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序章 窮境の覚悟
我思う、故に我あり。
シュレディンガーの猫。
世界五分前説。
そういう哲学的な話を聞いて思ったことは、本当に世界なんてあるのだろうか、ということだった。
世界地図に広がるその定義は、あまりに薄っぺらな気がした。
本当は、世界なんて自分の視界に収まる部分しか存在しないのではないだろうか。そんなことを考えた。
地平線までの四・五キロまでしか世界は存在しなくて、一歩歩くごとにその分の世界が創造されて、背後の世界が消えていく。そういう仕組みなんじゃないだろうか、と。
そんな自己中心的な解釈を本気で信じている訳ではない。けれど、それはある意味で、真実なのだろうとも思った。
結局、自分自身で定義できる世界なんて言うのは、目の届く範囲だけに違いない。
だから。
世界を救うなんて言うのは、つまりはそういうこと。
他の何を犠牲にしてでも。
自分の目を奪うその存在を護り抜くことこそが、きっと、正義というものだ。
なんとか間に合いました。