第1章 真実と姉 -5-
落ち着いた喫茶店。
あまり広くもなく東城たちの他に客もいない中のテーブル席で、東城たち四人は顔を突き合わせていた。
と言っても六人がけのテーブルに東城の両脇に柊と七瀬が、正面に西條が座るという形なので、主に膝を突き合わせているのは東城と西條だけだが。
「――ふぅ。生き返るわぁ。やっぱり九月でもまだまだ暑いわねぇ。地下都市っていう割に気温も地上と同じみたいに設定してあるみたいだし」
キンキンに冷えたオレンジジュースを一気に飲み干して、西條は天国にでも来たかのように緩んだ顔をしている。
「で、ジュースを飲みに来たわけじゃないんだろ」
「えぇ、もちろん。――ところでここは大輝くんのおごりでいいかしら? ならあとアイスともう一杯ジュースを……」
「あんた、本当に殴るぞ……っ」
二重の怒りで東城は拳をわなわなと震わせていた。
「そうね。じゃあとりあえず本題に入りましょうか」
そんな東城の様子を見て、西條は一度息を吐いてから真面目な空気を作った。
「まずはどの話題がいいかしら。わたしが能力者だっていう話。わたしもイクセプションだっていう話。大輝くんの姉がいて、それが私だという話。好きな話題を選んでくれていいわよ。どの説明も結局他の話題に通じているし」
西條はテーブルに両肘をついて指を組んだ。
「……俺の姉、っていう話だな。正直、それが冗談以外の何にも聞こえねぇんだよ」
東城は少し思案しながらも、そう切り出した。
正直なところ、実はそれほど東城はこの発言を疑ってもいなかった。そんな冗談を言う必要性を感じないというのと同時に、どことなく東城は気付いていたのだ。
壇上に立った彼女を見たときに感じた、既に何度も見ていたかのような感覚。あれは鏡で見る自分の顔とどことなく似ていると、理解するよりも先に直感したからだろう。
そう自分では納得しながらも、東城はそれを問いただそうとしていた。
他の話――特にイクセプションについては聞きたいことがある。
自分の他のイクセプション。つまり、イクセプションとは能力名でありながらそうではないということになる。
そのことが何を指すのか。それはつまり東城大輝という存在の真にも迫ることになる。
(それに、ヒナとの戦いのときにレーザーを弾いたことも気になるんだが……)
気になるからこそ容易には聞けない。心の準備、というヤツの都合だ。
能力者にとって能力とは自分のパーソナリティでありアイデンティティだ。それを気安く聞くのは、おそらく能力者なら誰しもが不可能だろう。
「そう。じゃあそれから話すわね。――ところでその言い方だと、まるでわたしみたいな綺麗なお姉ちゃんは要らない、って聞こえるんだけど?」
「いや実際のところ要らね――」
そう言いかけたところで、脛のあたりにガン、と鈍い音と共に痛みが走った。
鈍痛に東城は身悶えるが、蹴った本人である西條はしれっと素知らぬ顔だった。
「要らないのかしら?」
最後通告のような脅しに東城は素直に屈した。
「もちろん要りま――」
そんな風に素直に言いかけて、東城は両側の視線に気づく。肯定した瞬間に射殺されかねないほどの殺気だった。
「……黙秘だ、黙秘」
どっちにしても地獄しか待っていなかった東城は素直にホールドアップして諦める。
「まぁその判断が正解かしらね。でも、わたしが大輝くんの姉だっていうのは冗談でもなく事実だから、素直に喜んだほうがお得だとは思うけどね」
くすくすと笑っている西條に、七瀬が眉根を寄せた。どうやら、一番西條を訝しんでいるのは彼女のようだった。
「あら。事実なのですか? 研究所で生まれたわたくし達にとって姉弟と言うのは非常に珍しい間柄だと思うのですが」
「でも全くいないわけじゃないでしょう? 今は亡くなってしまったけれど、確か双光ノ覇王の宝仙陽輝くんには陽菜ちゃんっていう妹がいたんじゃないかしら」
