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 3 対魔獣隊 始動

 「おはよう、巧人♪」

 「やあ、おはよう、巧人♪」

 長屋の僕の部屋にアナスタシアさんとカイザスさんが『僕の作った朝食』を一緒に食べに現れた。


 「巧人の作ってくれるご飯はすっごくおいしいから、食事の時間が楽しみだよ♪」

 「まったく、いろいろなことに加えて、家事全般も得意とは、きっといい『お婿さん』になれるよ♪」

 いや、カイザスさん、あなたに言われると『変な意味』が付加されそうで、すごく怖いのですが…。 

 ちなみに、家事全般を双子の妹さんに任せていた(正確にはダメすぎて『家事名人の妹さん』に任せざるを得なかった)アナスタシアさんや、『洋食なら作れる』カイザスさんの三人の中では自然に僕が作らざるを得なかったのだ。


 ここで、カイザスさんが持っていた『タブレット』の便利情報を僕が駆使して、江戸時代(風)の台所をカイザスさんとともに試行錯誤しながら何とか料理ができるように持っていったのだ。

 もちろん、ネットはできないが、カイザスさんの魔力で電力補充ができるので、機械音痴のカイザスさんやアナスタシアさんに代わり、『モンスターバスター用の業務タブレット』を僕がいろいろ操作している。  

 ……その筋のプロ(本人たち談)が素人にこんなものを扱わせていいのかと疑問に思ったけど、『非常事態だからやむを得ない』『使えないよりまし』ということで、恐縮する僕を拝み倒すように二人が言うので僕が扱うことになった。


 どうして、長屋住まいになったかというと、話は召喚された日にさかのぼる。



~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~



 『長い戦国の時代を制し、徳川家元公が大江戸に幕府を開いてはや百五十年が過ぎ、花の大江戸を中心に第九代将軍徳川家々のもと、『日ノ本の国』は太平の時代をを謳歌していた。


 だが、謎の秘密結社『伴天連(ばてれん)』の様々な西洋魔術によって作られた(あるいは自身が行使する)怪人たちの暗躍により、日ノ本の国は滅亡の危機にさらされた。 


 九代将軍家々公は御庭番集や精鋭部隊を伴天連撲滅のために使わしたが、圧倒的な強さを誇る怪人たちに苦戦を強いられていた。

さらにあろうことか、伴天連(ばてれん)は将軍家の姫・桜姫(一五歳、胸キュンにかわいく、大江戸上のアイドルなのさ♪)を魔王(悪魔の王)召喚の生贄に使おうとしていたのだ!


 前回の襲撃時は御庭番集の活躍により、辛くも撃退したものの、御庭番集や旗本衆に負傷者が続出し、長らくは持たないと首脳部は危機感を募らせた。


 結果、『禁断の勇者召喚術』を使い、『天才美少年・水守巧人 17歳』、『天才剣士・アナスタチア・パザロヴァ 一九歳』、そして『美貌の魔術闘士・カイザス・ド・メロービング 二八歳』の三人の勇者を召喚し、怪人四天王の一人、召喚術師男を何とか撃退した。


 召喚された勇者三名で『対魔獣隊』が組織され、対魔獣隊の若者三人は日夜伴天連の侵略に立ち向かうのであった!! 』



 カイザスさん、ご説明ありがとうございます。要所要所変な感想が入りますが、おおむね適切な説明になっていると思います。


 三人は情報収集のためと、城内ではいろいろ窮屈すぎるため(さらにカイザスさんが『暴走』して騒ぎを起こさないため)、三人で長屋を借りて住むことになったのです。


 カイザスさん、アナスタシアさんは元の世界では『怪奇事件を解決するプロ・モンスターバスター』として活躍しており、その中でも特に優秀な『モンスターバスター一〇星』と呼ばれていたそうです。

