4 金閣と銀閣
その後は僕のレベルアップにつれて馬の性能が上がり、現在は一人に付き一頭の馬が具現化できるようになった。
ナースチャの後ろに乗れなくなったのは少し残念だが、自分の馬はかなりコントロールできるようになったので、一日8時間くらいは全員『疲れを知らない馬』に乗ったまま旅が続けられるようになった。(残念ながら僕が足を引っ張っている状態だ。)
僕だけが乗りつかれてヘロヘロの状態で村に着くと、この村もなんだか様子がおかしい。住民に聞くとやはり妖怪に悩まされているらしい。
「近くの平頂山という山の蓮華洞には『金閣と銀閣』という妖怪が住んでいて、旅人を脅して、交易を妨げている」のだと言う。
早速三蔵法師御一行として『金閣・銀閣退治』に我々は動き出した。
カイザスさんのタブレットを駆使して以下の情報を得た。
『金角・銀角は、西遊記に登場する兄弟魔王。
本相は太上老君の 金炉と銀炉の番をしている童子達で、老君の5つの宝具を持ち出して下界に降りて妖怪となっていた。5つの宝具とは、琥珀浄瓶、七星剣 (しちせいけん)、芭蕉扇、幌金縄、呼びかけた相手が返事をすると中に吸い込んで溶かしてしまう瓢箪の紅葫蘆のことである。琥珀浄瓶は紅葫蘆と同様に返事をした相手を吸い込むことができた。』(Wikipediaより)
よし、有名な『名前を呼ばれると吸い込まれるひょうたん』以外にもいくつかの魔法の武器があるようだ。それに気を付ければかなり有利に戦えるのではないだろうか。
情報というのは大切だと改めて思う。
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僕たちが蓮華洞に近づいていくと、三人連れの妖怪?が洞窟から出てきた。
金閣、銀閣と部下なのだろうか。
彼らが近づいてくるに従って、顔がはっきりしてきた…ええーー!!
あの人達は!!
「驚きましたね!まさかこのような場所で再会するとは!
そう、私は『遊び人の金閣』です!」
「私は『遊び人の銀閣』です!」
「そして、私は『遊び人の銅閣』です!!」
「「「我ら、遊び人三兄弟!!!」」」
名前:『金閣』こと遠山 景元(金四郎)三六歳 人間 男
レベル:335(※本来は35だが、神具の『宝貝』で強化中)
悪玉妖怪? (本来は北町奉行)
スキル:剣技 隠密行動 情報収集 会話術 もろ肌脱ぎ
装備: いろいろな『宝貝』 桜吹雪の入れ墨
称号 遊び人の金閣(金さん) 大物妖怪(『大江戸を斬る』人)!
善良度:☆☆☆☆☆ (※何か事情あり?)
(※ 『宝貝』は中国の仙人たちが創り出した非常に強力な魔法の武器や道具で、戦略兵器級のものまである。 )
名前:『銀閣』こと遠山 孝元(銀四郎)三六歳 人間 男
レベル:335(※本来は35だが、神具の『宝貝』で強化中)
悪玉妖怪? (本来は北町奉行代理)
(以下ほぼ同文)
いやいや、なんで金さんたちが妖怪役をやっているの?!!
「金さん、銀さん、銅さん!!一体なにがあったというの?」
桜姫が叫んでいる。
確かに僕たちも納得がいかない。
「申し訳ありません。たとえ将軍の娘さんと言えどここを通すわけにはいかない事情があるのです!!
銅さんがきっぱり言い切る。
「くっ!一体どんな事情が?!」
銅さんの言葉に反応してついつい銅さんを鑑定する。
そう言えば銅さんの鑑定がまだだった。
名前:『銅閣』こと遠山 国元(銅四郎)三六歳 人間 男
レベル:335(※本来は35だが、神具の『宝貝』で強化中)
悪玉妖怪? (本来は北町奉行代理)
スキル:剣技 隠密行動 情報収集 会話術 もろ肌脱ぎ
装備: いろいろな『宝貝』 桜吹雪の入れ墨
称号 遊び人の銅閣(金さん) 大物妖怪(『大江戸を斬る』人Part3) 切れ者で『まむしの銅さん』と評されている。
善良度:☆☆☆☆☆ (何か事情あり?)
特記事項 現在『恋愛中』 対象:カイザス 愛の深さ:LV5
「はいーーーー??!!事情って『カイザスさんに恋愛中』のことですか???!!!」
僕の叫びにナースチャと桜姫が凍りつく。
「ふ、隠しておくつもりだったのだが…。」
銅さんがため息をつく。
「「安心しろ!!俺たちは全力で応援するぞ!!ブラザー―!!!」」
金さんも銀さんも応援しなくていいですから!!!!