さりげなく双光ノ覇王の名前が出た時点で、もう彼女が能力者と関わりがないという疑いを駆けることは出来なくなった。東城だけは昨日襲った犯人と同一人物である確証があったから別だが、二人にとってはこの情報は重要だろう。
暗黒期と呼ばれる、かつて研究所に囚われていた能力者たちが能力者どうして潰し合っていた時代を終焉に導くことと引き換えに、彼は命を落としている。
彼のことを知る為には、その時代に能力者と戦っていなければいけない。
「――どうやら、少しは信用出来る情報をお持ちの様ですわね」
だから七瀬も疑うことはやめたらしい。――代わりに、その気配が痛いほどに警戒心が剥き出しにされてしまったが。
「と言ってもまだわたしが適当なことを言ったり、嘘をついたりしていると思われるのも嫌だから、こうして書類も用意しておいたんだけど」
そう言って西條はカバンの中から書類の束が収まったクリアファイルを取り出した。
表紙には、「鑑定書」と書かれていて、小さい字でその鑑定を行った者や機関の名前が記されていた。
東城と西條が強大であると言うことを示すDNA鑑定書だろう。
「確認させてもらってもいいんですよね?」
柊の言葉に西條が首肯したのを確認してから、東城がそれを持って三人で寄って確認する。
もちろん東城にはその読み方も信頼性も分からないが、両脇の二人はそれぞれ分かったように頷いていた。
「本物の鑑定書の様ですわね。――ただ、やはり姉弟の鑑定を二人のみのDNAで行うのは些か信頼性に欠けますが」
「まぁ私たちの境遇で親のDNAを探す方が無茶だからそれは仕方ないにしても。――これが本当に大輝のDNAだっていう証拠はないですよね?」
睨むような視線で、二人が西條を見据えていた。それで臆したり僅かな挙動に先程までとの差異があったりすれば怪しいのだが、西條の方はいたって平然としていた。
「みんな疑り深いわねぇ。まぁそれぐらいでないとこの地下都市の運営が不安になるけどね」
「当たり前だろ。――てか、いったいいつの間に俺のDNAを採ってたんだ」
東城にはこういったDNA鑑定に協力した覚えは欠片もない。記憶がなくなる前という可能性もあるが、この鑑定書の日付は立った三日前の出来たてだ。何年も前に採取したDNAで、一般人が民間企業に正確な鑑定を依頼できるとは思えない。
「……夜の戸締りはもっと厳重にした方がいいわよ?」
「不法侵入!? 寝てる間に俺に何してんだ!」
まさかの返答に西條は「大丈夫よ、ちょっと口の中に面棒入れただけだから」などという全く安心できないフレーズを返してきた。
「あとお腹出して寝てると風邪引くわよ? ちゃんとお布団かけておいてあげたけど」
「急に姉っぽいセリフ言ってごまかしてんじゃねぇよ!」
怒りを込めたツッコミも西條は素知らぬ顔で受け流していた。
「あぁ、もういいよ……。それで、そのお姉ちゃんが研究所をとっくに抜け出して普通に高校に通っているのはどうしてなんだ」
「えぇ……? その話長いから面倒なんだけどなぁ……」
「おい」
東城もそろそろツッコミではなくただのいら立ちを込めた声で脅していた。
「まぁ可愛い可愛い弟くんの質問だし、なんだかんだと聞かれたら答えてあげるが世の情けってものよね」
「だからなんであんたはちょいちょい古いんだ……」
たまに白川が懐かしのアニメ大会とか言って無理やり東城と四ノ宮を家に連れ込んでDVDの上映会をやっているから東城は知っているものの、柊も七瀬も元ネタが分からずにぽかんとしている。
「とにかく。わたしの今の立場を説明するには、やっぱりこの能力とかの説明から順を追うべきなのよね。この氷雪操作能力の」
そういって西條は掌を上に向け、そこに小さな吹雪の渦をつくって見せた。
「これが氷雪操作能力ですか……。わたくしは初めて拝見致しましたわ」