 なお、詳細は『任務上の機密』になるそうで、『対魔獣隊』の任務に必要な分だけ教えてくれるということになりました。




 そんな感じで召喚の日から四日後の今朝、三人で朝食を食べていると、アナスタシアさん、次いでカイザスさんの目に緊張が走りました。

 二人はしばし、天井を凝視していましたが、まもなく、緊張を解きました。

「お玉、もう少し上手に気配を消した方がいいぞ。」

アナスタシアさんの声に天井から抗議の声が聞こえてきました。


 「気配断ちは御庭番集随一と言われた私の気配をどうして、そんな上手に察知できるんですか?!信じられません!!」

天井板を外して童顔のお玉さんが顔を下に覗かせてきた。



名前:お玉 一六歳 人間 女

一五一センチ 四四キロ 七八 五六 七九

レベル:15

御庭番集(くノ一)

スキル:剣技 体術 忍術 手裏剣術 隠密行動 情報収集 会話術 

 魔法(忍術):火遁の術 分身の術(幻影術の一種)  

装備: 忍者装束 忍者刀 手裏剣 まきびし 火遁用爆薬 煙玉

称号 御庭番集くノ一  



 お玉さんは小柄で童顔でくそまじめなくノ一だ。ドジ属性もあるようなので、高校にいたらどじっこ委員長としてクラスのアイドルになったかもしれない。


 「はっはっは!お玉ちゃん、仕方ないよ。我々は少々『鍛え方が違う』から、少々の達人では我々の目から逃れようがないさ。…ところで、連絡事項があるから来られたのだろう?何の御用だね?」

 「…ええ。ここ二~三日『暴れ牛による負傷事件』が多発しているようなの。被害者たちの証言がはっきりしないことも含めて調べてもらいたいのです。」

 「了解。食事が終わったら俺らで手分けして情報収集しよう!」




 蛇足ながらお玉さんのレベル15というのはこの年では破格に有能なようだ。

 確かにレベル30の召喚獣『しゃちにゃん』に旗本衆の精鋭が苦戦していたことからもわかるように、鑑定してみたところ、幕府の精鋭の旗本衆がレベル10~30くらいになるらしい。


 

 この世界にレベルシステムがあるのではなく、鑑定能力でわかりやすく理解するための勇者のスキルらしい。だから、ゲームと違い、戦闘終了後にレベルアップとかは必ずしもするものでもないようだ。

 ただ、いろいろな体験をしたのち、一晩寝ると、『睡眠中に脳が経験を整理』することで結果的に成長するようだ。召喚された翌日自分を鑑定してみたらレベルアップしていた。


ちなみにこんな感じになった。


水守 巧人 17歳 人間 男

具現士

レベル:4

スキル:異世界言語 異世界文字 

魔法: 情報 武器具現化 防具具現化 回復 

装備

称号 異世界召喚勇者

特記事項:レベル5になると、情報(鑑定)の能力が上がります。スキルや魔法などの詳細を調べることができるようになります。



 特記事項の『鑑定の能力が上がります。』を見つけた時はものすごく興奮しちゃいました。

 ついつい二人にそのことを話すと…。

「巧人、すっげーーー!次のレベルアップが楽しみだね♪敵の能力がもっとわかりやすくなるわけだ!…ところで、俺らを見る場合に『詳細』を見る時は…断りをいれてね。」

 二人とも喜んでくれたものの、確かに味方を見る時は気を付けてあげる必要があると気づかされた。

例えば、カイザスさんを鑑定した時、


名前:カイザス・ド・メロービング 28歳 人間 男

魔法闘士

 レベル:426

 スキル:拳法 日本語 英語 気を込める ギター 口説く(男女問わず) 

 魔法:現在調整中

称号 異世界勇者 魔神戦士 モンスターバスター一〇星



 スキル『口説く(男女を問わず)』を見た時は正直『ドン引き』しちゃいました。後でアナスタシアさんから『興味の80%が恋愛がらみ』で、男女を問わずに(特に美少年)口説きたがること、『ウルトラ天然さん』でよく暴走することを除けば、正義感も強く、善良なので嫌わないでやってくれと言われて、何とか落ち着けました。


