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フレイムレンジ・イクセプション  作者: 九条智樹
第3部 グレア・ガスト

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第4章 再び -6-


「わたくしの、勝ちですわね」


 一切の傷を負うことなく、水のランスを握って七瀬は立っている。

 目の前には、意識を失った下野がいた。

 青葉をほとんど無傷で圧倒できる能力者を、七瀬は完全な無傷で叩きのめしたのだ。


「……すげぇ」


 思わず、青葉は感嘆の声を上げていた。

 超えたいと願っていた東城の前に、こうして青葉は七瀬の力を見せつけられた。

 だからこそ、もっと東城を遠く感じてしまう。


「えぇ。これでももっともレベルSに近いと自負していますので。――ですから、大輝様はもっと遠いのですわ」


 青葉がそれに気付いているのを知りながら、七瀬はそう言った。自慢ではなく、何かもどかしさのようなものを込めて。


「近づくしか、無いのです」


 七瀬は呟いていた。青葉に語りかけるような口調ではなかった。それはまるで自分に向けているようだった。


「たとえたった一歩であろうと。彼が進むその道を彼に追いつくまでずっと、ですわ」


 七瀬は水のランスを消して、儚く壊れてしまいそうな笑みを湛えていた。


「ですからまずは、大輝様の下へ馳せ参じると致しましょうか」



「知っているんですね、彼の居場所」



 そこに。

 誰かの、聞き覚えのある声がした。


「教えてください」


 振り向いて、七瀬も青葉も言葉を失った。

 目の前にいる少年を、この二人が見間違えるはずがない。

 青葉にとって、彼は誰よりも信頼していた仲間で、裏切りの象徴でもあった。

 七瀬にとって、彼は全ての恐怖の根源で、ここにいるはずのない人間であった。


「お、まえは……」


「どうして、貴方がここに――」


「そんなことを話している場合じゃないです」


 はっきりと、その少年は言った。

 かつての脆い覚悟など、そこにはない。彼の瞳には誰かから受け継いだ業火が宿っている。


「終わらせたいんですよ、僕の手で」


 ぎゅっと、彼は拳を握っていた。幾度となく血で染め、全てを壊そうとしたその拳を。


「また彼に任せるわけには、行かないんだ」


 そして、彼が歩み寄る。

 全てを終わらせられるたった一つの方法を持つ、その少年が。



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