「そうね。私も名前は聞いたことあるけど……」
二人ともまじまじとその能力を眺めていた。二十二種もある超能力の中には珍しい能力種、というものもあるらしい。
「それはそうよ。だってこの氷雪操作能力は、わたしだけの能力だからね」
「……だけ? そう言えばさっき確か、ただ一人しか存在しない、とか言ってたな」
「そう。氷雪操作能力者はたった一人だけ作られて、以降の生産計画は破棄された」
西條の口調は、いつの間にか真面目なものになっていた。ピリッと、一瞬だが冬の冷気のように空気が張り詰めたような気がした。
「その理由は後で説明するわ。本題――つまりわたしの能力がどういうものか、っていう話に戻りましょうか」
西條はそう言って、そこで一旦ウェイトレスを呼んで自分はもちろん三人共に新しく飲み物を注文させた。話は長くなる、ということだろう。
やがて届いたジュースの氷をストローでカランと鳴らしながら、西條は続きを始めた。
「そもそも超能力っていうのはシミュレーション仮説に基づいて情報の世界の側から物体の総量や状態、物性、時空間の座標、ベクトルを操作する力なの。逆に能力者が上手く認識できない他の事象、たとえばスカラーなんかは操作できないわ。――でも、全てを覆す軍事兵器である超能力としては、どうしても他に操らなければいけない事象があった」
「――気候、ですわね?」
七瀬がそう言うと、西條は軽い拍手を持って答えた。
「正解よ。戦場において気候は大事な一ファクター。今でも寒帯での戦争なんかは気候一つが生死にも関わること。それを掌握するということは戦争の概念を一変させる、まさに超能力の思想に適っているっていうことね」
「でも、それじゃ話が合わないだろ。気候っていうのは単一の現象じゃないはずだし、温度に関して言ってもそれはもうスカラーだ。ベクトルじゃない」
「そう。気候を単一の現象として扱う為に氷雪に限ったのがこの能力なんだけど、それでも気候としての“氷雪”を掌握するのは、大輝くんの指摘通り超能力の原理原則に反してしまう。――それを無理やりに再現したからこそ、この能力は特殊なの」
そう言っている西條は先程からずっと氷をカラカラと回していた。
「わたしの能力は、液体操作能力――正確には形状にかかわらずH2Oという意味での『水』を操る能力に温度操作を外付けすることで、類似的かつ局所的に気候、特に氷雪を操作しているの」
「……温度の操作? そんな能力があるのか?」
東城はちらりと横の柊を見たが、彼女は首を横に振っていた。
「さっきも言ったように温度だけの操作はやっぱり不可能だからね。でも“水の温度”っていう定義なら状態の域に留まらせることが出来る。実際に、液体操作能力者も零度以上から百度未満までなら操れているでしょう? まぁ多くの場合は室温からぬるま湯程度だろうけれど」
西條の言葉に七瀬はこくりと頷いていた。実際に彼女は、形状以外の液体の全てを操れると言っているのだから、それが冷水であろうと温水であろうと変わりなく生成できるのだろう。
「そこを更に拡張すれば、氷雪も操れるというわけね。つまり、既存の能力にたった一点操作性を付与したっていうことよ。――何か、思い出さない?」
言われるまでもなく、東城も気付いていた。
「俺の燼滅ノ王か」
東城の燼滅ノ王は、厳密な分類上は発火能力ではない。通常の発火能力が操るのは炎と爆発だけだが、燼滅ノ王はそれに加えてプラズマを掌握している。
この世のあらゆる物質を溶かし、蒸発させ、電離させて使役することさえ可能。それが東城の燼滅ノ王だ。
「そう。大輝くんの燼滅ノ王は発火能力者に更にプラズマの操作を付与させたもの。元々炎の外炎はプラズマだったしその拡張に関してなら問題はないわ。二重能力は脳の容量を圧迫するけれど、こうした限定的な能力の拡張なら二重能力のような副作用はないからね」
――それはつまり。
