64億年分の初めまして
64億年前。僕は生まれた。
広い広い宇宙の中。
今では"太陽系"と呼ばれるこの場所で。
最初はすごく熱かったんだ。
水素と窒素しかなかったんだ。
そのうち僕は大気と呼ばれる
空気の層を作って
熱を冷やし始めた。
そうすると白い洋服、雲が出来た。
その雲は水玉の模様で
僕に雨という水をもたらした。
そのうち白い服から青い服へと変わった。
その青い服の中でなんと
新しい命が生まれたんだ。
まだ小さくて小さくて弱々しい命。
しかし確かに生命だった。
『初めまして』
少しするとその小さな命は
様々な形、大きさに変わっていった。
それらは生と死を繰り返しながらも数を増やしていった。
『初めまして』
同じ頃、僕の青い服に茶色の斑模様が出来た。
そこはまだ熱を持っていたが次第に収まり
少しずつだが、緑色を増やしていった。
『初めまして』
その緑を求めて、青い部分にいた生命が陸へと登った。
彼らには"手足"という
生きるために必要な道具を手に入れた。
そして数を増やしていった。
『初めまして』
たくさんの生命が僕の服を覆った。
なのに僕の体は気まぐれだった。
風を引いて寒くなったり、石をぶつけられて傷ついたり。
そんなこんなで僕は彼らに死を与えていた。
『ごめんね』
でもそんな僕の服に残り続けてくれる子がいた。
どんな時でもひっそり生きていた子。
こんな気まぐれな僕にずっと付き合ってくれてる子。
その子はやがて陸上で数を増やしていった。
『ありがとう』
彼らの名前は"ホニュウルイ"というらしい。
僕は彼らを見守ることにした。
彼らは今までにない程に様々な形、大きさへと変わった。
『初めまして』
その中で明らかに他とは違う変わり方をしたものがいた。
彼らは火を使い、道具を作り、言語を持っていた。
1人1人が似ているようで違う。
そして集団で生活している。
僕は今までに集団で暮らしている生命をたくさん見たが
こうやってお互いを助け合って暮らしている
お互いを思いあっている生命を見たことがなかった。
彼らは文明というものを作り
文字というものを作り
技術というものを発展させていた。
それは彼らに幸せをもたらしたが
戦争というものももたらした。
生命間の争いは不思議なことではない。
でも明らかにそれは他とは違った。
そしてその戦争というものは
僕をも蝕んだ。
青と緑の服はボロボロになり、僕は熱を出した。
『僕、このまま死んじゃうのかな』
そう思った時聞こえたんだ。
確かに聞こえた。
声が。
「初めまして。体は大丈夫ですか?」
戦争というものを乗り越えた彼らだった。
僕は今までたくさんの
『初めまして』を、言ってきた。
だが返事を貰ったのは初めてだった。
「洋服直しますね。もっと素敵な服を作りましょう」
「薬を持ってきます。熱を下げましょうね」
僕は嬉しかった。
僕は彼らを"人類"と呼ぶことにした。
そして彼らと生きる。もちろん他の生命たちとも。
僕はここで生きている。
この広い広い宇宙の中で。
たくさんのたくさんの。
僕の友達たちと生きている。
今までも、これからも。
46億年分の初めましてを君たちに送りたい。
『初めまして、地球。』
地球を主人公とした、地球の物語。