《琴葉とすもも⑤》臨終の時 ラスト二話
ドーーーーーン!!!
突然、勢いよく、玄関の扉が開いた!
「はぁはぁはぁはぁ、すももは! お母さん!!!」
翌朝の早朝、琴葉が息を切らして帰って来た音だった。
この様子ではおそらく、あの電話後、夜行バスにでも、飛び乗って帰ってきたのだろう、、、
その髪型は乱れており、瞼は腫れあがっていた。
多分、夜行バスの中で、すももの事を思い、一晩中泣いて、一睡もしていなかったのだろう。
それが語らずとも分かる姿だった。
あたしは、そんな琴葉を見た瞬間、俯いたまま、目を閉じて無言で、すももの居場所の方を指さした。
琴葉は、無我夢中でその指が差した部屋へと走っていき、弱り切って、既に虫の息になっていた『すもも』の姿を見るやいなや、傍に駆け寄った。
「すももぉぉぉぉー、すももぉぉー 帰って来たよ! 私だよ! 琴葉だよ!!!」
と、涙声になりながら、すももの身体をさすった琴葉。
すると、意識朦朧としていた、すももに、琴葉の言葉が聞こえたのか?
最後の力を振り絞るかの様に、その身を震わしながら顔を上げて、その涙で潤んだ瞳で、琴葉を無言で見つめ続けてきた。
明らかに、いつもとは違う! 何かを語っている目だった。
それはきっと、琴葉に対しての、すももの最期の『お別れ』なんだろう、、、
そして、すももは、琴葉の姿を見る事が出来て、安堵したのか!
すももの呼吸は、静かにその犬生の幕を閉じていったのだった。
「すももぉぉぁぁぁぁァ”ァ”ァ”ァ”ァ”」
無情にも琴葉の悲鳴が響いた、、、
「昨夜が峠だったはずなのに、、、 すももは、琴葉が帰って来るまで必死で待っていたのね、、、最期に貴方の姿や匂いを感じたかったのね。きっと、、、」
と、琴葉に話しかけると、あの子は、何度も何度も号泣しながら、すももの抜け殻を揺すっていた。
「ありがとうね、すもも! 本当に、、、
あ、りが、とう、私を待っててくれて 、、、
今までありがとう、、、グッグッグ
ありがとうー すももぉぉぉぉぉーーーーー!!!」
琴葉の口からは、『ありがとう』が続けて出てきた。
その『ありがとう』に込められている想いは、普段から言っている『ありがとう』とは、比較にならない程の重みがあった。
それは、琴葉とすももが、この16年間!
お互いが 築き上げてきたものが込められたものだったから。
あたしは、その言葉の重さを感じた時!!!
今まで我慢していた涙が、洪水の様に、一気に流れ出したのだった、、、
「あぁぁぁぁぁーーー」
「ひぃっ、ひぃっ」
「うぐぐぐぐっ」
家族三人が、すももの抜け殻を囲ってリビングで泣き崩れていた、、、
しばらく経った頃か?
「ワン!ワン!」
「くぅ~」
あたしはどこからか、犬の鳴き声が聞こえた気がした、、、?
その鳴き声は、小型犬と大型犬の鳴き声の様に聞こえた、、、
その声を聞いたあたしは、思わず叫んだ!
『もも!』
すると、それと同時に琴葉は、 『すもも!』
颯太も、 『あき!』
と、叫んだのだった!!!
家族三人がそれぞれ、人生の最高の相棒の声が聞こえたのだろう。
それはきっと、亡くなった『すもも』の魂を『もも』と『あき』が、虹の橋から迎えに来てくれたんだろうなぁ~
と、あたしは思いたかった、、、




