借金少女の旅立ち
「へ、へへ、リナちゃん、い、いつもの、あれを……」
「はい、二千エルになります。あのさぁ、そのあやしい喋り方もうやめてよ、捕まれたら大変じゃない。」
「あ、ありがとう……」
何かのタネを詰めている小包を受け取った、長い前髪が特徴の女性が口元を歪みながら路地裏へ消えていく。わたしはそれを見送ったあと、調和作業に戻った。
すると、レジの隣に座っている少女が呆れるような顔をして、わたしに話しかけた。
「ね、リナ、ツッコミたいことは山ほどあるけど、まずこの店の商品のことを……」
「やだなぁ、ココナちゃん、全部合法に決まってるじゃない?」
「や、そうじゃなくて……」
笑顔で誤魔化せることじゃないが、今は、まぁ、調和に集中しよう。
わたし、カタリナ・ラインはある田舎貴族の一人娘だったが、今はこのスラムで薬売りをやっている。
つまり、貴族崩れだ。前月から借金取りたちに付き纏われている、このスラムに追い込まれた、僅かな知識を命綱に、廃屋をアトリエに改造した。
自分でも驚くほどうまくいた、ここではいけない系の薬があっちこっち転んでいるが、まともな薬屋が少ないそうだ。おかげで、店潰しやよそ者狩りもあんまり来なくて、それなりの暮らしができる。
昨日、“なんだか学校が懐かしくなったから忍び込もうかなぁ”と思って、友たちの様子を覗いてみた。そして、誰も私のことを話していない上、席もいなくなったことにショックを受け、放課後の校舎でふらふらしている。
ココナちゃんに見つかれた時、わたしは自分の事情すら忘れ、彼女に泣き付けた。
「リナちゃん、指名手配されたこと、本当?」
「……え?」
こんなことになるのはまったく思いつかなっかだ、まぁ、借りた金を返さなかったから理解できないでもないが。
でも、それだけで指名手配されるのはちょっと大げさじゃないが?
刺激を受けすぎたわたしには一人の時間が必要と判断したココナちゃんが“すぐ会いに行くから”と言い残した後帰りましたが、今日の朝、店のボロボロの扉を開ける頃、彼女はもうそこにいる。
なにこれ怖い!
蜂蜜色の髪と明るい瞳を持つココナちゃんはちっちゃくて可愛い、いつも甘くて、ふんわりな雰囲気を醸し出せている、でも本当はすっごく頼もしい人である、社交性が高い、頭もいい、行動力が恐ろしいほど強い、そして、友達を作りたいでも敵しか作れないわたしに話しかける数少ない者の一人だ。
ここが彼女にバレでも別になにが問題があるでもないが、再びその行動力の強さを思い知った、でもどうやって?尾行でもしたのココナちゃん?
「ね、リナ、もしかしてやばい仕事に手を出した?」
「いや、その、そんな薬は売ってないよ!」
原料は売っているけど。
「道を踏み外したの?……」
「お願いだから、もう何も聞かないで……」
正直自分もわからなくなってきた、両親が自分を置いて逃げちゃいましたことも、これからのことも。借金の額は働けば返られる程度じゃないから、元の生活には戻らないだろうね。
多分、借金取りもいつかここに来る、そしてまた逃げなくちゃいけないことになる。この街は汚いが、静かて、和やかで、なんだが心地よい。
……長くいれば、離れたくなくなりそう。
「……ね、リナ、うちに来ない?」
お人好しのココナちゃんがそんなことを言い出した。
「うちは利子くらい肩代われる、そうすれば指名手配も解けるはず……」
「だめだよ、そんなことしたら、わたしはもっと生き辛くなるわ。」
どうやらココナちゃんは、自分を犠牲する傾向があるらしい、あんまり良いことじゃないと思う。
「ココナちゃん、わたしは当分問題ないから、心配しすぎないで。ほら、金もあるし、食べ物もある、仕事もあるよ?衛兵たちもここに来ないから、何とかなるよ!」
「リナ……」
これからのことは考えない方がいい、ストレスを溜まる方を避ければ、まだまだいけると思う。
だから。
「わたし、これから採集へいくから、ココナちゃんは早く家に帰って。暗くなったら危ないから。」
「……うん。」
暗い顔をして、黙り込んだココナちゃん。
鞄にいくつの小瓶、薬、財布、仕事用の手袋と長靴を詰める、ちょっと無理だが、家から連れ出したダガーも入れた。
「……ココナちゃん、また今度ね。」
「何が困ったことに遭ったら、必ず会いに来るね!」
「うん、わかった、じゃ。」
“また今度”なんて嘘、言うじゃなっかた、後味が悪すぎ。
溜め息をしながら、わたしは黒いマントを羽織る、西――城の反対側へ出発しました。
さあ、旅に出よう――
これまでの生活は実に捨て難いが、一が月の躊躇うはもう十分だ。
「どこへ向かえばいいの?……まぁ、特に当てもないから、」
大陸の果てでも行ってみようが?