終章 朝焼け -2-
10000PV&1500ユニーク突破記念で、本日、二度目の投稿です。
前話を読んでいない方はご注意ください。
東城大輝は正座させられていた。
場所は、病院のベッドの上。目の前には腰に手を当てて眉間に深い皺を刻み、こめかみのあたりをぴくぴくと震えさせている二人の少女、柊美里と七瀬七海がいた。
「大輝」
「大輝様」
「はい……」
東城はこうべを垂れるしかない。それ以外に言い訳でもしようものなら五十倍くらいの正論で返されるのはつい二時間ほど前から二時間ばかりかけて学んだ。
「無茶をするのも、いい加減にしなさいよ」
「そうですわよ、その左腕も、二十時間近くかけてようやく回復したのですわよ。一体その間に何人の肉体操作能力者が倒れたと思っているのですか?」
「えぇ、本当に反省しています……」
今回ばかりは、怒られても仕方がないと自分でも思う。それだけの失態を晒したのだ。
「もし次があったら、本当に死ぬわよ?」
「十分に気を付けます……」
主に、説教されない為に。
「……まぁ、今回はこれくらいで許してあげる」
こういう説教であまり東城に無茶をさせない、させたくない、という彼女らなりの気遣いなのかもしれないが、回復したばかりでそこまで説教されると東城も身が保たない。
「――えっと、それで、宝仙の容体は?」
「まだ寝てるはずだけど、そろそろ宝仙も目を覚ます頃じゃ――」
「やっほーっ! 東城君、あたしは完全復活したよ!」
病室の扉を蹴破らん勢いで、宝仙陽菜が突撃してきた。
「病院では静かにしろと言っているだろう」
そんな宝仙の首根っこを落合が掴んでいた。さすがに昔馴染みと言うだけあって、扱いも手慣れたものだった。
「おう。お前も元気そうだ」
「生憎、お前と違って俺はほとんど怪我を負っていない」
落合はため息交じりに答えた。それはどこか、自分の無力さを憂いているようでもあった。
「ところで、ヒナの方はどうなった?」
「んーとね、一応いなくなったわけじゃないとは思うんだけど、いつもよりずっとずっと深く眠ってるのかな。たぶん、もう起きてこないかもしれない」
「――よかった、って言っていいのか?」
「よかったんだよ。ヒナは全てを台無しにしようとしてたんだから。だから、これでいい」
「……そっか」
何と声をかけたらいいか東城は迷ったが、おそらく、何も言う必要はないのだろう。彼女がそれを受け止めたのなら、それでいい。
「ところで東城君」
「何だ?」
「お腹が減ったよ」
「お前も全部台無しにするよな!」
思わず病み(?)あがりだというのに東城は全力でツッコんでしまった。
そんな風にひとしきり笑った後、落合が真面目な口調で言った。
「――済まないな。お前一人に全てを押し付けて。本来なら全員で礼を言うべきなのだが、日高も榊も明け方だからもう寝てしまっている」
「いや、謝るのは俺の方だろ。お前たちが乗り越えなきゃいけないものを横取りしたんだぞ」
「だからと言って文句を言える立場ではないことくらい分かっているだろうに」
落合は深いため息をついていた。
「ありがとう、東城」
そして、落合はそう言った。
「あなたがいなかったら、私たちはきっと道を誤っていた」
ひょっこりと落合の後ろから、三田も顔を出す。その顔は、どこか晴れやかに見えた。
「だからありがとう。私たちは、やっと陽輝を送れる気がするよ」
「俺たちは今から、陽輝の墓でも見て来ようと思う。それから後は、まだ考えていないが」
「でも、陽輝がしたみたいに誰かを助けたいと思ってるから、たぶん自警団とか、そういうのをやるんじゃないかな。晃も連も、陽菜も合わせて」
「アルカナ五人の自警団とか、絶対に敵に回したくねぇなぁ……」
「よく言うな。その全員と対峙したくせに」
落合が声を殺して笑う。その姿は、東城と対峙した時と違ってただ少年らしいものだった。
「じゃあな、東城」
「また会おうね」
そうして、清々しげに落合たちは病室を出た。
「ばいばーい! 言っとくけど、お兄ちゃんと重ねたんじゃなくて、あたしはちゃんと東城君が好きだからねー!」
最後に、宝仙は爆弾を投下していったが。
「……大輝」
「大輝様」
「いや、そこで俺を睨むのはおかしいだろ」
東城が冷や汗を流しながら必死に目を逸らすので、二人とも諦めたらしい。話を変えて、一つの事件を終えた事の余韻にでも浸るように柊は言う。
「しっかし、ホント危ない橋を渡るわよね。もしあの時ヒナのレーザーが逸れてなかったら、どうなってたのかしらね」
「――そう、だな」
柊がため息交じりに言う言葉に、東城は一瞬だが素直に答えられなかった。
柊たちには角度が良く見えなかったようだったが、あのとき、レーザーは逸れたのではなく、東城が逸らしたのだ。
火炎と爆発、そしてプラズマを掌握する能力。それが燼滅ノ王。
そして東城は他に何の能力も持っていない。もし隠された能力が原因なら、初めから左腕など焼かれていないはずだ。
だが確かにあの瞬間だけ、東城大輝は光を捻じ曲げる術を持っていた。
偶然でも何でもない。気合などという次元で乗り越えられる壁ではない。東城は、確かなロジックを持ってその壁を破壊していた。
東城の力の本質は、どこにあるのか。
そもそも燼滅ノ王は、なぜ異例という名を冠しているのか。
何かが、うごめき始めているのではないか。
そんな疑問や予感が確信に近いものに変わり、東城の中の深いところに刻まれる。
病室の窓から差し込む十字の光は、ただ東城大輝を照らしていた。
これで第2部クロス・ライト編は完結です。評価、感想をお待ちしております。
明日からは第3部グレア・ガスト編を最初から最後まで毎日更新で投稿していく予定です。
これからもどーぞよろしくお願いします。
追記
第2部のあとがきを活動報告に書いています。よろしければどーぞ。
http://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/807860/




