《学生編④》悲しみからの脱却
その日から、あたしは毎日、彼の部屋を訪れた。
その部屋はゴミで散らかり、その場の空気さえ重苦しかった。
その事だけでも、彼の悲しみの深さが伝わってきた。
「颯太、、、ここにご飯と今日の授業のレポート置いとくから、、、」
「、、、あ、あ」
あたしの言葉に、一言二言しか返して来ない彼だった。
そんな颯太にあたしは、思いを決してある事を話したの!
この話が、心を閉ざしてガラスの様な心境にいる彼に吉と出るか凶と出るか、下手をしたら彼を激怒させかねない不安を抱えながら、、、
「颯太、、、『虹の橋』って知ってる?」
「、、、聞いた事はある」
彼の小声に臆する事なく、あたしは話を続けた。
「『虹の橋』そこは天国の入口にあると言われる楽園なの。
そこには、生前に飼い主さんから愛情をたっぷりともらった子達の魂がいるの!
そして、その子達の魂は、元気だった頃の姿で大はしゃぎして、飼い主さんが来るのを待っているんだって」
「、、、」
颯太からは返答がなかった。
それでも、あたしはめげなかったわ!
「現世での肉体は、宇宙の元素でできていて、亡くなると、分裂してまた、宇宙の元素へと戻るらしいの、、、だから、その姿には二度と、触れたり見たりは出来なくなっちゃうけど、、、
魂は、無くならない!前世、現世、来世でその縁に寄って再び、出会うんだって!
だからきっと、『あき』も虹の橋でその時期を待ってるんだと思う、、、」
颯太がその言葉にピクリと反応した。
「だから、颯太には、死が最後の別れって思わないで欲しい、、、
だって、それじゃー悲しすぎるわよね?
種族を超えて、あんなにも、分かち合えてた家族なのに、、、
言葉も話せない!
血も繋がっていない!
姿形さえも違う!
それでも、心が通じ合えたのよ!
あたしだって、辛かったの! 『もも』が亡くなった時は、、、
どうしたらいいのか?分からなかった
胸が押し潰されそうで、、、何度も何度も泣いたわ
もう一度、『もも』に会いたいってだけが、頭を支配したわ!
けど、傍には『もも』の姿が無かった。」
彼の目は見開いていた。
「でも、そんな時、落ち込んでいたあたしに、お母さんが『虹の橋』のお話を聞かせてくれたの! そして、お母さんは最後にこう言ったの!」
「加奈の心の中で、ももが生き続けていたら、きっと、また、ももに『逢えるよ』って!」
その瞬間!颯太は涙まみれの顔をあげて、あたしを見てきた。
それを見たあたしは、
「あたしは、愛犬を亡くした時の苦しみを知ってるから、、、
知っているから、颯太には、『早く、元気になってね』とは、言わないよ!
、、、じゃあ、明日も来るね!」
と言って立ち上がろとした時!
大きな両手があたしを囲んだ!
そして、颯太はあたしをめっいっぱい抱きしめてきた、、、
「あ、ありがとう、加奈。いきなりは無理だけど、徐々に徐々に元気を出せる様に僕、頑張るよ!
そして、僕も『あき』と再会できる日を楽しみにするよ、、、
本当にありがとう、、、加奈 」
「別に、頑張らなくてもいいんだよ、、、颯太、気が済むまで『あき』の事を思ってあげて欲しい、、、
ただ、それだけ、、、」
「、、、うん」
そして彼は、次の日、実家がある東北へと『あき』の供養をする為に帰って行った。