通常の超能力の一つ先を行く、進化した能力であるということだ。他の能力とは確かに同一でありながら決定的に異なっている。
だからこそ、異例の名を冠するのか。
「一つの能力を拡張した能力――それを研究所はイクセプションと呼称したの。わたしの能力もアルカナではない方の能力名は掃滅ノ姫よ」
そこまでは確かに東城でも理解は出来た。
だが、まだ何の疑問も解消されてはいない。
「研究所も少なくない労力を割いて気候操作を作ったんだろ? 何でそれで、あんた意外に氷雪操作能力者がいないんだ?」
「簡単な話よ。レベルSの大輝くんが炎を伴わない水蒸気爆発程度なら打ち消せるように、わたしも水を伴わずに温度をある程度は操れる。まぁ流石に元が氷雪操作能力だから零度以上の操作は問題外だし、今でも水抜きなら自分の周囲の気温以外は操れないんだけどね」
そう言われて、東城は西條のコップの中の氷がちっとも溶けていないことに気付いた。外気温との差で生じる結露が起こった様子さえない。ウェイトレスが持ってきた状態から全く変っていないのだ。
「……それが出来るってことは、つまり研究所自体をいつでも壊せる状況にいたってことか」
他の能力者はもちろんそれが不可能であった。
能力の測定やカリキュラムによる向上などはおそらく研究員は絶対に安全な場所で行われていたはずだし、それ以外では能力者は特殊なガスなどで演算を阻害されて能力の使用を禁じられていた。
だが、西條の氷原ノ教皇は違う。
彼が能力の測定などを行おうとした瞬間、彼女を伝ってあらゆる空気は極寒の刃と化す。
どれだけ気密性を維持しようと中の酸素は有限なのだから、研究所員に逃げ場はない。やがて出口を突破されれば、空気を媒介に機材も凍結、破壊されかねない。
「そういうことよ。だからそれを恐れた研究所はわたしを早々に追い出し、以降の氷雪操作能力者の生産はやめた。ただし研究の存在が明るみに出ないように、わたしに絶対に安全な生活を保障した上で」
もちろん、殺すという選択肢はあり得ない。
レベルSの能力者だ。たった一人で既存の軍の一個中隊など容易く殲滅できるほどの能力者を相手に殺害などを計画すれば、返り討ちに遭うに決まっている。
「以上がわたしの経緯よ。だからこうしてわたしは自由に生きていたし、これでもアルカナの座にいたから暗黒期に喧嘩ふっかけられることも少なくはなかったっていうわけで、そっちの事情も結構詳しいの」
それは僅かに矛盾があった。
昨日、お面を付けて東城と接触したとき彼女は確かに「全部を知っている」と言った。それに「黒羽根大輔に託された」とも。
結構詳しい、などという程度ではないはずだ。
だが彼女はこの場でそれを言わなかった。
無用の混乱を招くからか、それとも東城にしか言えないから、などという理由だろう。単純に昨日は適当なことを言っていただけとも考えられるが。
どちらにせよ、この場では追求しない方がいいだろう。
「――ところでどうして貴女が大輝様の姉であるのですが?」
そんな中で、七瀬が疑問を口にした。
確かにそこについてはまだ触れられていなかったことを東城は思い出した。
そのことを東城がないがしろに出来るというのは、むしろ東城自身は彼女と姉弟であることに何の違和感もないということだろう。
本能的に、彼女と自分は同質であると気付いているのだ。
「うーん。大輝くんがわたしの弟、っていう表現の方が正しいような気もするけど。――えっとね。研究所は生まれたばかりの能力者を測定して、その資質や能力をシミュレートしてたのよ。それでわたしの能力の恐怖を知ったものの、でも手中に収められる可能性もまだ当時はあったわけだから、殺さずに対抗策を講じておくことにしたのよね」
西條はそろそろ説明も終わったのかジュースを飲みながら答えていた。先程までの緊張感もいつの間にか解けている。
