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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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Q.悪い子がいたらどう対処しますか? A.殺します☆

作者: marron
掲載日:2026/06/29

 それは、登校中の一幕でのこと。


 

「おい」


 

 突然後ろから声をかけられた。

 私になんのようだろう。

 そう思いながら振り返ると、そこにはガラの悪そうな男が2人。

 しかし、その顔はどちらもだらしなく、目線は私の胸に向かっている。


 

「ちょっとばかし付き合ってくんね?痛い思いはさせねェからさ」

「俺等と楽しいことしようぜ」


 

 まだ居たんだ、と思った。

 いくら駆除しても、なかなか減らない。お母さんの言う『悪い子』というやつは。

 

 昔から、お母さんにはいい子でありなさいと教えられてきた。

 人に嫌な思いをさせる(悪い子)やつは、この世にいらない。


 

「わかりました。じゃあ、路地裏の方で良いですか?」

「おっ、分かってんじゃん」

「いい子だねェ、たっぷり可愛がってやるからな」



 男2人から目を離し、路地裏を見つめる。太陽を反射する水たまりだけが見えた。

 さて、どうしようか。

 もちろん私はいい子なので、悪い子を許すことはない。

 しかし、その結果、周りに迷惑をかけたら、私まで悪い子になってしまう。

 お母さんに怒られるのはもう嫌だ。



「ここら辺ならいいだろ」

「おい!止まれよ!」



 怒号が後ろから飛んできた。声量の調整ができないらしい。

 それに、気が短い。やっぱりだめだね。悪い子には罰を。

 

 

「まだ、もう少しだけ。他の人には絶対見せたくない事ですので」



 一言。

 そう言っただけで、こいつらはアホみたいな表情を浮かべながら黙って着いてくる。

 実際に嘘はついてない。嘘つきは悪い子の第一歩だからね。いい子は嘘なんてつかないのだ。


 軽やかに歩む私。そして、足を回しながらも、どう処理するのがいちばん静かか考える。

 2人同時に罰を与えるのは、かなりリスクが高い。どちらかに逃げられたら、警察が来る。

 そうすると、いい子の私を捕まえた警察まで悪い子になっちゃう。

 できるだけ、悪い子は増えないようにしたいのに。

 過去に2回ほどやらかしたことがあるが、その経験を糧に私は日々成長している。



「ここら辺なら、ぜってー警察は来ねェ。さっさとヤっちゃおうぜ」

「学校に遅れたくはないだろ?」



 そうか、今日は学校か。早くしないとだな。

 朝は人が多い。だから、もう少しだけ時間が経ってからが良かったけど。


 私がいつも愛用している、携帯ナイフを触りながら考える。

 一番大事なのは、初撃。

 いかに、逃げられないようにするか、叫ばれないようにするか、だ。



「脱いでるところは恥ずかしいので、後ろ向いてて貰えますか?」

「おぉ、そりゃ悪かったな」

「一応逃げられねぇように通路は塞がせてもらうぜ」



 2人は私を挟むように通路を塞いで反対を向いた。

 好都合。これなら簡単に終わる。


 改造ポケットから、携帯ナイフを取り出す。

 そして、制服を脱ぐ。

 返り血がついたら面倒だ。


 制服を脱ぐ音が、静かな路地裏に響く。



「おっ、いいk」



 1人がこちらを向いてきた。

 そのため、ほぼ反射の領域で喉を掻っ切った。


 まだ上しか脱いでいないのだが、悪い子が約束を守らないことぐらいわかってる。

 仕方ない、スカートに血がつかないように頑張ろう。



「おい!どうしt」



 もう1人も心配してかこちらを見てきた。

 が、さっきと同じ要領で喉を切る。

 これなら、叫び声が出ることは無い。


 喉を抑える2人。その首からは命が溢れて、手を赤黒く染め上げている。

 奴らは何やら口をパクパクさせ、手のひらをこちらに向けているが、そんなの関係ない。

 赤い塗料でコーティングさせられたナイフを太ももに突き刺す。それを4回。

 大体の人はこれで動けなくなる。

 痛みで、声にできない叫びをあげる2人。



「来世ではいい子になってね」



 そう言って、1人ずつ心臓に穴を開ける。

 雨上がりの湿った空気に、腐食した金属みたいな臭いが薄く滲んだ。

 空気はより重く、辺りはより静寂に。

 

