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Gold Dragon and SEN-NIN ~金龍と仙人~  作者: 月影
第一章 転生編
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第六話 そして世界のシチュエーション

 一騒動あったものの、俺は自分の状況を把握し、ひとまず落ち着くことができた。

 やがて、師匠がぽつんと漏らした。


「さて、実際問題これからどうしたものか」


 その言葉を聞いた俺は、咄嗟に『それはこっちが聞きたいです』と言いかけたが、師匠の心情を思い遣って言葉を飲んだ。

 今の状況は師匠にとっても予想外だったようであるし、俺と同じく当惑しているのだろう。ここは冷たく当たるより、寧ろ同情すべきだと自らを諭した。


「神様が俺をこの世界に呼んだとして、俺は一体ここで何をすればいいんでしょうね?」

「さてなぁ~。儂はただ、お前の面倒を見るように仰せ付かっただけだ。それ以上の事は何も分からん」

――まったく。いい加減過ぎないか?神様。

「師匠の意見を聞かせてくださいよ」

「そうだな。とりあえずは、魔力の蓄積と操作の術を学ぶことを最優先とすべきだろう」

「なるほど。俺は魔力に関しては何も知らないし、魔力が溜まらないと師匠は離れられないみたいですからね」

「然り。竜也は、特に何かやってみたい事はないのか?」

「うーん……。せっかく異世界に来たんだから、人が大勢居る所に行ってみたいかな」

「人間の街か。そうだな……。まあ、ここは竜也の様な人間が住める場所ではないからな。何をするにしても、何処かに移動しなければ始まらぬか……」


 今の状態では、俺の行く所に師匠在り。逆もまた然りである。それなのに、師匠が人間の街へ行くことに気乗りがしない様子なのはちょっと気掛かりだな。

 いずれにしても、人里で暮らすのなら、多少なりともこの世界の常識を知っておくべきだろう。


「ねえ師匠。この世界って、どんな種族がいるんですか?龍とか、人間以外に」

「うむ、この世界の三大勢力となっているのが、人族、獣人族、魔族だ。なかでも、人族は最も繁栄していると言ってよかろう。あとは、妖精族と竜族だが、妖精族にはドワーフ、ノーム、エルフなどが含まれておる」

「なるほど」

――リアルのエルフ少女とか、ネコ耳娘とか、ワクワクするな。

「それら種族の上に立っているのが精霊と龍。そして、全ての生き物の頂点に立つのが、精霊王と儂、金龍というわけだ。まあ、魔王も同じ事をほざいておるがな」

「龍は竜族と違うんですか?」

「バカを言うでない。儂らは龍。この世界を統べる特別な存在よ。竜族というのは、龍に似た特徴を持った人型の生物に過ぎぬ」

「俺を襲ってきたリザードマンとは違うんですよね?」

「あやつらは下等な魔族だ。一緒にしては竜族に怒られるぞ」

――リザードマンはトカゲの進化形、竜族は恐竜の進化形なのかもしれないな。

「他の生き物は、師匠の後に創造されたんですか?」

「いや、儂が造られた時には、世界は既に今と大差ない状況だったな。大国と呼べるものは存在しなかったが」

「へー。神が後から管理者を作ったってことかな」

「神のご意向は計り知れぬ」

「あっちの世界では、人間は猿から進化して文明を築きましたけど、他の動物は言葉を話したりするほどは進化してませんよね。この世界は、どうしてそれほど多様な知的生物に進化できたんでしょうか?」

「儂が神から聞いた話によると、人間が猿から進化したように、他の動物もそれぞれ人型に進化して獣人族になったようだな。そして、特に魔力が強い地域で生きていた動物達が、その影響を受けて妖精族や魔族に進化したらしい」

「なるほど。全ての種族は進化の過程で枝分かれしただけということですか」

「そうらしいな。しかし、この事は絶対に秘密だぞ。人族と魔族のルーツが同じだなどという話、人間達に受け容れられるはずがないからな。公言したら、即異端者扱いされて死刑だ」

「心します」

――大体想像がつくよな。元の世界だって、ガリレオみたいな例があったんだから。


 地球と似たような環境の星では、進化の過程も同様になるという事か。ただ、この星では霊長類と呼ぶべき存在が猿や人だけではないという事だな。


「龍と精霊は、神が創造したってことでいいんですか?」

「神に造られたのは、それらの一部のみだ。まず、儂と精霊王が造られ、後から四属性の龍と精霊が造られた」

「四属性って?」

「自然界を構成している火、風、水、土の4つの属性のことだ」

「RPGの世界と同じですね」

「うむ。だが忘れるでないぞ。この世界は現実だ」


 次に、地理的な事を質問してみた。


「今の世界の様子を教えてください。大陸とか、国とか」

「良かろう。この世界――神はアルガルドと言っておった――には、3つの大きな大陸がある。最も大きいのは人族が支配するグランディア大陸、次は魔族が支配するメゾリア大陸、最も小さいのが獣人族、妖精族、竜族がおるラスティア大陸だ」

