3 ヘタレその2
猪八戒を改心?させ、僕たちの旅は再開した。
とはいえ、天竺までの徒歩の旅はものすごく大変だ。
史実の三蔵法師は何年もかけて天竺に行ったのだから、想像を絶するものだったに違いない。
僕たちはそんな何年もかけていられないので、魔法か何かで高速移動したいところだ。
いろいろ考えていると、桜姫が僕が『馬を具現化』できないか聞いてきた。
確かに『バルカン砲』を具現化しそうになったこともあり、具体的なイメージが出来ればできそうな気がした。
「いっそのこと『戦車』を具現化するのはどうだろうか?」
「カイザスさん、僕はミリタリーオタクではないので、無理だと思います。」
「では、ポルシェとかは?」
「僕が運転免許でも取っていればできたかもしれませんが、車が走れる道がありませんよ。」
「運転免許は私とカイザスが持っているから、可能になったら『ジープを具現化』するのはありかもしれないね。ちなみに、ジープの情報はカイザスのタブレットに入っているんじゃないかな?」
「ナースチャ!さすが!じゃあ、馬とジープの両方にチャレンジしてみるね。」
挑戦の結果、馬は何とか二頭まで具現化できたけど、ジープは精神力が足りないらしく、具現化に失敗した。
とりあえず、体重の関係で、『僕とナースチャ』、『桜姫とカイザスさん』のペアで馬に乗ることにした。僕が具現化した馬なので、誰が手綱を引いても大人しく従ってはくれるのだが、運動神経と技量の都合でナースチャとカイザスさんが手綱を引いている。
「そっちのペア、なんだかずるいです。」
「巧人、どさくさに紛れて、胸にしがみつくつもりだな?!」
「やりませんてば!!……ナースチャ、赤くならなくても大丈夫だから!」
普通の馬と違って、疲れないので、かなりの距離を稼ぐことができたようだ。
そして大河のほとりに出た。
ここからは舟で川を渡る必要がありそうなのだが…。
「すまん、ここ数日、妖怪が出るというんで、この舟は出せないんだ…。」
渡し場に行くと、暗い顔をした船頭のおじさんに断られた。
「待ってください!我々は妖怪退治の専門家です。よかったらお話を聞かせていただけますか?」
桜姫が自信たっぷりに言い切ると、船頭さんが真剣な顔で食いついて来てくれた。
船頭さんの話によると、舟を漕いでいると『河童の妖怪』が現れて、『食べ物を要求』してくるのだそうだ。
何度か、食べ物を渡した後、乗る人達が怖がり、妖怪のうわさが広まって、人が乗らなくなったのだという。
『食べ物を要求』はともかく、河童の妖怪と言えば…。
『原作のように人食い妖怪』でなくてよかったというべきだろうか…。
舟を借りて、カイザスさんが霧深い河を竿で舟を漕いでいる。
桜姫が水晶球で妖気を探りながら、指示する方向に進んでいる。
ナースチャは観音様が最初に用意してあった、『なんちゃって如意棒』を構えて、オーラ視を使って索敵している。
『なんちゃって如意棒』は本物よりもかなり性能は劣るものの、ナースチャが気を込めると、本物並の破壊力があるんじゃないかという観音様の話だった。
「『沙悟浄』と思われる相手が近寄ってきました!!みんな注意してください!!」
「!!それらしいオーラが近づいてくるぞ!!少し弱っているかもしれないが…。」
桜姫、ナースチャが反応し、『それ』は僕たちの前に姿を現した!!