 ナイフから滴る血の音を聞きながら、死亡を確認する。

 そして、後始末。

 死体の処理は時間がないので、警察に丸投げ。

 体についた血をふいて、制服を着直す。

 幸い、制服に血がかかることはなかった。

 誤魔化す手間が省けてよかった。


 証拠になりそうなものを回収し、ナイフは拭いてからしまう。

 路地裏から、監視カメラのない通路へ移動し、そこら辺の公園へ進む。

 公園には紫陽花(あじさい)が咲いていて、水分を花弁に溜め込んでいる。

 それをよそ目に、水道で血を洗った。

 そしてそのまま、学校へ向かう。

 雨上がりのじめったニオイが心地良い。

 



 学校につく頃には、遅刻4分前だった。

 扉を開ける。

 すると、みんなが一斉に机に座りだした。

 さっきまでうるさかったとは思えない空気に。

 みんながいい子な学校生活。遅刻は0。無駄な喋りも0。いじめももちろん0。

 素晴らしい。



「じゃあ、朝の会始めましょ」



 私の一言で、一日が始まった。



 ♢ ♢ ♢



 窓の割れたドアを開ける。

 そして、シミと落書きで装飾された廊下を歩いて、玄関へ。

 今日も平和で良い日だったな。


 そう思ったのもつかの間、外から不審そうな会話が聞こえた。



「ちょっと来てくんね?」

「い、いやっ。わたしは……」

「そんなこと言える~?俺はあの『いい子ちゃん主義のイカれクソやろう』に認められた”いい子”何だぜ?」

「あなたはそんな風には……」

「ア”ア”ァ?舐めた口きいたらお前は”悪い子”って報告すんぞ?」

「ッ!!そ、それだけは!」

 


 何やら、悪い子がいるみたい。

 私の”いい子”に泥を塗ったクソ野郎が。

 みんな私みたいにいいこならどれだけ世界が良くなるか。

 いや、今はそれどころじゃないな。早く駆除しに行かないと。


 少し小走りで、追いかける。

 これは、校舎裏か?ここは少し前に綺麗にしたばっかなんだけどなぁ~。



「いいねぇ~。最高だ!」

「ッ!いやっ!」

「今俺がかわいがってやるからなぁ~」



 男の口が相手の口に近づく。

 それを見た瞬間、私は携帯ナイフを投げていた。

 銀の飛行体は、空気を裂き、突き進んでいく。

 切先の先には、男の頬。


 サクッ


 ナイフは頬を貫き、反対に突き出た。



「い”っ”でぇ”ぇ”え”え”!!!」

「何してるのかな?」

 


 男の後ろに立って、問いかける。

 しかし、男は恐怖と痛みで声がでていない様子。

 悪い子は会話すらできないよね。


 追撃のローキック。

 これで、相手は地面に縫い付けられるはず。

 そこを、踏み潰すッ!!



「こんなッ!頭がッ!あるからッ!悪い子何かにッ!なるんだよッ!!」



 何度も何度も。

 相手の頭が原型を留めないくらいに。

 

 私の靴と大地に、赤い汁が染み付いた。



「ふぅ~。……大丈夫だった!?」

「えッ。あ、だ、大丈夫……」

「よかった~。あっ、このことは秘密にしといてねッ!じゃないと、あなたも悪い子になっちゃうぞ~!じゃ、またねッ!」

「あ、う、うん」



 あの子に怪我がなくてよかった。

 悪い子から守ってあげるなんて、やっぱり私はいい子だな~。

 やっべ!早く帰らないと、お母さんのご飯間に合わなくなっちゃう!


