《琴葉とすもも④》幸せだった日々 ラスト三話
(இωஇ`。)
更に時は過ぎていき数年後、琴葉は、地方の大学へと進学し、一人暮らしの為、この家を出ていった。
琴葉が居なくなってから、老いて丸まった背中でいつも、何処か遠くの意識の中で何時までも、琴葉の帰りを待っているすももの姿が、切なく感じたのだった。
「大丈夫だよ~すもも♪ 琴葉はそのうち、またここに戻って来るから、それまで元気で待っててあげてね」
と、囁きながら、老いたすももの身体をさする毎日が過ぎていった。
それでも、琴葉の帰りを健気に待っているすももだった。
そんな日々が過ぎていき、すももの生命の灯しみが徐々に薄れて行く中、10月。
琴葉は、既に大学3年生となっていた。
大学生活も順調で、学業、交友関係、そして恋愛に忙しいのか?
実家に帰ってくる機会も減り、すももの近況報告のやり取りもすっかり、減っていたある日の事だった。
朝、起きて、真っ先にすももの姿を見に行ったあたしは、その姿を見て、青ざめて突っ立っていた。
それは、いつも寝ている布団の上で、『すもも』が苦しそうな呼吸音を出しながら、弱り果てていた姿がそこにはあったからだ!
「うぐぐぐっ」
(遂に、この日が来てしまったのね、、、あぁぁぁぁー!)
と、覚悟を決めるあたしに、
「どうかしたか、加奈?」
と、後に起きてきた颯太が一瞬にして、凍りついた!
「か、加奈! すももをすぐに病院へ」
「う、うん」
その日、あたし達は、会社を休み、すももを病院へと抱き抱えて、不安と動揺を抱えながら、連れて行った。
そして、医師から返ってきた言葉は、
「今夜が峠です、、、」
と、動揺している心に、更に追い打ちをかけてきた言葉だった。
心をえぐられたかの様な苦しみの中、あたし達夫婦は、無言のまま、一言も発する事無く、 弱り果てたすももを、大切に抱き抱えながら、車で家へと戻った。
家に着くなり、あたしは、急いで琴葉に電話をした!
「早く、出て! 琴葉」
と、願いながら 数コール後、呼び出しに出た、何も知らない琴葉の口調は、元気に満ちていた。
「あ~もしもし♪ お母さん。どうしたの急に? あっそれより、今度の正月には家に帰る予定だからね♪ ご馳走用意しといてね♪ 久しぶりにすももにも会いたいしさ」
その無邪気な娘の言葉を聞き、今から地獄に突き落とす様な内容を話さなければならない事に、胸が破裂する位に、締め付けられた。
今から告知する内容が、どれだけ琴葉の心を卑劣に突き刺すのか!
その事を思うと、言葉が出てこなくなったが、すももが死んだ事を後から話す事の方が、その数倍も酷いことだと、あたしは決意した。
しばしの沈黙を不思議に感じたのか?琴葉が恐る恐る問いかけて来た。
「ど、どうかした、、、?お母さん、、、」
「琴葉、、、びっくりしないで聞いてよ! すもも、、、すももが危ないの! 今夜が峠だってお医者さんが、、、」
その言葉を発した後、琴葉の声がスマホの向こう側から、一切聞こえなくなった、、、
しばらく経って、泣き崩れる琴葉の鼻を啜る音だけが、虚しく聞こえて来た。
その琴葉の心境が電話越しに分かったあたしは、
「まだ、すももが生きているうちに、貴方、帰って来れない? 最期くらいは一緒にいてあげて欲しいの、、、」
その言葉を聞いた琴葉は、涙声で返事してきた。
「う、うん、帰る。すももが生きているうちに絶対に私、帰るから!!!」
そう言い放ち、娘は電話を切ったのだった。
(プープープー)
その後、無情にも鳴り続く電話音、、、
きっと、あの子の事だから、この電話の後、泣き崩れているに違いないわ、、、
でも、あの子はすぐに帰ってくるはずだわ!
だって、あの子は、『すもも』が大好きだから、、、
そう思いながら、あたし達夫婦は、その夜、弱りゆくすももの傍で、最期になるかも知れない一晩を過ごしたのだった。
ずっと、一晩中、今までの楽しかった思い出を思い出しながら、すももの容態を見守っていた、、、
そして、夜は更けていった、、、
。゜( ゜இωஇ゜)゜。