 なお、カイザスさんによるアナスタシアさん評は『見たまんまの中身も男前の美女』だそうです。

おっとっと、話が大きく脱線しました。



~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~


 現在僕とカイザスさんは浅草を中心に「暴れ牛情報」の聞き込みを行っている。

アナスタシアさんは別行動で下町でやくざたちに聞き込みを行っている。


 二日前にやくざ同士のけんかにアナスタシアさんが巻き込まれ、『関係者全員』をアナスタシアさんが素手でほぼ無傷でノックダウンしたのがきっかけで、彼女は大江戸中のやくざたちから敬意を払われるようになった。

 情報通で通常は幕府が情報を得にくいやくざたちからの聞き込みはおそらくかなりの成果を上げるだろう。


 本来は能力の相性がいい僕とアナスタシアさんが組む方がいいのだが、『やくざの組廻り』が怖かったのと、カイザスさんを一人で動かして『暴走』されるのが懸念されたので、この組み合わせになった。



 案の定、カイザスさんは美男・美女を中心に長話をし、口説きだしそうになったので、僕が要所要所で制止することになった。カイザスさんは誰にでも好印象で会話を始めるは上手なのに、こういうところは困ったことだ。

おかげで、コミュ症に近いくらいの会話下手の僕にも少しは度胸が付いてきた。


 そんな風に聞き込みを続ける中、ご近所でよく顔を合わせる『金さん』とばったり遭遇した。

 「おお、巧人とカイザスじゃないか!昼間から、何やってんだい?」

 「はっはっは!少し、世情調査を行っているのですよ。かく言う金さんこそ、こんな昼間から何をされているのですか?実は大切なお仕事ですか?」

カイザスさんがそつなく、対応してくれる。

 「いやいや、あっしはただの遊び人の金さんだからね。ちょっとぶらぶらしているだけさ。」


 金さんは僕たちに手を振ると、笑って去っていった。


 「感じのいいお兄さんだね。せめてもう十歳若ければ…。」

 この人何を言ってるんですか?!……しかし、『遊び人の金さん』とはね。

何気なく、去りゆく金さんの背中を見ていると、データが頭に浮かんできた。


名前:遠山 景元(金四郎)三六歳 人間 男

レベル:35

北町奉行

スキル:剣技 隠密行動 情報収集 会話術 もろ肌脱ぎ

装備: 脇差 桜吹雪の入れ墨

称号 遊び人の金さん 『大江戸を斬る』人


 この突っこみどころ満載のデータ何??!!

称号が「遊び人の金さん」で北町奉行て何??!!

 スキルの『もろ肌脱ぎ』とか、装備の『桜吹雪の入れ墨』てなんなの??!!

 この『鑑定能力』大丈夫なの??!!


鑑定:( ̄▽ ̄)b


……鑑定が絵文字で『大丈夫』とか返事してきたよ…。



 僕が脳内でツッコミを入れていると、金さんが去って行った方角から轟音と共に何人もの人の叫び声が聞こえてきた。

 「「「わーーーー!!!暴れ牛だ!!!」」」


 なにかがすさまじい勢いでこちらに向かって突進してきており、そいつは一人の男を宙に撥ね飛ばしていた。

 あ、あれは金さん!!!

 金さんははるかかなたに飛ばされて星になっていった。


 さらに、金さんを跳ね飛ばしたモノは我々に向って突進してきた。

三メートルを超える巨体、頭に生えた異様に長い角、筋骨隆々の肉体に牛の頭。

 そいつの突進をカイザスさんは僕を抱えて、辛うじて躱した。


 「ふっ!俺の突進を避けるとは大したものだ!貴様らただものではないな?!」

 神話上の怪物にして、RPGにもよく出てくるそいつは僕たちをみて吠えた。


 「俺は伴天連(ばてれん) 怪人四天王の一人、ミノタウロス男だ!!我らの野望を邪魔するものは全てこの肉体で粉砕してくれる!!」


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