 靴の血を落とすことなく、私は走って帰路についた。



 ♢ ♢ ♢



「あなたはこのことについて、何か知らないんですか?」



 あたしは今、事情聴取を受けている。

 なぜかというと、あのクソイカれ野郎のせいだ。

 あいつが殺人なんかするから……。

 今までも何回か警察が来たことがある。

 それもおそらくあいつのせいだったんだろうな。



「被害者の男に連れて行かれたという目撃情報が上がっているんです」

「あなたがやったんですか?」



 いい子、いい子ねぇ~。

 ここで本当のことを言ったら、イカれやろうに悪い子判定を受けるだろう。

 それすなわち死。

 それに、言わなかったとしても、いい子でいれば守ってくれる。

 ここは、言わないのが一番なんだろう。

 でも、



「あたし、誰が殺したか見ました」



 あたしは、悪い子だからね、あいつがいちゃー困るのよ。

 あいつが消えるまでのあと一年くらいは隠そうと思ってたけど、好都合。



「犯人は……」

 


 ♢ ♢ ♢



 ふぅ~。やっと家についた。

 

 玄関を開けると、まず煙草のにおいがした。

 お母さんのにおいだ。

 靴を脱いで、上がる。

 血のついた靴は、そのまま玄関に並べた。

 明日洗えばいっか。どうせお母さんは何も言わないだろうし。

 

 リビングに入る。

 テーブルの上には、お母さんの煙草と灰皿。

 それ以外は何もない。

 私の教科書も、私の荷物も、私の部屋にしか置いてはいけない。

 それがうちのルールだ。

 

 冷蔵庫を開ける。

 昨日お母さんが買ってきた食材が、きっちり並んでいた。


 いつもそうだ。食材だけは切らさない。


 それがお母さんの、優しさなんだろう。

 それとも、ご飯を作らせるための準備なのかな?


 まあ、どっちでもいいか。

 エプロンをつけて、包丁を持つ。


 今日は何にしようかな。

 お母さんの好きなものがいい。

 そうすれば、お母さんは機嫌がいい。

 お母さんの機嫌がいいと、私もいい子でいられる。


 ほんとはカレーが食べたいけど、肉じゃがでいっか。


 

 1時間ほどが経ち、ご飯もぼちぼちできてきた。

 間に合ってよかったー。


 コンコン


 ドアのノック音が響いた。

 誰だろう。

 そう思いながら、ドアを解き放った。



「警察だ、ちょっと聞きたいことがあってね」

「え、い、今ですか?」



 目の前には警察がいた。

 それも数人。これは、無理かな?

 は~、ご飯の準備間に合わないじゃん!

 お母さん怒っちゃうよ。



「ちょっと、コンロの火消してからでも良いですか?」

「あぁ」



 コンロの火を消す。

 ポコポコと泡を拭いていた鍋は静かになった。

 左側に包丁が見える。

 一瞬手が伸びそうになったが、思いとどまった。

 あの人数じゃ、全員を処理は流石にしんどい。


 結局、ただ火を消しただけで、私を捕まえようとする悪い子集団に戻った。



「早めに帰らせてくれますか?」

「それは、君の行い次第だね」



 うん。じゃあ、いい子の私ならすぐ帰れるね。

 よかった。



 地面の凹凸を振動で感じながら、15分ほど運ばれた。

 送り先は警察署だったようだ。

 中に入り、取調室に入れられる。

 

 入って一番初めに感じたのは、ツンとした消毒のニオイだった。



 ———————————————————————————


 報告書


 ・少年調査票(抜粋)── 水瀬 静(女)、17歳、高校3年

 令和○○年6月上旬、紫陽花の雨に濡れる夕刻、○○高等学校の校舎裏において、本少年は男子生徒・村瀬(17歳)が女子生徒を壁際へ押しつけているところに遭遇。女子生徒を引き離した後、村瀬を地面へ押し倒し、頭部を7回以上踏みつけた。法医学的所見では「頭部の原形保持は不可能な状態」と記録されている。証拠として、血液の付着した靴および折り畳みナイフ(未使用、鞄内から押収)が確認されている。


 ・精神鑑別所見

 本少年の内的世界を支配しているのは、「いい子」と「悪い子」という極めて単純化された二項の価値体系である。この図式は思考の補助的な枠組みではなく、本少年にとって世界を認識するための唯一の言語である。

 幼少期より、本少年の養育者は「いい子でありなさい」を絶対的な規範として課してきた。基準を外れた行動——泣くこと、失敗すること、親の期待に応えられないこと——は即座に身体的制裁の対象となった。本少年はこの反復の中で一つの命題を学習した。悪い子は、痛い思いをする。それは正しいことだ。

 やがてこの命題は静かに変容した。痛い思いをさせることは罰ではなく、『正義の執行』である。そして十分な執行の果てには、悪い子は「いなくなる」——その認識に、本少年は違和感を抱かない。