「待ってくれ!!私には巧人と家々将軍が!!!」
カイザスさん!僕もよろしくないけど、やっぱり将軍様ですか?!!
名前:カイザス・ド・メロービング 28歳 人間 男 魔法闘士 体育教師
特記事項 現在『恋愛中』 対象:巧人 愛の深さ:LV12
現在『恋愛中』 対象:家々 愛の深さ:LV10
僕に対する『愛の深さ』もかなり嫌なんですが、将軍に対する愛の深さも…えらいことです…。というか、家々将軍ご自身はどうなの?!
もう出逢わないから大丈夫だよね?!
これ『どうやって収拾付けるの??!!』と僕がパニクっていると、彼方から凄まじい土煙が巻き上がり、こちらに近づいてくるのが見えた。
そして轟音と共に何人もの人の叫び声が聞こえてきた。
「「「わーーーー!!!暴れ牛だ!!!」」」
いやいや、この辺無人の荒野だったよね?!!
すさまじい勢いでこちらに向かってきたそいつの突進を僕たちは何とか躱したが、躱しこそなった金さんたちは宙に撥ね飛ばされていった。
金さん!銀さん!銅さん!!!
金さん達ははるか彼方に飛ばされて星になっていった。
「宝貝で大きくパワーアップした俺の突進を避けるとは大したものだ!さすがに俺のライバルだけのことはある!!!」
身長が3メートル超える、中華風の鎧を着こんだ頭が牛の怪物は僕たちに向かって叫んだ。
「俺は牛魔大王!!いざ尋常に勝負!!」
名前: 牛魔大王(元ミノタウロス男)
大妖怪(元伴天連怪人)
レベル:500(元250だが、宝貝で大きくパワーアップ)
スキル: 格闘術 肉体強化 走るとまわりの人が『暴れ牛だ―!』と叫ぶ(なんと、周りに人がいない場合は『強制的に何人か召喚』して、叫ばせることが判明)
称号 大妖怪(元怪人四天王)
特徴: レベル750の魔獣並みの格闘戦能力を持つ。
特記事項 こちらも事情あり?
「…牛魔大王と金閣・銀閣は仲間ではなかったの?」
桜姫が金さんたちを気遣って言う。
「はっ??!!!」
牛魔大王が脂汗をだらだらとかいている。
「こ、これは『事故』だ!!!!」
……えーと、戦いが終わったら金さんたちを回復してあげよう…。
「…それはともかく、アナスタシア…じゃなかった、孫悟空勝負だ!!」
「おもしろい!!金さんたちの仇討だ!伸びろ、如意棒!!!」
牛魔大王が長い角をさらに伸ばし、ナースチャが気を込めて、如意棒を2メートルくらいの長さに伸ばした。
ナースチャが使っている如意棒は観音さまから預かった代用品で、本物よりはかなり性能は劣るらしいが、重さ的にちょうどよく、さらにナースチャの『具現化補助』の能力で大きくパワーアップさせるため、下手すると本物の如意棒以上の破壊力を持つらしい。
さすが、ナースチャ!!
しばらく牛魔大王の突進をナースチャが躱しつつ、そのあとナースチャが如意棒の連撃を叩き込み、牛魔王がそれを何とか躱すという攻防が続いた。
以前は全て『一刀両断』だったのが、牛魔大王になって、何とか動きに付いて来れるようになったようだ。
「へえ、身体能力は大きく上がったようだね。でも…その能力を生かす技能はまだまだのようだ!!」
ナースチャはいったん構え直すと、如意棒に『闘気』を注ぎ込んだ。
「行け!如意棒!!百連撃!!!」
5メートル近く伸びた如意棒を恐ろしい速さで連撃させると、牛魔大王は受けきれずにめった突きにされた。
牛魔大王はふらふらとよろけた後、後ろにぶっ倒れた。
「さて、こいつも何らかの事情を知ってそうだな。起こして聞いてみようか?」
ナースチャが牛魔大王に近づくと、天から牛魔大王に光が注がれたかと思うと、その姿がかき消えた。
「……これは一体…。」
ナースチャは呆然とたたずんだ。
「大変です!さっき遠くに『空から金色の光が三つ降りてきた』のを確認したのですが、そのあたりにいたはずの金さんたちの反応も見られません!」
「じゃあ、金さんたちもミノタウロス男同様に『光にあたって消えていった』と考えるのが妥当だろうね。」
桜姫が水晶球を見て叫ぶとナースチャもうなずいた。
「そうか、金さんたちも牛魔大王も『星になった』のだね…。」
「「「それ、絶対違いますから!!!」」」
カイザスさんは置いておいて、僕たちは深まる謎に頭を痛めていた。




