀬が、自慢げな顔でこちらを見下ろしてくる。阿呆のくせに。でもさっきの言い分にはすんなり納得した。

「なるほどね」

「な?だから、なっ、なっ、見せてくれよ杉原~」

「あんた単に話題がほしいだけでしょう」

牧瀬は、ばれたという顔をして席に戻っていった。ばかみたい。こんな紙切れ、話題に五分ものぼらないっつうの。

私は、「傷ついてください。」の紙を、そっと握りしめる。無理やり丸められた紙が、かすかな「くしゃ」という音を立てる。

握りつぶしてそのままくずかごに捨てようとして、ふと思い直した。丸めかけていた紙を開き直す。やっぱり、

「  傷ついてください。  」

教科書をトレースしたみたいに綺麗な字________きっと、ひとみさんだ。

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