「……河童が河を『流されている』ように見えるんだが…。」
ナースチャが半ば呆然としてつぶやく。
背中を上にして女性の河童がプカプカ浮きながら、流れのままに流されているような…。
「……一応生命反応はあるから…まだ生きていると思う…。」
すくいあげて、回復魔法をかけると、沙悟浄は言った。
「…お腹すいた……。」
「「「「……。」」」」
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船頭さんに『妖怪を退治』したことを告げると、大喜びで仲間に伝えると言っていた。
これで航路は間もなく再開されるだろう。
そして、僕たちは対岸に渡った後、沙悟浄に『ご飯を食べさせ』つつ、事情聴取をしていた。
名前:沙悟浄 ○○歳 妖怪(本来は天界人) 女
レベル:145
格闘家
スキル:槍術(LV45)短剣術(LV40)魔術(LV38)他
魔法:氷雪の術(LV35)水術 (LV32)
装備:半月刃の宝杖
称号 元天界の将軍 元三蔵法師一行
善良度:☆☆☆☆ (悪人ではないが、生活力がなく、ヘタレ。やや戦闘狂)
特記事項 半人半河童の妖怪。頭の皿を隠せば、やや釣り目の美人(20代後半)に見える。 現在『逃亡中』
「ナースチャの姉御!ありがとうございます!!
危うく飢え死にするところでした!!このご恩は一生忘れません!!
姉御は孫悟空の兄貴以上にお強い上に、すごくお優しいのですね!!」
沙悟浄さんは一生懸命ご飯をぱくつきながらナースチャに頭を下げている。
「…ということは、一行が解散された後は、『ご飯強盗』以外には悪事を働かれてはいないということですね。」
事情を聞いて桜姫がため息をついている。
「いえいえ、強盗ではなく、『お願い』しただけです。みんな『気前よく』食料をくれたので、『誠意が通じた』のだと思っていました。」
真面目な顔で沙悟浄さんが力説している。…本人は本気で『お願い』していたようです。ただ、河童の妖怪が河から顔を出して『お願い』したのでは、『結果的に脅迫』みたいに感じるでしょうね…。
「ちなみに以前は『人食い妖怪だった』そうですが、それは完全に改心されたのですね。」
「いえいえ、人間を食べたことはありませんよ。せいぜい強盗位です。あ、『美少年』なら時々『食べた』ことはありますが♪」
それは『食べるの意味が違う』よね??!!!
「ふ、なにを隠そう私も『美少年が大好物』なのだよ♪」
「なに、本当ですか?!同士発見!!」
カイザスさんと二人でガッツポーズを組んでいるんですが??!!!
「……なあ、巧人。二人とも『川の底に沈めたまま』置いていっていいと思う?」
ナースチャ、目が笑ってないよ??!!
「そうそう、沙悟浄。実はナースチャも『巧人を毒牙にかけた』んだ。つまり、ナースチャも『美少年同好の仲間』なのさ♪」
「そうなんだ!!ナースチャの姉御も『同士』だったんだ♪♪」
「やめろ――!!仲間扱いするな――――!!!!!」
……沙悟浄さんはヘタレというより、カイザスさんの『変人仲間』だね……。
「…あのう、三蔵法師さんは美青年だったという噂ですが、まさか、そういう目では見ておられなかったですよね?」
桜姫が恐る恐る聞いている。
「ああ、桜姫様。それはないです。だって、あちらの三蔵法師様も女性ですから。桜姫様より少し上くらいでしょうか。」
「「「なんだって(ですって)ーー!!」」」
「孫悟空の兄貴は案外ヘタレで、調子のいい時と悪い時の差が激しかったので、『敵前逃亡』もまだわからなくはないんですが、三蔵法師様はすごく真面目で責任感の強い方でしたからね。あんな行動を取られたことが今でも信じられない気がするんですよ。」
沙悟浄さんの言葉に僕、ナースチャ、桜姫の三人は顔を見合わせた。
これは、『単なる敵前逃亡事件ではない』可能性が高くなってきた気がする。
そして、僕たちは『ナースチャを害する奴はいつでも首を取ります!!』と力説する沙悟浄さんには観音様の下で猪八戒と一緒に待機してもらうことにした。
『馬の都合で』と言いつつ、実際は『カイザスさんと二人で暴走』されたらえらいことになるからだ。
こうして、天竺への旅は『お経獲得』だけでなく、『謎解き』の様相も呈してきたのだった。