「へー、アルガルドですか。そして、ここは大陸ごとに種族が別れているんですね」

「長年の戦争で、自然と分かれてしまったのだ」

「やっぱり、別の種族とは仲良く暮らせませんか」

「人族と魔族は犬猿の仲だな。その他は中立あるいは我関せずといったところだ」

「俺が魔族のリザードマンに襲われたってことは、最初、メゾリア大陸のどっかに送られて来たんですか?」

「そうだ。お陰で、駆け付けるまでに多少の時間が掛かってしまった」

――そんな危ない場所に送って来るなんて、ほんと神様いい加減過ぎるだろ。

「なるほど。それじゃあ、概略でいいから大陸の位置関係なんかを教えてください」

「うむ。では世界地図を出そう」


 師匠はすぐ前の空間からヒョイと巻いた状態の地図を取り出した。


「さっきもスマホ出してましたけど、それも魔法ですか?」

「儂ら神から造られし者はな、魔法で異空間を作って必要な物を保管しておけるのだ」


 そう言って、師匠は実際に収納してある物を取り出して見せてくれた。生き物以外なら、何でも入るらしい。

 その上更に、異空間では時間が止まっていて、入れた物は劣化しないのだと言う。3000年前のスマホの電源が入ったのは、ここに入れながらチマチマ使ってきたかららしい。

 さすがファンタジー、これでもかってくらいに何でもアリである。


「これもあるしな」


 師匠が取り出したのは、ソーラー式の充電器である。

 こんな物まで持っていたのか……ってことは、スマホ持ってたのはついうっかりじゃなく、確信犯だったってことだ。師匠ー。


「便利だなー。これって、呼び名とかあります?」

「特には無いぞ」

「そっか。異次元ポケット……いや、もっと大きな……異次元コンテナとでも呼びましょうか」

「異次元コンテナ……なるほど。それでいこう」


 師匠だけが使うなら呼び名なんて要らないだろうけど、俺の分も入れてもらうつもりなので、呼び名は必要だろう。


「龍や精霊以外でも、異次元コンテナみたいな物は持ってます?」

「似た様な空間魔法はあるが、大分サイズが小さくなるな。しかも劣化は避けられん。これは儂らだけの特権だ」

「特権かー。神様、贔屓し過ぎじゃないです?」

「儂に言うな」


 確かにそうだな。


「これって、少なくとも200年前の地図ですよね?」

「それは、神から賜った魔法の地図だ。常に、最新の世界情勢が分かるようになっている」

「これもか!」

「そうでなくては、世界の監視などできまい」

「役目柄ってことですか。いろいろと特典多過ぎません?俺なんか、特典らしいもの、何も無さそうなのに……」

「煩い奴だ。龍の文句は神に言え!」

「どっかで聞いた台詞ですね、それ」


 俺は、出してもらった地図を広げた。そこに記されている大陸名や国名なども、日本語として読むことができる。これで、文字も脳内変換されることが判明した。


「ふむふむ。グランディア大陸とメゾリア大陸の間にラスティア大陸があるのか。人族と魔族間の緩衝地帯って感じかな。

 あ、この島って確かラスティア大陸の南にあるんだったよな。これか。思っていたより大きいな。グランディア大陸には結構いろいろな国があるじゃないか。ええと、一番大きいのは……西の海に面したプロスペリア帝国か。他には……中央のパレント王国とか、東のマルート公国なんかが大きいな」

「この島はかなり南にあるので年中暖かいぞ。それから、人族の国に関しては儂は良く知らん。何しろ、この200年は寝ておったし、そもそも興味がないしな」

「まあしょうがないですか。メゾリア大陸とラスティア大陸には国が無いのかな?」

「メゾリア大陸全土を魔王が支配しておる。ラスティア大陸の連中は、国を興そうなどとは考えんのだろう」

「メゾリア大陸全体が一つの国家みたいなものなのか。やっぱり、魔王って強いんだろうなー」

「魔族の中で最強の者が魔王となる。強くて当然だ。だがまあ、儂から見れば、人族も魔族も大差ないがな」

「人間同士もやっぱり戦争しているんですよね?」

「何時の世も戦争の火種は尽きぬよ」


 世界が違っても、やる事は同じ様か。進化の果てには、戦争の無い世界が訪れるのだろうか。それとも……。


「師匠はあらゆる種族の頂点に立っているんでしょ?だったら、200年も寝てないで、戦争を止めるとかするべきなんじゃないですか?」

「これはなかなか言いよる。だがな、儂はこの世界の在り様を見守るのが務め。人間同士、人族と魔族との争いなどの些事に関わるつもりはない」


 師匠の言葉に、『ただ面倒臭いだけでしょ!』と突っ込みかけたところで、俺は考えた。


――待てよ、金龍が世界平和のために奔走しなければならない立場なら、同化している俺も当然巻き込まれるわけだ。そうなると命が幾つあっても足りなくなる可能性が大だな。それに、師匠はともかく、俺が出しゃばっても誰も聞く耳なんぞ持たないだろうし……。


 俺はあれこれ思い巡らせた末「これはこれでいいか」と、師匠のことを言えない無責任な結論に帰着したのである。


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