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その話はさておき、今年も王族直属の魔術師の来る季節だ。
この村には宿などという洒落たものは存在しない。
だから今年も村長の家に泊まって予定通り結界を見てまわり族長と色々話した後帰るんだろう。
気になるのは魔術師がお供も付けずに毎年毎年一人で来る事だが魔術師というのはその血筋でしかなれず、しかも相当強いという話だからだろうか。
「リューイ!こんなとこで何してたの?その寝方、腰痛めるよ??」
ふっと顔をあげると幼馴染のハルトが黄金色の瞳をくりくりさせながら覗き込むように俺に話しかけてきた。
何をするでもなく木にもたれ掛ってぐでーっとなってる俺を見て気になって走ってきたんだろう。
雪のように白い肌がほんのり上気して赤みが差している。
「何って考え事。今年もあの魔術師が来る頃だなぁと。あいついっつも来ると一人で村人の誰とも全く喋らず帰るだろ?村長とどんな話してんだろうと思ってさ。」
思ってる事をそのまま口にするとハルトは人差し指を口元に持っていってほのかに嚙みながら小首をかしげた。
「あぁ、あの魔術師くん?ボクもおじいちゃんにいつも聞くんだけど教えてくれないんだよね。それにしてももうそんな時期なんだね!そんなことよりさ、リューイお昼ご飯食べた??」
ハルトは外見女っぽいし仕草もそこらへんの女より可愛らしいがこんなナリでも一応村長の嫡男に当たる。
茜色のサラサラした髪に黄金色のきらきらした瞳。
真っ白な手足に紅を落としたようなぷるぷるの唇。
こいつが女だったらさぞかしモテモテだったろうに非常に勿体無い話である。
さっきの天竜族の話をするならば啓示を受ける立場にある筈の彼だが、そういった話を俺がすると話をそらしたり苦しそうな顔をされてしまって何も教えてくれることはない。
とりあえず男に見ほれるなんて趣味は無い為、
「食べてない。」
とだけぽそっと答えた。
「ボクね、スコーン焼いたんだ!一緒に食べようよ!紅茶もあるよ!」
ハルトが口元をニマニマと緩ませながら手に持っているバスケットをこれ見よがしに俺の目の前に差し出してきた。
幼馴染のハルトは料理が上手い。
ぶっちゃけ家事にかけてはそこいらの女より上手い。
ハルトの作った料理を想像しただけで俺のお腹はみっともなく鳴り出した。
ごくり、と思わずつばを飲み込んでしまう。
「リューイ、スコーン好きでしょ?」
くそっ、ほんとこいつが女だったら迷わず嫁にしたいわマジで。
「おう、俺はただ飯なら何でも好きだ!」
そういいながらスコーンを寄こせといわんばかりにハルトに手を突き出した。
ハルトは下にバスケットを置くとひとつだけスコーンを取り出して俺に渡して色々と準備をし始めた。
今は昼下がりか。
太陽が真上に昇っている。
そよそよとそよ風が吹いて気持ちがいい。
ここは村外れにある広場みたいになっている場所で少し隔離されてる感じの場所の為滅多に人が来ない。
俺はここに居る事が多かった。