「つまりわたしの対極の存在である発火能力者のイクセプションを作ろうとしたのよ。それも遺伝的な資質を全く同一にする為に同じ親の精子と卵子を使用して、ね」
だから、東城と西條は兄弟だというわけらしい。苗字が違うのは大方、姉弟愛で手を組まれたら元も子もないから隠蔽していた、といった理由からだろう。
「なるほど。よく分かった」
そう東城は言った。
「で、一つ訊きたい。イクセプションっていうのは、能力を拡張させ続けていくものなのか? まるで進化していくみたいに……」
東城の疑問は、つまり自分がヒナの攻撃を弾けた理由が知りたいということだ。
あの日、宝仙陽菜の裏人格であるヒナの思想を壊す為の最後の戦いで、彼は不可避のレーザーを喰らったはずだった。だがしかし発火能力者でしかない彼は、それでも確かにそのレーザーに素手で触れ、あまつさえ弾いたのだ。
それがイクセプションのせいだと言うなら、まだ納得も出来る。
だが、対して西條の反応は予想外だった。
「それはないわよ。方式としては確かにその可能性はあるらしいけれど、脳の容量を無駄に圧迫して死なないように、頭の中にストッパーが組み込まれているからね」
「……そうか。分かった」
――ならば、東城のあの力の根源はどこにあるのだろうか。
その答えは分からずじまいだった。
とは言えそんな動揺を悟られて柊に心配されるわけにもいかない東城は、一旦ではあるがその疑問を断ち切った。
「あんたの事情は分かったし、俺の出生や能力についても知れて正直ありがたかった」
「どういたしまして」
「けど何で今さら俺に接触してきたんだ? その意図は?」
「あん。この世にたった一人の肉親がいるから声をかけるのに、何か理由がいるのかしら?」
妙に声が色っぽかったのは追及しないことにする。
「本当のところは?」
「ぶっちゃけ、大輝くんがうちの学校に通ってるって知ったのって、先週に地上で派手に戦ってるのを見たからなのよ。それまでには夏休み前に何度かクラッキングの雰囲気は感じてたけど、駆けつける前に終わってたし」
言われてみれば確かに東城が主に戦っていたのはずっと地下都市内で、先週の所長との戦いだけは全て地上だった。
クラッキングの中にずっといた東城はその違和感を直に抱いたことしかないが、離れていても何かしらの違和感は感じ取れるような規模の変化ではあるだろう。
「そういうわけで、今日からわたしが大輝くんのお姉ちゃんになるんだけど、いいかしら?」
「だが断る」
当然のような即答だった。
「ヒドイわ……。よよよ……」
ハンカチで目元を拭う仕草をする西條だったが、どう見ても嘘泣きなので東城は同情する気にもならない。
「それと副会長になれっていう件も断る」
「うぅ……。大輝くんは冷たいのね……。おねーちゃん悲しいわ……」
「何とでも言えよ。昨日襲いかかられた時点で俺はあんたを信頼してないんだ」
たとえ姉であろうと、事情も話さずいきなり押しかかってくる相手にニコニコ笑顔で接するなど東城には出来ない。そもそも、ああして襲いかかられた理由がまるで分からない。
「あれはほら。出会いは劇的な方がいいかと思って……」
何か意図でもあるかと思えば、ろくでもない理由だった。
「まぁともかく。そういう能力の裏事情もあるんだなって分かったところで今日はお開き。また縁があったら会おうってことで。じゃーな」
そそくさと東城は立ち上がった。それに合わせるように、両脇の柊と七瀬も席を立った。
「――このままにするわけがないじゃない。ふふふ」
そんな嫌な笑い声を背に東城はひらひらと手を振って、
「ジュース美味かったよ。奢ってくれてありがとな」
意地の悪い少年のような笑みで西條のその不敵な笑いに返し、店の扉を閉めた。
扉の向こうから、西條が「しまったぁ……!」と悔やむ声が聞こえたが、東城は何も気にはしない。




