表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フレイムレンジ・イクセプション  作者: 九条智樹
第5部 レイヴン・フェザー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/429

第5章 狂気の雪 -2-


 西條真雪と黒羽根美桜が暮らす、高級マンションの最上階。

 その部屋に飛び込んだ柊美里(ひいらぎみさと)七瀬七海(ななせななみ)は、安堵のため息をついた。


「どうしたんだ、柊、七瀬。そんなに血相を変えて」


「いえ、なんでもありませんわ」


 心配そうな美桜の不安を拭うように、七瀬は綺麗な笑みで答えていた。


「そうなのか? とてもそうは見えないが」


「えっと、今日は真雪さんと大輝を驚かせようってことで、ちょっと料理でもこっそりしようかなと思って……」


 とっさに思いついた嘘で、柊はどうにかごまかそうとしてみる。その様子をじっと見ていた美桜は、しかしすぐに頷いた。


「なるほど、サプライズというヤツだな。東城たちが来る前に早くするといい。私は能力が能力だけに、手伝えないから、残念ではあるが……。代わりに、楽しみにするさ」


「えぇ。ですが、あまり期待はなさらないで下さいね? わたくしと柊美里はしばらく、キッチンにいますので」


 そう言って、七瀬は柊を引きつれてキッチンの方へと向かった。

 美桜に声が届かないことをしっかりと確認した上で扉を閉め、七瀬も柊もまた別の安堵のため息をついた。


「どうにかごまかせたわね……」


「えぇ。しかし、大輝様の言う通りとは……」


「……そうね。正直、私だって今でも信じられないかも」


 七瀬も柊も驚きを禁じ得なかった。

 それもそうだろう。彼女たちの前にいた西條真雪の姿は、底なしに明るい、ただの年上の女性でしかなかった。その上で東城大輝と同じ、正義に満ちたような雰囲気を確かに感じていたのだ。

 今さら彼女が黒幕だったと言われても、にわかには信じられないだろう。


「とりあえず、万が一の事態が起きたら、ここは私たちで死守するしかない」


「そうですわね」


「――でも、勝ち目があるとしたらやっぱり、大輝だけなんだろうけど」


 ぎゅっ、と柊は小さな拳を握り締めるしかなかった。


「随分と弱気な発言をなさるのですね」


「心で折れたら勝てないっていう理屈は、私だって分かってる。でも、やっぱりこれは事実なのよ」


 柊は言いながら真紅に両手をついてうなだれる。


「私は真雪さんと一度だけ戦ってる」


 それは昨日の出来事だ。

 そのときの柊は西條と東城が仲良くしていることに少し嫉妬し、それを察した西條によって勝負を申し込まれている。


 ――そしてその結果は、柊の惨敗だ。


「あのときは、ただ私を元気づけようとしてくれただけだと思ってたけど、そうじゃなくて、あれが私の戦闘力を測る為だったとしたら……」


 柊が負けたということは、西條にとって柊では足止めにならない。そう判断されても不思議はなく、そして、柊自身もそう思っていた。

 七瀬にいたっては戦うまでもないのだろう。氷雪操作能力は液体操作能力(リキッドキネシス)の亜種。その上でレベルSとレベルAの差が西條と七瀬にあるとすれば、それは覆しがたい絶対の壁となる。


「……だから、負けないでよ」


 小さく柊は呟いた。


「真雪さんを止められるのは、大輝だけなんだから」


 それを切に願って、ただ柊は天を仰いだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