 面接を通じて担当医師が最も注目したのは、その感情の質である。本少年は被害者の死を語る際、罪悪感も興奮も示さなかった。観察されたのは、義務を果たし終えた者の、静かな安堵であった。

 心理検査(MMPI-2、ロールシャッハ)においては、感情の言語化能力の著しい低下、攻撃衝動の内在化、および他者への共感回路の重篤な障害が確認された。本少年の行為は衝動の爆発ではない。本少年の論理においては、完全に筋の通った帰結である。そこに介入することの困難さは、通常の非行事例とは質的に異なる。

 取調べにおける本少年の供述は一貫していた。

 「あの子は悪い子でした。悪い子には、痛い思いをさせないといけないんです。」

 その声に、迷いはなかった。


 ・処遇意見

 本少年を第○○少年院(医療的処遇を要する特別課程)へ送致することを勧告する。「いい子・悪い子」の二項図式は本少年の自覚なき確信として深く根付いており、専門的な認知再構成プログラムおよび長期的精神科的介入なき社会復帰は、第三者への重篤な危害を招く蓋然性がきわめて高い。



 ———————————————————————————


 

 あの後、結局家に帰ることはできなかった。

 最低限の荷物は警察の人が持ってきたし、私はあの部屋から出ることはできなかった。



「最近の調子はどうですか?」

「いい感じですよ?」



 ここに来て、はや1年。

 最初は嫌だと思っていたここも案外悪くない。

 最近は周りの人をしっかりと見ることができているように感じる。

 人のいいところに気がつくのだ。



「はい、じゃぁこれがお薬ね。毎食後一錠きっちり飲むこと。いいね?」

「はーい!先生大好きッ!」

「はいはい、じゃあ、またね」

「はい!」



 なんで私は殺人なんかしちゃったんだろう。

 こんなに人って、たくさんいい子で溢れているのに。


 ここには、怖い母もいない、嫌な人も居ない。

 最高だ。


 いまが人生の最高潮かもしれない。

 あと数年したらまた普通の生活ができる。

 もう、母の言いなりになんてならない!



「じゃあ、お部屋に案内しますね」

「よろしくお願いしますッ!」


 

 薬を持ったまま、新しい部屋へ行く。

 今日からはなにやら、普通の棟へ戻されるそうだ。

 今までは、私専用の場所だったらしい。


 渡り廊下を通って、大きな建物に入る。

 そして、しばらく歩くと、私の部屋が見えてきた。

 ドアを開ける。

 前の部屋よりも少しだけ広いみたいだ。

 はじめからある机に薬を置く。

 そして、一錠分だけ取り出す。



「じゃあ、食堂に案内しますね」

「はい!」



 食堂についた。

 前よりも何倍も広い。

 そして、ご飯の種類もたくさん。

 

 私の大好きなカレーを注文した。

 食堂の人たちがパパっと作ってくれた。



「ありがとうございます!」

「どうも~」

 

 

 食堂の人は、毎日美味しいご飯を作ってくれる。

 お医者さんは、私のためにお薬を出してくれる。

 周りの皆は私を入れて遊んでくれる。


 いい人がいっぱいで嬉しい。

 そう思った矢先だった。



「痛っ!」

「どこ見てんだよ」



 体格のいい男の人に、押し倒された。

 手に持っていたカレーは辺りを茶色く染める。

 あぁ、私のカレーッ!



「へッ!よかったな!そんなくそまじー飯食わなくてすんでよ」

 


 世界が静かになった気がする。

 なんで?が何度も頭に浮かんだ。

 いい人だらけだったのに。

 いや、違う、この人にも良いところがあるかも……。

 いいところ、いいところ。

 

 靴がいいね?いや、靴はみんな一緒。

 顔がいいね?そんなにイケメンじゃない。

 頭がいいね?こんなことするやつは頭悪い。

 性格……、そんなの考えるまでもない。



 だめだ。良いところが見つかんない。

 なんで、こいつはなんなの?



「おい、拭けよ!汚ぇだろうが」



 そう言って、雑巾が私の顔に叩きつけられた。

 臭い。


 あぁ、そっか、……そうなんだね。


 


 少年院にも、()()()は居るんだね。

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